69-4 こあくまうさちゃん、ぶっちゃける!
ハロウィンにむけてだいたいリアル日時と連動していきます^^
ルク・タカシロとコンタクトを取るのは簡単だった。
彼は今なお、隠然たる権力を有している。
国会に取って返し、しばらく待てば、メッセンジャーはやってきた。
「御大より、お召しにございます」
黒に近い、暗い銀の髪に、きらめくような緑の瞳。グレーを基調とした、お仕着せのスーツ。
優美な印象の――タカシロの系列であることがすぐわかる――少年が差し出したのは、飾り気のない白のメッセージカード。
二つ折りのそれを開けば、流れるような、几帳面な文字が並んでいた。
他では見たことのない、ナイトブルーに銀の粒子の混ざるインクで記されていたのはただ一行。
『30日、月送りの会場にて』
「っおい」
イツカがばっと顔を上げる。
けれど少年はするりと身をひるがえし、行き交う人と人の間にあっというまに姿を消してしまった。
ぱちり、あざやかな緑色のウインクを残して。
「……イツカ」
「ああ。
ルクだ、あいつ。
目は、紫じゃなかったけど……」
「いや、まちがいじゃない。
ガーネットには緑のものもあるんだよ」
「マジか!
くっそ、あいつ……」
インテリジェンスをちらつかせる接触の仕方。なんともきざなものだ。
と思っていたらイツカがのたまった。
「そうとう暇人だな!」
「そっちかよ!」
おれは全力でつっこんでいた。
けれど、やつの天然のボケっぷりで肩の力が抜けたのは事実。
最悪、そのまま拉致される可能性さえ考えていたのだ。
とりあえずは、無事に済んだ。あとは、二日後30日の『月送り』だ。
これは一言でいうなら、月萌が国として執り行う法事。当然、おれたちも出席することとなっている。
戦いに死した英霊を弔い、月にあるといわれる約束の地への転生を祈る、四半期に一度の厳かな行事である。
おそらく話をするのは行事のあととなるだろう。そこで何を聞くことになるかはわからないが――
『ま、ブレなきゃだいじょぶじゃん?
おれらもご一緒すっから、どーんといこう?』
通話をかければ、アスカはいい笑顔でこう言った。
もうすっかりいつも通り。頼もしいことこの上ない。
『ちなみに、レインならだいじょぶだよ。ぶっちゃけライカが一番心配してんのあいつだから』
「まじ?」
『まじまじのまーじ!
レインはせいぜい、護身術で振り切るくらいしかできないからさ。
ほんとあいつが剣使えたらハナシはやいんだけどね~。
とりあえずはさ、金曜。でるんっしょ、ミニライブ。
みんな、ふたりのこと待ってるよ。
知らずにやってた旗振り役だとしても。それでもみんな、ふたりの頑張りを知ってるし……そんなふたりのことが大好きなんだ』
「えっ」
おれは携帯用端末をとりおとしかけた。
「えーっと。確認のために聞くんだけど。
……ぜんぶ話しちゃったかんじ??」
『いんやー。ぜんぶじゃないよー?
ただ、イツカナちゃんたちのめざす世界平和に反対してて、おれにもトラップくれた女神さまが、そんなふーにいってるのきこえたよー、ってやんわり伝えたくらいさ!』
「をい。」
つまり『たんにショックをくれるための虚言かもしんないけどさーそんなお話があったんだよー? なわけだからまー丸のみしないできいといてー☆彡』ってやつである。
もはやあくどいといっていい知恵のまわりよう。クラスチェンジしたのは人間じゃなくて、悪魔なんじゃないかと疑いたくなる。
というかむしろこの件については『グランドマザー』に謝りたい気持ちもちょっとしてきた。
いやまあ、いいんだ。それよりも大切な問題は。
「で、みんなは?」
『それがさ。おもったよか素直~に受け入れてくれてる感じなんだな。
じつはさ。おれもなんだけど。
夢、見てるんだって。それも、何度も』
「まじ?」
『おーよ。
チアっちゃんなんかむしろ、はしゃいじゃってさ。
僕の見てた夢、ほんとのことだったんだ、レンとは前世から仲間だったんだ、ってもう。
きんぎんずもまたすっかりラブラブんなっちゃってね~。マルりんにはがんばれとしか』
「呼び方斬新すぎだろっ!!」
きんぎんず。『シルバー&ゴールド』、ケイジとユキテルのバディだ。
ユキテルが二か月の四ツ星期間を終え、満を持して今週末で五ツ星昇格。
チアキよりさきに四ツ星となっていたレンも今週五ツ星に。フユキとコトハさんも二人そろってめでたく昇格である。
昇格といえば、騎士団サミットだ。
創始者カルテットの三クラフターは、覚醒すらもたらしうる新サポートシステムを作り出したことで四ツ星に。
そんなかれらを育てたミズキ、彼を支えたバディのミライも功績をかわれ三ツ星になり、それぞれエキシビションバトルを披露することになっている。
波乱はいろいろあるけれど、仲間たちの躍進は別腹だ。
おれたちはとりあえず、週末を楽しみに、もうひと踏ん張り。
会議に行事にレッスンと、つぎつぎ走り回った。
そして、金曜の午後。
第一部の試合に声援を送った俺たちの前で、競作衣装をかけた『おこんがー!』VS『クランレパード』のWBFが幕を開けたのだった。
きょうののうないかいぎ。
アスカ「いやーぜーんぶぶっちゃけちった☆彡」
日向「Σ(゜□゜;)」
次回、これ収まるのか? たのしい定例闘技会です!
どうぞ、お楽しみに!!




