Bonus Track_72-3 守ってあげなきゃ! たれみみ魔王様はおねむのようです~シオンの場合~
カナタは『プラチナムーン』。イメージしたものをそのまま錬成できる。
さらに第三覚醒にいたったことで、その気になればネット上の情報を直接見たり聞いたりもできる。
でも、しらないものはしらないし、やったことがないものはないのだ。
基地づくり初体験のカナタはやっぱり、オレたちがお買い物に行ってる間に一人で苦戦してた。
下着と部屋着をパパッと買って、急いで帰ったオレたちをみると、ほっとした顔になってくれた。
そこからみんなでポーションのみのみ、できるとこを分担して基地をつくっていった。
アスカとの対談で、もともといい場所に陣取りはしてあった。小高い丘の上だ。
ここを掘り下げて基礎をいれて、地下室付きの建物を作る。
その一方で、外からひとや攻撃が簡単に入ってこれないように、物理的、魔法的、スキル的な壁や、レーダーになるものなんかを、いろいろつくっていった。
この陣地は、永久のものじゃない。やられて逃げ出すこともあるだろうし、仲間がふえて別のとこに移動したりもあるだろう。だから、物理防壁はサッとつくって分解できるものをつかった。
ざっくりいうと、土を入れた鋼の箱をいっぱいおいていくというものだ。
金属の板を組み合わせ、1m立法くらいの箱を作る。それを壁にしたいとこに並べて、どんどん土を入れていけば完成だ。
おれたちの多くが持ってるスキル『穴掘り』で、どんどん土を掘ってほうりこんでけば、壁はあっという間にできてった。
それでも、居住施設は三時のおやつになっても、つくりかけ。
町のみなさんの厚意とお勧めで、高天原でチェックインをしてあったので、出来るとこまでがんばって今日は引き上げた。
36名を即時一括で受け入れられる宿泊施設はなかったため、いくつかの宿に分かれてのおとまりだ。
もちろんイツカとカナタは星降園に、ミライとミズキはアリサカ家にもどってもらった。
ミライツカナタの三人ときたら、『家に帰れないみんなに悪いよ』『みんなも機会見て、うちに帰れるようにするからね』なんてけなげなことをいうもんだから、おもわず全員ぎゅーっとしてしまった。
でもそのときカナタは、もうけっこうふらふらしていた。
ご厚意で入らせてもらうにはもったいないくらいの素敵なお部屋で、あったかなごはんを頂いて、お部屋付きの露天風呂をいただいて。
そのあと、ライカネットワークを使っての会議には、やっぱりカナタは欠席だった。
『悪い、ちょっとふらふらだったからさ、俺が寝かせたんだ。
今日はその分俺ががんばるから!』
むんっと意気込むイツカは、やっぱりけなげでかわいくて。
やっとこっちにこれて、ほんとによかった。イツカとカナタは、おれたちで守ってあげなきゃ、なんて気持ちがほこほこ湧きあがるオレなのだった。
日向も要塞は作ったことございません。
ああ、対空防御……上から飛んでこられたら塹壕も胸壁も形無しや……
だからってこれがないと誰でも入り放題だし。なしって選択肢はありえない。
備えというのはそんなもの。
次回。ゼロブラ館でたたずむライムちゃんのひとりごとの予定です。
どうぞ、お楽しみに!




