71-2 あたたかさにつつまれて~亡命うさぎと、愛する場所<ふるさと>
「ひゃほおおおおぜろじー!!」
「ぜろじーだー!!」
「ぎゃああああああ!!」
「わああああああ!!」
「あはははははははははははー」
一番前の席で、イツカとライトがはしゃいでる。
コウジはおれのとなりで絶叫している。
三番目に乗ってるミライとミズキは、わああと叫びつつ楽しそう。
そのつぎ、最後列に乗り組んだケンタとライカは笑っている。
ただし、ライカは楽しそうだが、ケンタは完全な棒読みだ。
しかしマシンを降りるとケンタは、メガネをかけなおして言った。
「もう一回乗りましょうっ!」
「やだあああああああああ!!」
「ちょっそっち噴水ー!!」
コウジは全速力で逃亡。噴水にとっこみかけて、危うく踏みとどまった。
実はこれ、ここでもう何回かやってるパターンだったりする。
なつかしい。そして、楽しい。
おれも声をあげて笑っていた。
ゆうべは、明確な結論は出なかった。
おれとしては、イツカと二人でもいい。むしろ、二人だけがいい。
足手まといだというのではない。ただ、小学生の妹たちに無理はさせたくない。コウジとミライとミズキには、残るみんなとお互いたちを守ってほしい。そう思うからだ。
それでも、唯一の肉親と離れたくない、そう思うソナタのきもちにもうNOは言い切れない。
声をあらげることないよう、言葉を選びつつ、気持ちと考えを伝えあっていれば、なんとイツカが寝落ちした。
『イツにゃんはハンターとして、いつも一番気を張ってるからねぇ。
寝かせてあげよう。
みんなもそろそろ寝るといいよ。
まずは明日。目いっぱい楽しもう。それが、これからのチカラになるよ』
優しくイツカを撫でてやりながらのライカのことばに、作戦会議は解散となった。
結局のところ、結論は明日、大人たちの話し合いの結果次第なのだ。
ここにいさせてもらえるならよし。出ていかねばならなくなったら、あらためてそのとき。
だいじょうぶ、どちらにせよ、星降町はきみたちを切り捨てるなんてことはしないよ。
イツカをベッドに運んでくれたライカは、そういってウインクして出ていった。
ひとしきり笑い転げ、はしゃいで騒いでいたら、時計塔の鐘が鳴った。
『絶叫マシンに乗るなら』とお弁当のバスケットを預かってくれた女子たちが、芝生の上から呼んでいるのがきこえた。
「こら男子とライカちゃん~! 早く来ないと食べちゃうぞ~」
「はーい!!」
ちなみにここでもそうだが、女子のほうが強い。
つまり、へたするとほんとに食べられる。
おれたちは全速力で駆け出した。
お弁当の内容は、ご飯におにぎり、サンドイッチとパスタともりだくさん。
おかずもハンバーグにからあげ、たこさんウインナーにたまごやきと何でもあり。
ひときわ異彩を放っているのが、ミズキが作ってくれた和風の煮物である。
「ちょっとまって……これたべちゃっていいの?!」
「時間たったのにすっごくきれい……」
「料亭の仕出し弁当だろもうこれ……」
「確実に万単位取られる奴ですね……」
「はあああ、食べるのもったいない……」
「ふふっ、そんなに褒められたら照れちゃう。
食べて食べて。これでよければ、また作るから。
俺ね、ほかのはまだあまり、うまくできなくて。だからみんなのお料理がすっごく魅力的に見えるんだ。少しずつだけど、全種類制覇していい?」
「もちろんですともっ!!」
全種類、ちょっとずつ食べるとしても、結構な量だ。
しかし、ミズキはこれでなかなかの健啖家。ほかの野郎どもにけして負けない食べっぷりを見せ、レジャーシートに広げられたお弁当はどんどんなくなっていった。
今回は、このあとケーキバイキングが控えている。だから食後のデザートはリンゴだけ。
それでも、水筒のお茶を飲み、うさぎさんカットのりんごをいただけば、程よくおなか一杯。再び遊ぶに十分なエネルギーは充填された。
本日一番食べたであろうミズキが幸せそうに言う。
「はあ……ほんとに楽しい。
こんなときだけど俺、ここにこられてよかった。
みんな優しいし、あったかいし。
みんなさえいいなら俺も、ここを第二のふるさとって思ってもいいかな?」
「そっか……ミズキ、高天原生まれなんだっけ……」
そう、ミズキはこの件で、故郷と家族と、さらには愛する婚約者とも離れてしまったのだ。俺たちとともに行くなら、いつ再会できるのかわからない。
「俺は後悔してないよ。
俺はミライに、ソナタちゃんに、選んでもらえてここにこれたんだ。
それはとても、うれしいことだし……
父さんたちや、ブルーベリーさんも、俺の立場ならきっとこうする。
俺と大切なひとたちは、いつも心のどこかでつながってるから」
微笑むミズキに、ミライがぎゅうっと抱き着いた。
イツカがニカッと笑う。
「今さら何言ってんだよミズキ! 水臭いぜ!」
ソナタがにっこり笑って言う。
「あたしたち、ミズキお兄ちゃんは、もうとっくにお兄ちゃんみたいなものと思ってるよ!
ミズキお兄ちゃんがいいなら、ずーっとここにいていいんだからね!!」
もちろん、おれも。
「そういうわけだから、ミズキもうちのこね?」
「まってまって、ミズキはお兄ちゃんの『弟』だから! だからミズキはアリサカ家の! うちのこだからっ!」
ミライがもっとぎゅうっとして、所有権を主張する。
そのかわいらしさに、胸がほこほこになった。
日差しでいっぱいの芝生の上。周りの人たちの目も暖かい。
おれたちはぶっちゃけ有名人。へたしたら、取り囲まれて騒がれる身の上だ。
それがこんなふうにまるで普通に遊べるのは、『昨日今日だけでもせめて、ふつうの子として』と町の人たちが取り決めてくれたから。
このセカイは、おれたちがもともと生まれ育った場所ではない。星の子としての宿命は、いやおうなしにそれを突き付けてくる。
それでもここは、この町はやはり、ふるさとなのだ。
このあたたかく、愛しい場所をまもるには。
おれのなか、ひとつのアイデアが、形を成そうとしていた。
くしくもそれは、その後ライカを通じて告げられたものと、おどろくほどに一致していたのであった。
あたたかいのであくびがでる→ブックマークがふえているようだ( ゜д゜)ハッ!→あくびがとまる←イマココ
うれしすぎる……いったい何が起きているのだろう(真顔)……よし、こういうときは笑えばいいんですね!
ありがとうございますっ!!(∩´∀`)∩
毎回言ってるようですが、ほんとに力をいただけます……がんばれます!!
次回、敵意に身を任せる者、任せきれぬもの。
どうぞ、お楽しみに!




