なんとなく何かがちがう、高天原十二支物語!(中)
「ぜー、はー、やっとついたあああ!」
そのあとにやってきたのが、アハルテケ馬のアキトくんです。
全力疾走で駆け込んできてぜえぜえ。
「天馬になって、飛んでくればよかったのに」という声には、笑顔で答えます。
「俺さ。やっぱしふつうの馬であることにこだわりたかったんだ。
だって、大事な時だから!
この七位は、俺にとってのベストプライズだよ!」
7th……アハルテケ馬(ウマ目ウマ科ノウマ亜種)※一戦闘に一回、ペガサスにクラスアップ可能
アキトの金色のたてがみにもまけないくらい、まぶしい笑顔にみんなが心洗わていると、のんびりのんびりと、ひつじの群れがやってきました。
「あらあらどうしたの、みんな集まってにこにこして?
そうだわ、パンケーキ食べる?」
ひつじたちを連れているのは、いつも通りのエアリーさんです。
エアリーさんは集まっていたみんなに、おいしいパンケーキをふるまってくれました。
濃ゆ~いひつじミルクをたっぷり使った、うまうまのやつです。
もちろん濃厚ミルクアイスも標準装備です。
いただきまーすと声をそろえ、みんなでまふまふと食べました。
「とってもうまいパンケーキをありがとう、エアリー。
先着12名限定で、わがお手製のスペシャルかがみもちをプレゼントしていたんだ。
お前ももってゆくとよい。ささやかなお礼だ」
エアリーさんにはセレネ様が事情を話し、おいしいパンケーキのお礼として『十二支になれちゃうぞ鏡餅』を差し出しました。
けれどエアリーさんは、「わたしのパンケーキがおいしくなったのは、この子たちのおかげよ。だから、かがみもちはこの子たちにあげてちょうだい」と言いました。
セレネ様はにっこり笑ってうなずきます。
こうしてひつじたちが、八番目の十二支として加わったのでした。
8th……ひつじ(偶蹄目ウシ科ヒツジ属)
次にひゃっほーとやってきたのは、ライオンタマリンのチナツくんと、チナツの召喚獣でともだちの、大猿の神獣ターラさんです。
「あけおめことよろーっス!」
「『十二支になれちゃうぞ鏡餅』まだあるー?」
二人とも晴れ着に身を包んで陽気に歩いてきました。
ふつうです。なぜかすっごく普通です。
「おお、まだあるぞ。二人で仲良くわけるがいい」
「アザーッス!!」
「よかったねチナチナ!」
「おう! これでおいしい『あべかわもち』が錬成できるぜ!」
いえ、やっぱりちょっとズレてました。
ともあれ九番目は、チナツくんとなりました。
9th……ゴールデンライオンタマリン(サル目オマキザル科ライオンタマリン属)
そうこうしているうちに、ニューイヤーパーティーの開催時刻が近づいてきました。
出演予定の歌姫たちが、すこしおくれてお目見えです。
大きな鳥にのって現れたのは、『しろくろウィングス』のルナさんとルカさんです。
「ありがとうね、ルゥちゃん。助かっちゃった!」
「ほんとにありがとう、ルゥちゃんに乗っけてもらえなかったら、あやうく遅刻するとこだったわ!」
『ルゥちゃん』と呼ばれた大きな鳥は、「いいよいいよ~」と言いながら、ほんわか笑顔の小柄な女の子に姿を変えました。
もちろん、かがみもちはルゥさんがもらいました。
けれどそのルゥさん。不思議そうな顔で、かがみもちをひっくり返してみています。
「どうしたの?」
「うん、かがみもちっていうのに、顔とか映らないなあって」
するとセレネ様がやさしく答えます。
「大丈夫だぞルゥ。よーく磨けばちゃんと映るからな」
「なるほど~」
ズレているのはかがみもち、否、その作り手もだったようです。
10th……ロック(神鳥)
さて、とても平和に進んできた十二支決めでしたが、ここにきて暗雲が立ち込めはじめました。
みなさんは覚えているでしょうか。干支の三番目がトラに決まった時、四番目がウサギ――すなわち、『うさぎ男同盟』のメンメンのだれかに仮決まりしたことを。
同盟のメンバーである四匹のアナウサギ、一匹のノウサギ、そして一匹のでかもふロップイヤーは、だれが本当の四番目となるのかをめぐり、月晶宮前庭でバトルロワイヤルを始めてしまったのでした!
うん……? バトロワ? えっ?!
いったいどうしてこうなった……。
そんなわけで前後編の予定がもう一回続きます!
後編は夕刻に投稿いたしまして、明日は本編にお話もどります!
あわせてどうぞ、お楽しみに!




