Bonus Track_69-3 ソレアの覚悟、ステラの想い~元『虚無』スピカの場合~
『グランドマザー』との謁見の結果はもちろん、即日ソリステラスにもたらされた。
先ぶれとなったのは、『ハートチャイルド』たちの変化。
全員が、いきなり元気になったのだ。
検査をしてみれば、どの子たちも快癒している。
とびはね、走り回る子たちさえいる。
まさしく奇跡としか言いようのないことだった。
だが喜んでばかりもいられなかった。
いつもクールなセレネが、いつにもましてシリアスな顔をして告げたのは、ミッション『エインヘリアル』の変形もしくは廃止は、きっぱりと却下されたということ。
Ω制廃止は、人の手で。それはすでに予測されていたため大きな驚きもなかったが、これにはいつもイケイケなソレアも絶句した。
さらに、『国民たちの前身が、ティアブラネット敷設域に出現するモンスター=VRゲームの敵キャラである』と暗に示されたことが告げられるにいたり、『星の間』は恐ろしいまでの沈黙に包まれた。
証拠として示されたライフログは、ステラたち女神が管理しているものと同じもの。
『どういうことなんだ?
ボクたち女神は『マザー』のヒューマンインターフェースだ。
でも、この地に生きるみんなは、人間じゃなかったのか?
ボクたちのもとで、ヒトとしての器を得て、って……』
『わたしが目覚めて……最初にみんなに会った時。みんなは人間だった。
ソレアもセレネも、そうでしょ?
ライフログだって、そこからが始まりのはず、なのに……』
『けれどこれはほんものだ。
母君が、伏せておられたのだろう。われらには、民には不要と、そう判断して。
実際アスカも動揺していた。不用意に知られてはならん情報だということは、間違いのないことだ』
『そうだね。……それでもボクは、知らせなきゃ。すくなくとも、ソレアの民には。
そうして起きたことは、すべて受け止める。
それがボクの、きめたみちだ』
わたしは知っている。彼女が、ソレアがどれだけの苦労をしてきたか。
それでも、敢然と立ち向かう。
たとえ、ソリステラス成立時のそれにも近い混乱がおきるとしても。
『もちろんステラの民に関しては、ステラの意見に従うよ。
ステラはどうしたい?
ボクたち、チカラになるからさ。ステラの素直な気持ちを聞かせて』
けれど彼女は、それ以上に優しい。
それはセレネもだ。いつものポーカーフェースながら、しっかりと一つうなずいて、自分も味方だと示してくれる。
ステラは『ありがとう』と微笑んで言う。
『わたしは、すこし、考えたい、……かな。
もちろん、みんなに教えなきゃ。それが、この国のすがたを変えた時に、きめたことだもの。
……そうね。αのみんなには、そのまま伝えて大丈夫、のはず。
βの子たちには、うん。なにかいい方法を、考えなくっちゃ。
そのわたしが、言っちゃいけないかもだけど……
セレネ。セレネは、ぜんぶぶっちゃけるのは――しないほうがいいと思う。
月萌は、『ステラ国』の二の舞になっては、いけないわ』
柔らかく、けれど最後は、きっぱりと。
結局、セレネのことも、心配している。そして月萌のことも。
セレネの顔が柔らかくなる。
『ああ、そのつもりだ。
月萌は、秘密主義者の最後の砦。あのときからそう、思い定めていた。
大丈夫、つらくはない。ありがとう、ステラ。
それより、ステラだ。
ソレアも、策を選べるなら選んだほうが良い。
考えたくはないが、われらは第一に『グランドマザー』の意を受けしもの。
場合によっては、このように『我々』で居続けることが、難しくなるかもしれぬ』
『そう、……だね……
ボクたちのなかにはもう、平和を望むこころが育ってしまっている。
与えられたミッションの変容すら、よしとして』
「あの、よろしいでしょうか」
と、シルヴェリアが――茶卓の脇、ひかえていた星騎士筆頭が控えめに挙手した。
『なあに、シルヴェ。
アイデアがあるなら、きかせて?』
「はい!
私が考えますに、これこそ民に諮ることかと。
まずは議員の皆さんにだけでも、一緒に考えてもらいましょう。
もう、抱え込んではダメです。そのために私たちがいるのですから」
ステラに指名をうけたシルヴェリアはぱっと顔を輝かせ、それでも落ち着いて優しく、最良の案をくれたのだった。
若干風邪っぽいですがなんとかいけそうです?
昨晩すごくいっぱいのPVがあって驚いています! ありがとうございます!!
次回、引き続きソリステラス。
一回におさめたかった!
どうぞよろしくお付き合いください!




