Bonus Track_75-6 因縁の狙撃手シスターはもふけも魔王様の『あいのどれい』として溺愛されたい~レティシア・アーヴィングの場合~
『彼女が『伝説のわたあめ屋』になった理由~コードネーム『フォックス』の場合~』の主人公、ようやく登場です。
「おおお……すばらしいっ! すばらしいです魔王様っ!
ここがおふたりの愛の巣……ああ、空気さえもがかぐわしいっ……!!」
「あの。愛の巣じゃありません」
すうはあと深呼吸していれば、カナタ様がジェントルに突っ込みをくださった。
そのちょっぴりこまった様子。控えめに言って胸ときめく。
これからは毎日生でこのお姿が見られるなんて、夢のようとしか言いようがない。
「『みんなの夢の巣』とはいえるかもだけどな!!」
ピーカンに明るい笑顔でフォローするイツカ様。こちらはあふれる元気がまばゆい。
そうですね! まったくそのとおりですっと返事を返せば、幸せが胸にわきあがる。
ああ、わたしはここにいるのだ。
お二方のおひざ元。実際にそのご尊顔を拝し、近くお仕えすることのできるこの場所に。
わたしは失礼にならない程度に気を配りながらも、我が主たちをほれぼれと眺めた。
月のようなカナタ様、太陽のようなイツカ様。実に完璧なコンビでいらっしゃる。
あとはここに、かわいらしい星のようなミライ様が戻っていらっしゃれば、あの日の奇跡がよみがえるのだ――花のように可憐なソナタちゃん様は、こちらにたまに遊びに来てくださることになっているし。
いつかの秋祭り。ミルドの教会そばの屋台で『あーん』をしあっていたお姿。そして、わたしの差し上げた巨大わたあめをみなさまでかじっていらした光景。悶絶ものの愛くるしさは、今もこの胸で色あせない。
ひそかにもえもえしていれば、さらにこの胸を幸せが貫いた。
「あれっ? レティお姉ちゃん?
ええっ、ほんとにー?!」
花咲く笑顔で駆け寄っていらっしゃるのは、ソナタちゃん様だ。
ああ、尊い。わたしは喜びに包まれながらも深く頭を下げる。
「はい! これからはずっと、お兄様方にお仕えします!!
ソナタちゃん様もどうぞ何なりとお申し付けをっ!!」
例の秋祭りの日をきっかけに、わたしは神の道に入った。それからソナタちゃん様は、わたしを導いた先輩として、なにかとお気にかけてくださったのだ。
小学生とフリーランスの務め人という関係で、あまり時間は合わなかったが、教会のお祭りの時にはお会いできたし、ときどきであるがお手紙もやりとりしていた。
それでもそのお可愛らしさは、色あせるどころかいや増すばかり。
ソナタちゃん様がそうしろとおっしゃるならば、わたしはきっと空だって飛べる。
「もー、様はいいよっていったのにっ。
それじゃあ、これからは様なしでお願い!
……お兄ちゃんたちをどうか、よろしくおねがいいたします!」
けれどソナタちゃん様がぺこんと頭を下げてお命じくださったのは、こんな欲のないこと。
様なしはすでに申し付かっていたことであるし、イツカ様とカナタ様にお仕えするのは、わたしの積年の夢だった。だからこれではなんの命令にもならないのだ。
でも、そんなソナタちゃん様の……もとい、ソナタちゃんの素直さ健気さがいとおしくて。
わたしは「はいっ!」といいこのお返事を返したのだ。
よっしゃ、これで外堀は埋まった。
あとはお二方に、正式のご承認をいただくだけだ。
わたしは声高らかに申し出た。
「そういうわけですので!
このレティシア・アーヴィング、本日より魔王様方の愛の奴隷としてっ」
「却下っ!!」
渾身のプロポーズは、カナタ様に速攻却下された。
その後の協議でわたしは、ふつーに『魔王軍専属の狙撃手兼プリースト』として就職を決めた。
ダメージもないし、疲れてもいないからとお茶会の準備に加われば、優しいみなさんは気遣いながらも、あっという間にわたしを仲間として受け入れてくれたのだった。
『まぜるな危険』枠が着々と増えてゆきます。あとがこええです。
おかしいな、ティーパーティーメインの会のはずだったのに……。
というわけで次回こそティーパーティー! の予定! お楽しみに!!
なかなか活動報告も上げられずすみませぬ……!




