優しすぎるうさぎ王子様と、剣の妖精〜たれみみ聖者さまのおはなし〜(2)
俺たちのクリスマスはこれからだ!←
クリスマス特別回、今回で完結です!
「王子さまが剣をふるう必要はないよ。
かわりに、僕が戦うから。
王子さまには、ほかにもっともっといいところがあるんだ。
頭がよくって、誰より優しい。
それを生かせばいいじゃない。
大丈夫、僕は王子さまのともだちとして、いつでも王子さまと一緒にいるから!」
胸を張って堂々と言い切る騎士さまはすらっとかっこよくて、おかおはとてもきれいなのに、なんだかとっても強そうです。
いえ、実際とっても強くて、怒って斬りかかってきたものたちも、全部あっさり転がしてしまいました。
王さまは驚いたようすで問いかけます。
「だれだね、お前は」
「王さま、僕です。
あなたが王子さまにプレゼントした、かっこいい剣です。
王子さまはお父さまのきもちがうれしくて、僕をだいじに、だいじにしてくれました。
名前を付けて、どこにでも一緒に連れてってくれました。
毎日丁寧に磨いて、優しく話しかけてくれました。
うれしいことも悲しいことも、みんなみんな分け合ってくれました。
だいじに、だいじにしてくれました。
だから僕には、こころがめばえたのです。
そうして、この姿を得たのです」
自らを剣の化身と名乗った騎士さまは、丁寧にお辞儀をして言いました。
その姿の優雅なこと。みんな、ほれぼれとしてしまいます。
それは、剣のもちぬしである、王子さまもです。
「ああ、なんてこと!
君が僕を『ともだち』とよんでくれるなんて。
それもこんなにきれいな声で。
ありがとう、僕の最高のともだち。
これからもずっといっしょだよ!」
きれいなおめめをうるうる、かわいいおみみをふるふるして、その手を取ります。
剣の化身の騎士さまも、ぎゅっとその手を握り返します。
「うん、王子さま。
これからももっと、よろしくね!」
みんなはとても喜びました。
聖者さまにくってかかった騎士たちや、王子さまをいじめたお姉さまたち、こっそり陰口を言った者たちもみんなごめんなさいして(もちろん王子さまはみんな許してあげました)、うさぎの王子さまの国は、ふたたび平和な、楽しい国にもどったのです。
しかし、どうしてこうなったのでしょう。
実は、王さまがプレゼントした『かっこいい剣』は、そもそもただの剣ではなかったのです。
王子さまの優しすぎるほどのお心に気づいた王さまたちは、子供のころからなかよしの、老賢者さまに相談しました。
『息子は優しすぎ、誰かに向けて剣をふるうことがどうしてもできないんだ。
このままでは、そのうちみんなに馬鹿にされてしまう。
小さな花にも心を寄せて、水をあげ、いつくしむ言葉をかけてあげるような優しい子なんだ。
それにとても聡明で、あの子が王になれば、きっとこの国はしあわせの国になる。
なんとかそれを、生かしてあげられないだろうか』
『そうだな、それなら、この剣を上げたらどうだろう。
ただの剣じゃないぞ。精霊の宿った、まほうの剣だ。
大切に扱い、優しいことばをかけてあげれば、いずれ人の姿を取り、よき友として王子さまを守ってくれるようになる。
もともと、僕の相棒のために作った剣なのだけれど……
相棒ももう、すっかりいい年でね。
新しい主人を探してあげなきゃと思っていたところだよ。
花を愛する王子さまならちょうどいい。
もしも困ったことがあったら、我が弟子を頼るといい。
いまは隣の国で、王子妃をやっている。
実際に来るのは、彼女の『双子の弟』だけれどね。
とても腕のいい、そして頭のいい、私の自慢の弟子だよ』
白いおみみのうさぎ賢者さまは、ぱちんと片目をつぶって言いました。
そうしてやってきたたれみみ聖者さまは、王子さまと丁寧に話してなかよくなり、まほうの剣のようすをたしかめると、みんなを集めて、そっと言いました。
『王子さまの剣は、もう、じきに目覚めるでしょう。
けれど、ただぽんとでてきたところで、信用を得るのは大変です。
それは、いままで弱虫扱いされがちだった王子さまもです。
そこで、皆さんにはちょっとしたお芝居に協力していただきたいのです』
数日後、たれみみ聖者さまは、みんなの集まるまえであえて、王さまにご報告します。
『自分にはなにもできない』と。
騎士さまたちが怒ったふりで、聖者さまに詰め寄って見せれば、王子さまは聖者さまをかばい、そこで、剣がひとがたをとる。
騎士さまたちはそこで、剣の化身と戦う。
勝っても負けても、いい試合となるはずなので、全力で(じっさいにはめちゃくちゃつよくて、あっというまにころん、だったのてすが)。
そこでみんなごめんなさいして、王子さまにごめんなさいして、めでたしめでたしとなる。
そんな筋書きを、聖者さまは示してくれました。
そしてそれは大成功。いまや国中がおまつりさわぎです。
そんなななか、聖者さまはもう、旅姿に身を包み、国と国を結ぶ街道を歩いておりました。
「でもさ、」聖者さまの首にまきついた黒いモフモフ――いえ、無二の相棒であるちいさな黒猫が、ぱちりとルビーの目を見開きました。
「なんか、心配だな。
何十年か後になれば、王子もすっかりおじいさんだ。もしかしたら、天に召されてるかもしれない。
そうしたら、剣はまた、相棒をなくしちゃうだろ?
そのときにはたぶんおれたちも、とっくに天国に行ってるだろうし……」
「そうだね。それは、とても寂しいことだよね。
でも、きっとだいじょうぶ。
あの優しい王子さまのことだもの。これからきっと、いい人に囲まれて。そのなかから、あたらしく剣の相棒になってくれる人も見つかるはずだよ。
それに、師匠は言ってた。もし、剣と王子が本当に望むなら、無二の伴侶として命をつなげ、ともに生きともに死すこともできるのだって」
「そんなことできるのかよ!
でもじゃあ、剣のもともとの主人は……
ま、いっか。
人生、いろいろあるもんだよな」
「そう。
長い人生、いろいろとあるものさ。
王さまも、王子さまも。
師匠も、相棒さんも。
そして、おれとお前も。
これから新しく会う、だれかさんにもね」
「だな!」
明るい声ではなしながら、空色のたれみみうさぎと、その首もとに巻き付いたちいさな黒猫は、のんびりと街道をたどっていきます。
二人の上には、よく晴れた空。
聖者さまのおみみの青にも負けない、青い青いおそらは、どこまでもどこまでも続いていくように見えたのでした。
おしまい
キャストは
王子さま&お姉さんたち……レイン&レインのお姉さんたち
まほうの剣……ライカ
王さま……リュウジ・タカシロ
老賢者さま&その相棒……アスカ&ハヤト
たれみみ聖者さま&黒にゃんこ……カナタ&イツカ
でお送りしました!
本編とほぼほぼ関係ないです^^
次回からは本編に戻ります。
覚醒&卒業をきめて意気揚々のアイドルたちとイツカナ……の予定です。
どうぞ、お楽しみに!




