Bonus Track_72-4 ようこそ、高天原学園!~タクマの場合~
すみません、来客にて遅れました……!
「今日はみんなに新しい仲間を紹介します。
ソリステラスからの留学生、セドラ=タクマ=クレスト君と、土龍<ナルガ>家のエルマー君です」
世紀の歌姫『銀河姫』は、ニコニコの笑顔でオレたちを紹介してくれた。
壇上から見わたせば、高天原学園の生徒の数は少なかった。講堂を埋めるのはざっと100名程度だろうか。オレの通った高等魔術学院に比べればずっと少ない。
逆にエルマーにとっては、かなり多い人数なのだろう。オレの真新しいブレザーのすそをぎゅうっとにぎって。それでも、背中に隠れないように踏ん張る。
おれよりずっと強いはずなのに、ずっと内気で優しいエルマー。オレが守ってやらなくちゃと思うと、気合が入った。
一つ息を吸って、胸を張った。
「初めまして、タクマです!
イツカと、……あー、バトルして、強さに驚きました。
いま世界で一番ホットなバディ制のだいご味を知りたいです。よろしくお願いします!」
何の気なしにイツカの名前を出してうわっとなった。
空気が一気にざわついた。殺気立つ奴も何人もいた。
むき出しの『大神意』の影響が、こんなに激しいものだったとは。
ステラ領では、こんなことにはなってなかった。
ひとつには、ステラ領のβたち――もっと言うならスペルの素質の小さいものは、スキルに対する感受性も小さいため。
いまひとつには、ステラの民のほとんどにとって、イツカとカナタは大きな恩義のある英雄で、憎むことなどそもそも難しいから。
最後の理由は、民に負担をかけることをよしとしないステラ様が、もと虚無スピカのチカラを借りて、『大神意』のもたらす影響を和らげてくれているというものだ。
「だいじょぶ、だいじょうぶ。……僕が、いるよ」
と、背中にそっとあったかいものが触れて、小さな声が耳に届いた。
エルマーだ。フードの下の月色の瞳が、やわらかな光を宿してオレを見上げている。
オレの動揺は、どうやらエルマーにはモロバレだったらしい。
内気で優しくて、だからこそ強いエルマーは、一歩進み出てフードを脱いだ。
「エルマー、です。クラフトを、学びに来ました。
……よろしくお願いします」
とたん、空気が変わった。さっきとは別のどよめきとともに、殺気は一気に引っ込んだ。
丁重に頭を下げるきゃしゃな姿は、地竜としてのりりしさに満ちていて。
気づくとオレまでいっしょになって、拍手を送っていた。
「留学の期間は一か月の予定です。
みんな、わからないところは教えてあげて、仲良く学びあってくださいね」
『銀河姫』――ミソラ学長もニコニコ笑って、拍手してくれていた。
その笑顔は、不思議と誰かに似ている気がした。
地属性どうしのいいコンビです^^
次回、魔王軍の状況まとめと作戦会議……の予定です!
どうぞ、お楽しみに!




