Bonus Track_75-4 歌よ、風になれ翼になれ! 月萌歌姫たちの決意! ~ルカの場合~
それからあたしは、一日かけてそれを書き上げた。
できたのは、一番だけ。タイトルもまだ決まらない。
けれど主旋律だけを起こした譜面を見せて歌えば、レモンさんとルナ、タカハシさんとライムはめっちゃ拍手してくれた。
「すごーい! すごいよルカ! めちゃくちゃ想い感じるよー!!
手直しなんかいらないよ。できるだけこのままいこう!
ルカはギターが弾けるんだっけ?」
「ちょっとだけだけど……はい」
なかでもレモンさんは、ちょっと気圧されるほど食いついてくれた。
「よし動画とろう! シンプルな弾き語りのやつ!
で、完成までの過程を公開するよっ!
今週は新曲でいくのきまってるし、来週のライブまでに仕上げてこう!」
「ええ! いまから調整します!!」
タカハシさんが声を弾ませ、ルナもノリノリで手を挙げてくれた。
「わたし、よければピアノパートやりたいです!
ねえるか、わたし、二番の歌詞かきたい! いいかな?」
「いいじゃんいいじゃん! ルカどう?」
「そうね、ルナお願い!」
タイトルは、サビの一節からとった『風になれ翼になれ』に決まった。
最初に公開した動画は、あまり練習もしてない状態で撮ったもので、とぎれとぎれギターをつま弾きながら歌うだけのもの。
こんなので果たして大丈夫なのかとおもっていたら、その反響は大きかった。
切れ切れなところがむしろ泣ける、この時点で神曲、もうずっとヘビロテしてる、なんて嬉しいものから……
『銀河姫』の再来だ、なんてもったいなすぎる誉め言葉まで。
でも、一番うれしかったのは、たくさんの絶賛の海の中、ひときわ輝いていたこのコメント。
『おれたちにも、いま顔を合わせることのできない、たいせつなひとたちがいます。
声をかけることもできなくて……。
それでも、この歌で確信できました。
逢いたい。ことばをかわしたい。同じ気持ちなんだと。
おれたちは、すぐそばにいるから。いつもみまもってるから。
きっとまたすぐにあえる。大好きです。
彼女が見てくれることを信じて、ここに書き残します』
わかんないわけなんかない。何度もメールを重ねてきた、あたしのカナタのものだ。
なぜか水色のたれみみうさぎがぽちぽちと、一生懸命にコメントを打っている様子が浮かんで、目の前がじんわりとなった。
「あった! イツカくんのコメントあった!
あいたいって……だいすきって……」
ルナも嬉しそうに声を上げた。けれど、おしまいは涙に流されてしまう。
あたしたちは、よかったね、よかったねと言いながら抱き合って泣いた。
間接的にとはいえ、愛する人のことばをきけた、気持ちをかわすことができた。
そのことは、あたしたちの心のくもりを吹っ飛ばしてくれた。
さきの金曜に、からっぽのきもちで歌ってしまった新曲も、もうちゃんと歌える。
愛をこめて。明るさが心にともるよう。弾むようなホンモノの元気をつめこんで。
まだ会えない。けれど、見ていてくれる。そばにいてくれる。
あたしのカナタは姿を変えて、高天原のどこかに潜んでいるのだ。
不自由を押して、あたしたちのために。
だからあたしは決意した。
『魔王軍』が月萌を攻め落とし、愛し合うひとたちがなんの不自由もなく会えるようになる日まで、あたしはここで歌い、みんなに勇気を届け続けよう、と。
最初は『恋するケンリ』的な感じで反旗を翻すような歌となるのもありかな? と思っていたのですが、けっきょく「ここでがんばる」でまとまりました。
一瞬だけ作詞しようかとか思ったのですがきっとしょぼくなるのでやめときました(爆)
なお実はこの章、ハッキリ書いてないのですが、どんどん日にちさかのぼってました^^
さて、そんなこんなでそろそろ各方面カードは出そろいました。
次回、いよいよVS『魔王軍』第二陣開始の予定です。どうぞ、お楽しみに!!
※明日、所要にて一日出かけますので、おそらく投稿時間が夕刻~夜となります。
いつもごめんなさいm(__)m




