69-7 はじまる!『ハロウィンライブデイ&ナイト』!
ハロウィン進行! 今日明日でラストですっ!
過日『月萌杯』の行われた、大フィールド。
そのまんなかには、巨大なジャック・オ・ランタンがごろんとひとつ。
ふいにはじまるカウントダウン。一つずつ、ともされていく照明。
ゼロの掛け声と同時に、どごん。
かぼちゃ大王はこなごなに。
可愛くラッピングされたとりどりのお菓子と姿を変えて、会場全体に舞った。
お菓子たちに紛れるようにして飛び立つ、白と黒の衣装の天使と悪魔。
これまでよりちょっとセクシーに決めた、ルナとルカだ。
くるくると自在に飛び回りながら、観客たちに手を振る。
巨大かぼちゃのあった場所には、ふわふわもふもふのくまちゃんハンドを高々と掲げたハロウィンベア姿のレモンさん。
こちらはしっかり、露出度五割増しのセクシー路線だ。なのに全然いやらしく見えないのは、しなやかに鍛えられた筋肉美ゆえか。
鳴り響く、はなやかなファンファーレ。
回るライト。腹を揺さぶる、パワーあふれる前奏。
『高天原プレゼンツ☆ハロウィンライブデイ&ナイト』はかくしてスタートしたのであった。
そう、いつも学園ライブのクールタイムを沸かせるレモンさんと『しろくろウィングス』が、昨日はどちらも来なかったのは、これが理由である。
ちなみに哀れなかぼちゃを一撃で破砕したのは、レモンさんのふつうのパンチだ。
ネットには『俺もあのかぼちゃになりたい』という書き込みがいっぱいあるが、おれとしては眺めるだけで遠慮したいところである。
もちろんかぼちゃ→お菓子へのチェンジは、ノリノリにのったエルカさんの仕業。
やはりこの人は、イリュージョニストの最高峰。思わずため息がもれると、オブザーバー席からぱちんとウインクがとんできた。
月萌のアイドルの頂点に立つ三人は、だからこそ力加減も知っている。
けして手抜きではない、それでも圧倒的ではないパフォーマンスが、程よく聴衆を熱狂させれば、つづくパフォーマーはリラックスした様子でステージに出てきた。
『うさもふ三銃士+MIRAI』。シオン・ソーヤの卒業後は、しばらく活動を控えざるを得ないので、場合によってはこれがおやすみ前のラストライブとなるかもしれない。
「つぎにここに帰ってくるときは! ひとまわり大きくなってるかんなー!!」
「みんな、まっててねー!!」
ぴょんぴょんMAXで盛り上がり、大きくふりふり手を振ると、「まってるよー!!」「がんばれー!!」の声援が飛んだ。
実のところ、ソーヤとシオンの卒業が早まったのは、おれたちのせいと言える。
セレナ・タカシロをあぶりだす作戦がなくなったと思ったら、今度は『グランドマザー』。アキトとセナとも相談してきめた、と知らされた時には、思わず謝ってしまった。
『ふしふた』に続く次回作『湖の乙女と七つの魔神』の制作は、PVを断片的に発表しただけで延び延びになっていた。
在学中に全十話の上演を、とシオンは望んでいたというのに、このままでは第一話の上演すらあやうい。
けれど、シオンは明るい笑顔で言ってくれた。
『だいじょうぶ!
監督のオレがおちつかない状態で無理にやるより、ちゃんと腰を据えてやったほうが、みんなも安心できる。そう思うようになったから。
第二話以降、すこし筋書きを変えたの。『プロジェクト・モンスターサーガ』とリンクできるように。
そしたらね、ずーっと面白くなったって、エルカさんもいってくれて!
それと、フユキたちがね、オレたちの卒業記念で、第一話、上演してくれることになったんだ。それだけでもうオレ的には、しあわせいっぱいだから!』
眼鏡のむこうの瞳をキラキラ、みじかいうさみみをパタパタさせて、一生懸命いう姿は、もう可愛くてたまらなくて。
ソーヤに「ちょっとだけごめんね」とことわったのち、思いっきりぎゅーっとしてしまったのは、記憶に新しい。
昨日、あれから。ルク・タカシロは言いたいことだけを伝えおき、スッと席を立った。
こたえは、グランドマザーの御前で聞こう。今日のわたしは、ただの使者だからね、と。
いつの間にかアスカの後ろに回り込み、やわらかく頭を撫でた彼は、応接の空気に溶け込むようにして姿を消した。
彼もまた、第三覚醒を発動していることは明らかだった。いや、それ以上を身に着けていてもおかしくない。
そんな彼とおれたちは、一週間しないうち、明らかに対立することとなる。
そのときには、シオンの超人的な情報処理能力は絶対に必要となる。そしてシオンを誰より支え、守れるのは、ソーヤをおいてほかにない。
二人の力を借りながら、二人を守り、おれたちは難局に立ち向かうのだ。
ミライや、ソナタ。おれたちに続くものたちが、平和のうちに卒業できるように。
決意を新たにおれたちは、一層の拍手を送った。
四人が笑顔で手を振りながら、入出場ゲートからはけていく。
この次は、今回最大の目玉といっていい演目。
自称音痴の『まじかるあーちゃん』、歌う姿なんて想像できないと評判の『剣帝』のオンステージだ。
『プロジェクト・モンスターサーガ』の核となる、二人の転生物語。
どんな仕上がりとなったのか、実はおれたちもまだ見せてもらっていない。
照明が落ち、音楽が消え。
どきどきと待っていれば、ぽつりとおちるスポットライト。
入場口から、ステージの真ん中、スタンドマイクの前へ。
ゆっくりとしずかに歩んでくるのは、シンプルな白のスーツをまとった、清楚な美少年。
白いうさ耳、金の髪。優美な面差しの中で、目は伏せられて瞳の色は見えない。
見覚えがある気がするけれど、誰だろう。ざわつく会場。
「えっ、あれアスカじゃね……?」
と、イツカが声を上げた。
同時に少年が目を開けて、ピンクと青の、なじみ深い色彩が解き放たれた。
昨日一文字もかけずこの時間となりました、うぐぐ。
なのにブックマークいただけていた時にはもう(涙)
ありがとうございますっ!!
次回、『自称音痴のコミックショーマン』と『歌う姿が予想できない男』のオンステージ!
どうぞ、お楽しみに!




