Bonus Track_71-7 憎むもの、笑うもの、愛するもの~セレナ・タカシロをめぐって、三つの会話劇~
いろいろあって遅れ申した……m(__)m
「ここだけの話だが。御前が恩赦されたそうだぞ」
「ほ、本当か?!」
「どなたのお力だ? 御大か?」
「それ以外にはなかろうよ」
「ふむ、なるほど。
……うまいことをお考えになったものよ」
「だがここまで移行してしまったものをまた旧に復すには、どれほどかかることやら……」
「まったくあの猫どもめ。面倒なことをしてくれたものだ。
国を守れねば、その力を保てねば。残るものなどありはしない」
「われらの手で守られておきながら、……とんだ恩知らずよ」
「所詮あれらは『よそもの』ということだな!」
「まあいいだろう。やつらを片付ける許可はいただけているのだ。
大女神のご命とあらば、もはやなにはばかることもないというもの」
「まったくだ!」
* * * * *
『へえ、月萌では外患誘致にも恩赦がいただけるのかい? またお優しいこと。
さすがはあの子らのお国だねえ』
『なんのことかしら?
私たちの国は敵どうしではないのですもの。
あれはあくまで、両国合意の上での軍事演習。そうでしょう?』
『お偉いがたは賢くていらっしゃる。
で? そのお偉いお嬢様が、今度は何のご用だい?
このタイミングでとっこんでったら、さすがに内政干渉だろう?』
『あら。
あの二人を狩ることは、わが国の方針にも合致しているのよ。
それを隣国からの留学生に『偶然』お手伝いいただいたところで、感謝こそすれ、文句は言いようがないわ』
『ふん……。
ウチの子らを安く使おうとは、穏やかじゃないね?』
『まさか。
妹御を祖国に残した六柱に、六獣騎士。さらにはやんごとなき皇女様。
そんな方々を粗末にできるわけがないでしょう?
精いっぱいのおもてなしをさせていただきますとも。ええ、もちろん』
* * * * *
「久しぶりだね、セレナ。
こうして会えるのは、どれほどぶりか。
綺麗になったね、またいっそう」
「御大様……いえ、叔父上。
いったいなぜですの。わたしが、恩赦とは。
月萌とソリステラスが和平を認められたとはいえ、わたしが犯したのは極刑よりほかになき罪。恩赦がなされてはならない種のものであるはずですわ」
「そうさな。
……手土産、と思ってくれれば落ち着いてくれようか。
あの子らにより、Ω制度は廃止のはこびとなった。
それを受け、極刑、すなわち不可逆のΩ堕ちは不可能となり、君に対する唯一の刑の執行のしようもなくなった。
そこで、この事態。国家の総力を挙げて対処しなければならない緊急時。君の頭脳は是非に必要だ。
よってこれまでの功を鑑み、厳重な監視の下で働き、罪を償う働きを行うことをもって、罪一等が減じられることとなった。
これは月萌において、Ω制が完全に廃止された、そのことを端的に表す事例だ。
生と死を分かつ局面、社会における究極の場においてすら、それが徹底されたというね。
ゆえに逆に、この恩赦さえ行われてしまえば。
その後、月萌の社会がその要請でΩ制を復活させたとしても、女神の御言葉に逆らったことにはならない。
イツカとカナタに対峙し、命を燃やし尽くしたところで、約束の地に赴けるのは一握りだろう。
この世界は、この国は、この未来はまだ続く。
そのあとにも、この美しい国を守るため。Ωの力は必要なのだから」
外患誘致罪に恩赦が与えられることがあるのかを調べるのに時間かかりました。
そんなんその国、その時代次第でええんやないか……という結論に達しました。
うん、きっとむだじゃない。はず;;
次回、新章突入。
ついにやってくる、運命の月曜日。
町の郊外で向かい合うものたちの運命は……?!
どうぞ、お楽しみに!




