72-4 ちいさな、たくさんのほかほかに支えられて~でかみみ魔王軍、お風呂あがりのうさぎたち~
説明回を書き直したらこうなっていた。
野郎のお風呂シーンが好きなわけではないのです。ぐうぜん、そう偶然です(主張)
「すごいっ、すごいよカナタ! 投げ銭!
学園側とおんなじくらい集まってるのはそうだけどね、ほら!
このペースなら、お城だって作れちゃうかもー!」
ここは、さきの戦場をすこし離れた場所に作ったおやすみどころ――その一角にある『銭湯風おふろ』の脱衣所だ。
風呂上りほかほかのシオンが、髪も乾かさず走り寄って携帯用端末を見せたのは、誰が作ったのかどんと鎮座する、時代物のでっかい体重計だった。
「こらシオ! それは体重計!
まったく、眼鏡がくもるととたんにポンコツちゃんになるんだからな~。
そんなとこがいいんだけど」
そんなことを言いながらタオルをもってシオンをおっかけるソーヤ。
眼鏡をふいてかけなおし、短い黒のうさみみをやさしく、わしゃっとした黒髪をわしわしふいてニコニコ。
そのてきぱき幸せそうな様子、もはやわが子をいつくしむイクメンうさぎだ。
世話を焼かれるシオンのほうも、えへへと笑ってうれしそう。
なぜ、ふたりにうさみみがあるのか。それは、この場所はティアブラネットの影響下だからだ。
それでも正気なのは、あのあと『精神支配絶対防御』のシールタトゥーをぺたりさせてもらったからだ。
デザインは、うさねこエンブレムに黒い月の文様をくわえたもの。ニノが目を覚ましてすぐに、ちゃちゃっとやってくれたものだ。ぶっちゃけかっこいい。
おそろいエンブレムをほっぺにつけたうさみみふたり。そのほっこりシーンをいつまでも眺めていたいのはやまやまだが、大事な話だ。おれは自分から近寄って声をかけた。
「シオン、おれはこっちだよ。
そうだね、お城作れちゃうかもね。
もちろんラボも忘れないでね?」
「うんっ!
ゼロブラ館ラボの図面はもらってるし、みんなでばっちりつくるから!
それとね、……見て、これ。
オレね、泣きそうになっちゃった」
画面に横たわるTP総額。その第一印象は『長っ!』だった。
湧きあがる身震い。もう一度湯船につかってこようかとすら思ったけれど、次に示された画面でそれはすっかり、幸せのほかほかにかわった。
ひょいと後ろからのぞいてきたイズミが、柔らかく笑う。
「思い出すな。おれがケガしてたころ、ニノが投げ銭してくれてたの。
名前入りで一回。時間ずらして名前なしでもう一回か二回。
あ、これとこれニノのだって。毎回、ほっこりしてた」
それを聞いたニノはあわてる。
「えっ、まってイズミさん? なっ、なんでそれわかったのっ?」
「あの頃のおれに投げ銭してくれる奴なんて、そんなにいなかったから。
毎回ついてたメッセージも、おまえのだってバレバレだったし」
「えええ……」
「一生懸命クラフトして稼いでさ。小遣いまで、なげてくれてたろ?
それ、わかってたから……うれしかった。すごく」
「わかる。
……大変だものね。
感謝して、大事に使わなくっちゃね」
個人を特定しない形でまとめられた内訳リストには、一桁での投げ銭もいくつもあった。
子供たちや、駆け出しの冒険者たち。今、余裕のない人たち。手元に自由になるものが、故あってほとんどない人たち。
いろいろな人たちが、いま、気持ちだけでもと投げてくれた、貴重なTPだ。
イズミもシオンも、ラビットハントの標的になっている。血のにじむような想いで苦闘し、生きるための1TPを稼いできたのだ。
おれたちもソナタを、そして仲間たちを救うために、ときに泣いたりケンカしながらも駆け上がってきた。
だからわかるのだ、心づくしのTPだと。
添えられたメッセージは、ほかほかの湯舟よりあたたかい。
ちいさな、それでもたくさんのあたたかさに包まれれば、そうでないものがもたらすひやりとした肌触りももう、気にはならなかった。
双方の投げ銭が互角なのは、ある時間帯に集中して双方に落とされた、何件かの高額の投げ銭のため。
ぶっちゃけ、月萌国がこっそり頑張ったためである。
この時点でどちらかがあからさまに有利になってしまえば、ソリステラスが黙っていない――おれたちが有利なら、月萌独力で対処できてないじゃないかと。不利ならば、こちらがおれたちと戦う機会がなくなってしまうと。
それを防ぐ目的で、名を伏せて資金の投入をしてきたのだ。
内政干渉と戦争のどちらも防ぎつつ、おれとイツカ――『リスポーンしないレイドボス』を、最大限に利用できるように。
ぶっちゃけソリステラスをなだめておける間は、この『念入りに作られた拮抗状態』は続くことだろう。
おれたちとしては、ありがたく利用させてもらうまでである。
でも、まずは。
「あのさ、この投げ銭とメッセージへの、お礼のコメント。
『うさぎ男同盟』プレゼンツでやるのはどうかな?
いまの言葉みんなに届けたら、きっと喜んでもらえると思う」
「さんせーい!」
このあたたかさを、くれたひとたちにお返ししたい。
おれたちのみちはきっと、これからもそうして、続いてゆくのだから。
おれたちはそして、つくりかけの拠点をバックに、笑顔の『ありがとう』と『頑張っていきます』を、全世界に流したのだった。
戦闘から、銭湯へ――!!(爆)
ミズキはミライと一緒にあとを預かってるので入浴してなかったのです。惜しい(おい)
はやくここにアスカ達も加わってほしいところです。
次回は高天原サイド。アスカ達です。
なんでかれらがそっちに残ってるのかは……いうまでもありませんね!
暗躍する二人を描く予定です。どうぞ、お楽しみに!!




