72-3 ピンチを裏返せ!『魔王軍』の初勝利!
水の巨鳥は、その長い長い脚で幾度も蹴りを放ってきた。
巨鳥の頭に身を突き出したソラも、水の剣をふるい、斬りかかってくる。
ぶっちゃけ<シルウェストレ>で正解だった。渦巻く風の幻想植物で形成されたツリーアーマーは、局所的にダメージを食らっても、柔軟に自らを組み替え、そのカタチと働きを維持してくれる。
パワーソースとなるおれの負担はもちろん増えるのだが、そこはポーション飲んで頑張るっきゃない。
とはいえ、このままぐずぐずしていれば次が来てしまう。
味も香りも甘いミルクポーションをぐっとのどに通して……そうだ。
おれは、とある幻想植物をそっとツリーアーマーの中に忍ばせる。
同時にイツカの背に、『これから真逆の嘘をつくよ』の合図、一瞬だけ香るオレンジフレーバーのミックスポーションを投げ、叫んだ。
「ドラゴンイーターに突っ込んでもだめだ。『0-G+』でソラを叩いて!」
「りょかっ!」
イツカはアクエリアスによる斬りつけを的確にいなしつつ、急速にパワーチャージ。
そのパワーを惜しみなくつぎこみ、ガツンとノックバックをくらわすと、ひとつ鋭くしっぽを振ってきた。
おれはもちろん、イツカを高く高く投げ上げ、ツリーアーマーの風防を閉じた。
『ハハ、そう来ると思ったぜっ!
だが甘かったなァ! ンなもん程度で耐え切れると思ったらおおまちがいだ!!
落ちろ、デカミミ大魔王ッ!!』
悪党モードのソラは高らかに笑い、ガンガンと風防に斬りつけてきた。
だが、そこまで叫んだところで、ぴたりとその動きは止まった。
そしておもむろにソーヤとシオンを、水の巨鳥の中に回収。
さらにはツリーアーマーを足元に落としたおれ、上空からまっすぐ落ちてきたイツカまでもさくさく収納。
「わ、ソラー?! だめだよ、『ぺっ』して『ぺっ』!!」
チアキが走ってきながら呼びかけるけど、その声はソラにはとどかない。
それどころかチアキ本人もソラの足元でくるっと向きを変え、おれたちを守るように剣をかかげた。
「『ぺっ』て……」
地味に傷ついたらしいイツカの頭上に、ちっちゃくBP5って赤いダメージポップアップが上がっているが、ここはスルーだ。
なぜって、まさしくその瞬間、すさまじい数の赤ポップアップが、水の巨鳥のそとで上がりまくっていたのだから。
種明かしをすれば、至極単純な作戦だ。
おれは『シルウェストレ』を構成する幻想植物のなかに、魅了効果のあるものをこっそりと入れていた。
不用心に近づき、深く息を吸い込めば、その甘やかな香りで魅了される。
ソラだってそのへんは気を付けていた。けれどその警戒は、自分の狙っていた有利=おれの不利を目の前にぶら下げられてどこかに行った。
もちろんソラがいつもどおりなら、こんなことにまではならなかっただろう。けれど、ソラの目は曇ってしまっていた。むりやりに吹き込まれたつよい敵意、『狩りたい』という強すぎる気持ちに。
チアキは持ち前の優しさだろう、おれたちをほぼ敵視していなかったようだが、そのぶん心をすり減らしていたようだ。とつぜんのソラの『乱心』に焦って駆け寄り、これまた魅了の香りにやられてしまう。
そうしてそのまま、覚醒技を発動した。
学園側の作戦は、単純ながらパワフル。強攻撃つるべ打ちで余裕を奪ったところでそれをぶっこみ、一気におれたちを倒すつもりだとすぐに分かった。
アスカおとくいの開幕ボム、ソーヤとシオンの連携によるメギドフレアぶっぱ、モモカさんのモモンガ攻撃に、エクセリオンであるソラの覚醒技。それらで余裕かHPを奪ったところに――
レンの最新型テラフレアボム、そしてそのチカラを任意の対象に導くチアキの『優しき牧陽犬』を発動。
最強ボムのチカラをさらに一点集中させた攻撃で、近くにひそむ増援もろともおれたちを撃破するつもりだったのだ。
もしこれを『絶対爆破防御』の陣で防いでも、すぐに後続のハンターたちとボムによる第二波、第三波がやってくる。
たとえミズキとミライが駆けつけてくれたとしても、レイドボスよろしく削られてしまってジ・エンド。
この一帯に仕掛けられたティアブラネットの中継器を探しだしてドサマギに破壊、正気に戻ったみんなを連れて撤退、なんてことは、とてもじゃないができっこない。
けれど最強のピンチは、くるっと裏返すことができれば最強のチャンスになる。
おれたちとおれたち側のしかけを的確に狙う技は、敵味方が入れ替わったことで、グランドマザーの意の下にあるものたち――『大神意』の支配下にある学園軍と、『大神意』を維持するために置かれたティアブラネット中継器に選択的に痛打を与えてくれたのだ。
ほとんどの学園生・卒業生たちが倒れていた。装備も点滅して消えかけている。
その体に傷はないが、正直胸が痛む。
いや、後で謝ることにしよう。
まずは、まだ立っている者たちへの対処。そして、そこここでぱりぱり火花をあげている中継器を黙らせなければ。
先に声を上げたのは、後方で指揮を執るアスカだった。
「撤退! 動けるものだけでも逃げろ!!
ケイジ、ユキテル、しんがりをたのむ!」
ケイジとユキテル。マルヤムさんの覚醒技で朱鷺色に染まった二人が走ってくる。
イツカが水の巨鳥からすぽんと飛び出し、二人に対峙した
金銀の猟犬たちは、右と左から同時に斬りかかる――防御はもちろん、左右前後への回避も難しい必殺コンボ。
けれどイツカは臆さない。二つの剣がトップスピードとなったタイミングで、イツカブレードをたたきつける。
もちろんその一撃には、おれたちからの支援が乗っている。
「神聖強化!!」
三つの声が紡いだ聖なる強化のひかりは、朱鷺色の二閃をはじきかえす。
二人を相手に構えつつ、イツカは問いかける。
「ふたりとも。残るのか?」
「ああ。……悪いな」
「守らなきゃいけない方がいるんだ。だから行けない」
「俺たちを連れていきたいのか、その人のとこに」
「いや。それは望まれていない」
「了解」
猟犬装備の剣士バディは、おれたちとおなじスターシード。
すなわち、ふたりとも正気だ。
である以上、今はこれ以上何も言えない。
互いにけん制しあいつつ、去っていく二人を、彼らに声をかけつつ退いていくアスカ達をおれたちは見送ると、中継器をすべて破壊した。
「第二のカテゴリ」ってのはケイジとユキテルでした!
彼らの事情も、またのちほど。
この作品、システム面とかシステム面とかふわっとしてるとこが多いですが、それらもおいおい語ってければいいなと思います(いや、幼少期編書けばいいのですが^^;)
活動報告さぼってますが大丈夫元気です!
ただちょっとだけ時間ほか余裕がないのです、ごめんなさいm(__)m
この数日でまた急速に冷え込んで来てますね。皆様どうぞご自愛くださいませ。
次回、やっとこさ拠点設営に行けます。
はよゼロブラ館にたどり着きたい(心の叫び)
どうぞ、お楽しみに!




