Bonus Track_70-1 むかつくスキルにふざけた使者!~レンの場合~
それは前触れもなしに起こった。
嫌なカンジの頭痛。何かが強引に頭にねじ込まれたような、ゴリッとした感じの。
異常を感じてステータスを確認すれば、こんな一文が横たわっていた。
『大神意:イツカ・カナタを敵として狩る』。
特記事項に加わったその文字は、解呪のポーションでも消えなかった。
そのへんが一気にざわついた。みんな戸惑ってた。オレだって例外じゃない。
そりゃそうだろう。あいつらは仲間だ。なのにその顔を思い出すと、あれは敵だと思っちまうのだ。
狩らなきゃならない、大物だ、と。
ポーションを使ってみるやつ、魔法を使ってみるやつ。叫んでみるやつ、全速力で走ってみるやつ。
けれど、どの試みは無駄に終わった。
そこここから『狩らなきゃ』『あの二人を狩らなきゃ』という、不気味なつぶやきが響き始めた。
チアキは耐えかねたのか、グラウンドに飛び出し、悲痛な声で叫びだした。
「おかしいよ、こんなのおかしいっ!!
イツカとカナタは、仲間だよ! 僕たちみんなを助けてくれた、仲間なんだよ!
それがなんで、敵なの。狩らなきゃいけないの。どうして?!」
かえってきた声は『うるせえ!』で。
飛び出してきたやつらは、殺気立った目つきでチアキにつかみかかろうとした。
チアキはつかみあいのケンカなんかできない。もちろん割って入った。
「なんだてめえら、敵の味方すんのかよ! だったら」
「全員止まれ!」
こんどこそビシッと止めてくれたのは、ノゾミちゃん先生だった。
『グランドマザー』との謁見の結果。ならびに、今後の行動について、学長より訓示がある。
至急、講堂に集まるように。
そう申し渡され、全生徒が集合したのは、十分後だった。
そこで聞かされたのは、イツカとカナタが『グランドマザー』によって『世界の敵』と認定され、高天原を追われたという、ショックしかない結果だった。
それも、みんなのため、世界平和のためなら、いくらでも矢面に立つと言ったためだと。
「イツカとカナタは……俺たちの、ため……」
「なのに、なんで……敵なんだ?
敵だって、思っちまうんだ……?」
壇上のミソラちゃん先生はマイクを手に、いつになく学長らしく言った。
『みんな、疑問を感じている。それでもなお、二人を敵と思ってしまうよね。
それが、『ギアス』だ。
ふつうの使い手によるものなら、ポーションや神聖魔法でこれを消すことができる。
でも相手は『グランドマザー』。ふつうの方法で消すことはできない。
たとえ一瞬消せたとしても、すぐに元に戻ってしまう。彼女のしろしめす、ティアブラネットの中にいる限り。
だから、いまはそのことをできるだけ考えないで。
もし考えてしまったら、だれか先生か、ライカちゃんに相談して。
くれぐれも、二人を狩りに行くなんて無茶はしないこと。
卒業もできてない状態で、歯が立つ相手じゃ絶対にないからね。
二人を狩るというなら、まずは全力で鍛え、学び、この学園を卒業しなさい。
いいですね?』
そう、たとえ、敵だとしても。考えなければ、ないのと同じだ。
対処は、大人に任せる。プロにまかせる。
そんな風に思考停止してしまえば、おれたちはあっつーまに元通り。
午後からの定例闘技会は、いつものものように盛り上がり、いつものように終わったのだった。
不思議が起きたのは、その日の晩だった。
布団にもぐったおれの髪の毛を、だれかがつんつん引っ張るのだ。
「なんだよチアキ、なんか用、……」
布団から顔を出せばそこにいたのは、緑の瞳をした小さなカラス。
いたずらっぽくウインクひとつ。ちょん、とおれの頭に止まれば、聞き覚えのある声が流れ込んできた。
『へいほーい騒ぐなよボーイ?
いっちょおにーさんたちとたのしーおはなししよーか~。いい子にしてれば痛くは』
おいライカよ、静かにしろってんならそれ完っ全に逆効果だからな? オレは心の声で突っ込んだ。
ハーッハッハッハ、何とか書けたぞー!!
すみませんコメントお返事等もう少しお待ちください、明日、明日には……!!
ハイ、完全にダメなおとなの典型をやっちまってますね^_^A;
次回、ひっさつ・ライカネットワークでさくせんかいぎ!
そろそろライカたちが妹達ごっこを始めそうで、作者は戦々恐々としております。
ともあれどうぞ、お楽しみに!!




