Bonus Track_72-2 ステラ領宰相タクマ、留学します!~タクマの場合~
マリーさん――女王陛下から宰相に任じられてから三日。
オレは、高天原にいた。
よく言えば、場所に縛られない、自由な働き方を実現して。ありていに言えば、むちゃぶりをくらって。
『高天原学園の学生たちに自然に溶け込むことができ、なおかつイツカ様カナタ様に伍するだけの実力を有するもの……
それはタクマ、あなたが唯一の適任です。行ってくれますね』
『ちょっとまってマリーさん、宰相のおしごとはっ?!』
『必要な時にメールします。実習中など連絡のつきづらい状態でしたら、スバルさんに代行をいただけることになりましたので』
『…… あ、はい』
『世界の敵』が現れたこの時期に留学バナシとか、ぶっちゃけ正気の沙汰とは思えない。つまり、おとなのつごうというやつだ。
オレとしては、渡りに船だ。こうやって、後ろのほうから守ろうとするのはやっぱり性に合わない。一番前に飛び出してって、自分の手で何とかする。そのほうがずっとオレらしい。
『ほんとにメールしますからね?』
『いやするの?!』
『月萌でいいひとを見つけたらすぐ知らせるのよ? スバルちゃんもそこのとこいちばん心配してるんだから』
『心配されるのそこっ?!』
『タクマは強く賢い子。そのことはみーんなわかっているもの。
心配なのはちょっと、いえかなり鈍感なところぐらいだわ。
いい、なにかあったらエルメスを頼ってね。ハルキくんのようないい子をみつけたら絶対離さないのよ。おへんじは?』
『はあ……』
なまぬるい返事を返したオレだけど、いや、これは聞いとかなきゃならない。
気を取り直して問いかけた。
『……エルメスがもし、イツカとカナタに下ると言い出したら』
『その時について行ってもらえるように、タクマなのよ』
マリーさんはいたずらっぽく笑った。まったくかなわない。
『いずれ、『魔王軍』は超国家的組織として、月萌・ソリステラス連合と戦うことになることでしょう。
その時には、エルメスを、ハルキくんを。
イツカ様とカナタ様を、お二人の下に集ったみんなを――どうか、よろしくね』
それでも、立ち上がってオレの手を取ったマリーさんの目は、この上なく真剣だった。
『ああ。……かならず。
あいつらも、ソリステラスのみんなも。誰もきっと死なせない。
ハッピーエンドまでやり抜いてくる。ぜったいに』
オレはそういって、故郷ソリステラスを発ったのだった。
苦労して説明部分書く→あまりこまごま考察しすぎるのはタクマらしくない→説明ガッツリけずる→( ゜д゜)みじかっ?!(そりゃそうだ)
次回、魔王軍最初の夜。まだ拠点が完成しきっていないので、星降町でお宿をもらって過ごすお話です(予定)。
どうぞ、お楽しみに!




