72-2 始まる実力行使! イツカナVS学園軍!
ざっくりとした布陣計画がととのったのち、おれたちは握手を交わして立ち上がった。
「さってと。
そういうわけで、交渉は決裂だね!」
「うん。
じゃ、やろっか?」
そうして、戦いが始まった。
事情を知らないひとたちにとっては、悲惨としか言いようのない――知っている人にとっては、出来レースとすら言えるやつが。
アスカが「『はーい、ホンモノはどっちでしょーかっ!』」と唱えれば、両手にひらいたゲートから、最新型のテラフレアボムが一つずつ飛び出してくる。
同時にハヤトはアスカの胴に手をまわし、かっさらうように後方へ跳ぶ!
もちろん、こんなのはただのプレゼントだ。
イツカの腕甲にこめられた強欲のチカラでもって、ぱくんと回収してしまえば、なんということもない。
それでもさすがというべきかハンターたちは、タイミングを早め斬りこんできた。
「よう、ちょびっとぶりっ!
高天原の外でのバトルなんて珍しいからな。今日は楽しもうぜ!!」
一番手はソーヤ。フル強化状態のハイテンションで斬りこんでくれば、その後ろを追うように飛んでくる白の極太レーザー。シオンの『メギドフレア』だ。
ぱっと外に飛びだせば、目の前が一掃される。あわれな東屋は跡形もなく消滅だ。
「シオー! それやりすぎ!! やりすぎだからっ!!
はー、あやうく余波で焼きウサになるとこだったぜ……」
ソーヤはそんなこといいつつおしり(ちょっと焦げてる)をさすっているが、それでもどこか楽しそう。
「ごめんね、ソーやんのしっぽがかわいかったからつい!」
「『つい』で焼かないでえええってぎゃー!! カナタまで――!!
ちょっとまってふたりいっぺんはむりだから、ふたりは――!!」
仲睦まじくいつものコントをきめるふたりにほっこりしつつ、まずはソーヤに斉射をプレゼント。ダウンをとると「あわわわソーやーん!!」とシオンが走り寄ってきて、こっちはイツカがスキル『首トン』でダウンさせ、まずは一組いっちょあがりだ。
次いでやってきたのは『おこんがー!』のふたり。
すでにモモカさんは上空で覚醒技チャージを終えていたが、ここにはすでにダウンした味方がいる。二人は攻めあぐねた。
「え、ちょ、モモカストップ! ソーヤくんとシオンくんが巻き添えになる!」
「ええええ! ちょっどうしようこれ! とりあえずどっかに落とさないとだめだからこれええ!!」
いまはおれたちに敵意を抱かされているとはいえ、あわあわとこまっている女子をほっておくほどおれは冷たくない。
「だいじょうぶ、こっちで回収するから!
ふたりは巻き添えにしないから、遠慮せず落として!!」
「カナタくん……!!」
にっこり笑ってそう申し出れば、モモカさんの瞳が揺れた。
けれど、それは一瞬のこと。
「『ルーレアの雷霆』!!」
「『ルーレアの一閃』!!」
クロスするように飛んできたオレンジの光ふたつ。
うちのひとつが、モモカさんの技を破壊しキャンセル。
もうひとつが、おれたちの足元をえぐり後退させる。
やってきたのはもちろん、ふたりと一番仲のいい男子二人だ。
「そういうときは、俺を呼ぶと、いいから。」
「えへへ、うん!」
ミツルが一生懸命言えば、モモカさんはほほを染めてニッコリ。ごちそうさまです。
いっぽうでミクさんとアオバは、いいコンビネーションでおれたちにむけ剣を構える。
「そのまま、下がってくれ。ソーヤとシオンを返してほしい。
人質にするつもりなんかないのは分かってるけど、これじゃ戦えない」
「もちろんそんなつもりじゃないよ。
でもさ。戦わないって、選択肢は?」
「そんなんあるわけないだろオラアア!!『ドラゴン・イーター・プラス』!!」
アオバたちが口を開いたところに超高速で突っ込んできたのは、白の仮面をつけたソラ。
彼の翼に、腕に、足にはすでにいくつもの文様が浮かび上がっている。
複数の3Sを宿し、そのチカラを発動した強敵は、走りながらあの水の巨鳥を形成。
だが今度は前と違い、頭部を飾る、冠状の羽根の間にソラは姿を現した。
『ハハ、見ろよこれ!
新技だぜ。こいつは無限コンボが使えるんだ!!
さあ、おとなしく捕まってもらうぞイツカナァ!!』
なんと、しっかり弱点をつぶすアップグレードをしてきたらしい。
これは、正直に言って、やっかいだ。もしかしたら、イツカの『ブラックムーン』――スキル無効技に頼らなきゃかもしれない。
目くばせをかわしておれとイツカも、同様の体制をとった。
すなわち、おれが風のツリーアーマー『シルウェストレ』を形成。イツカがそのうえにぴょんと飛び乗る。
「おんなじ言葉そっくり返すぜっ!
こんどはビーストモードなんかはいらねえ。ガチでいくぜ、ソラ!!」
そうして不敵に笑いながら、すらりとイツカブレードを抜いた。
結局一話でまとまりませんでした。アカン……!
次回、初戦決着!
ひみつ通信をされていなかった意外な二人が明らかになります。
どうぞ、お楽しみに!




