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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_68 『エインヘリアル』

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68-1 『グランドマザー』との謁見(1)

所用で遅れました……!!

 黒のリムジンに乗って、たくさんの人に見送られて、ソレイユ邸を出発した。

 ぽつんと口をついたのは、こんな言葉。


「イツカ。

 思い出さない、あの日のこと」

「だな。

 高天原に行くとき。なんかこんなんだったよな」


 イツカも同じ気持ちだったらしい。隣の席で、遠い目になっていた。

 助手席からライムが優しく問いかけてきた。


「あの日。車の中のお二人は、こんな感じでしたの?」

「おう、だいたいそっかな。

 なつかしいなー、高天原エリア入ってすぐ、ミライにコールしてメールして、それでもだめで」

「おー、あんときのイツカナちゃんてば可愛かったなー。いまもっと可愛いけど♪」

「あげませんわよ?」


 イツカが言えば、運転席でのたまわるタカヤさん、助手席からツッコむライム。

 タカヤさんは上機嫌で更に悪ノリ。


「ふふ~。俺はもうとっくにイツカナちゃんたちの『アッシーくん』だもんね~。むしろ俺がイツカナちゃんのものなんだっし~♪」

「まあ、先を越されましたわ!」

「いやいやいや」


 もちろん、あの時とはいろいろ違う。

 おれたちは、数時間もすればここに帰ってこれる。

 いつものように、今日のまとめと明日の準備をして、ごはんを食べてお風呂に入って、ブラッシングの後にお休みを言って。

 そうして明日からは、『グランドマザー』との謁見でつかんだあれやこれのため、動き出すのだ。


 またいっそう忙しい毎日になるはずだけど、きっと大丈夫。

 夢をつかんだ喜びが、おれたちの原動力になってくれる。

 シラタマや、もうひとりのおれたち、海の向こうのみんなといった、新しい仲間だってたすけてくれる。


 心配屋のおれにしてはめずらしく、そんな楽観的なことを思っていた。

 するとバックミラーごしに、タカヤさんが軽い調子で声をかけてきた。


「カナタぴょん、意外にリラックスしてんのな。やっぱラブラブ効果?」


 ほほう、そう来るか。おれはニッコリほほえみかえした。


「ええ、そうですよ?」

「ぐはっ」


 なんて言いつつ、タカヤさんのハンドルさばきは微塵もブレない。

 思えばこのひとにも、ここに来るときからお世話になりっぱなしだ。

 おれはシートベルトの許す限りで座りなおし、頭を下げた。


「タカヤさん。

 ……いつもありがとうございます」

「なになに、どうしたの急に。ツンデレ? ごほうび?」

「あ、そういうのじゃ全然なくってですね?」

「はうっ!」

「素直な気持ちですよ。

 きっとこれからも、いっぱい乗せてもらいますから……よろしくお願いします」

「俺からも。よろしくお願いします」

「わたくしからも、お願いいたしますわ」


 イツカもとなりでぺこり。

 助手席で、ライムもぺこり。


「ちょ、……なにそれひきょう……

 このタイミングでそんっな可愛いことしてもらえるなんてっ。

 これがハーレムか……!」


 タカヤさんはこんどこそ目を潤ませた。



 そんな風にわいわいやりつつ、沿道の人に手を振り返しつつゆけば、『月晶宮』はもうそこに口を開けていた。

 式典会場となった前庭にそろっているのは、高天原の名士たち。

 まずはセレネさんとエクセリオン、エルカさんオルカさん夫妻。

 各党党首と、それに近しい人たち。

 ミソラ先生をはじめとした、学園の関係者。

 そして、この街のさまざまな分野を取り仕切る人々。

 すべて、これまで直接言葉をかわし、ときに激論さえ戦わせた人たちだ。

 晴れやかな演奏ともに、花で飾られたステージへ。短いスピーチを交わしあって式典が終わると、おれたちはセレネさんに連れられ、『月晶宮』に入った。


 謁見の間の御簾のさらに奥、水晶の階段を上りつめたところに、その不思議な空間はあった。

 ひとことで言えば、まるで水晶の内側にいるよう。

 おそらく正十二面体であろう壁は、透き通っているはずなのに外がまるで見えない。

 まるでこの部屋は、果てない光の中にぽかりと浮かんでいるよう。

 もし、いま入ってきた扉が見えなくなったならと考えると、ぞっとしないでもない。


『安心せよ、ただのVRだ』


 身もふたもないことを言いながらセレネさんは、まっすぐ正面、天井近くの壁にむけて手をかざす。

 すると、壁面は空色に輝き、透き通る青の扉に姿を変えた。


『イツカ、カナタ。つぎはお前たちが手をかざすのだ。

 われら三女神からの『承認』が、きざはしとなり、鍵となり、御前に上がるための装いとなる』


 セレネさんに告げられたとおりにすれば、おれたちの手のひらからあふれだす、にじいろの光。

 それらはきらきらとにじいろを透かす光の階段となり、おれたちの首にかかった大きなカギとなり、そして、翼にも似た白と黒のインバネスを有する、壮麗な礼服となった。


『ライムはここで待っていてくれ。我ら以外にこのみちはたどれぬゆえ。

 ゆこう。

 固くならずともよい。『グランドマザー』は真に大いなる我らの母、我らが多少敬語だなんだ忘れたところで歯牙にもかけぬほどのな』


 おれたちと同じ意匠の、シックなブルーのドレス姿になったセレネさんが先に立ち、光の階段をのぼる。

 両開きの扉には、それぞれ一つずつカギ穴が付いていた。

 おれたちはうなずきあうと、胸に下げたカギを同時に鍵穴へ。

 まばゆい光がはじけると、おれたちはもうそこにいた。



 まるっきり、雲の上にいるようだった。

 広いひろい、どこまでも続いているかのごとき蒼穹が頭上から地平までひろがり、足元には、柔らかなふみ心地の白の敷物。

 ぐるっと見回し、視線を戻せば、目の前に彼女が座していた。


 この上なく威厳に満ちた、高貴で美しい女性。

 年のころは、どれほどだろう。若いようにも思えたし、その実長い長い時を経ているようにも思われる。

 その姿はどこかセレネさんに似て、それでいてソレア様とステラ様にも似ている。

『グランドマザー』は虹の光を幾重にも重ねたドレスをまとい、世界中の宝石を集めたかのような豪奢な玉座にかけ、おれたちを静かに見下ろしていた。


『また会うたな、わが庭に降り立ちし客人たちよ。

 楽にするがよい、汝らは本来、われと対等以上の身の上なれば。

 お前も座るとよい、わが娘よ』

「ありがとうございます」

『はい、母上』


 彼女は静かな笑みで口を開く。この声は誰に似ているのだろう。ひどく聞き覚えがあるような気がしたが、ぱっと出てこない。

 そしてその声はいま『また会ったな』と言った――おれは彼女に会った覚えはない。

 ひそかに戸惑っていれば、視界のすみにひじかけが出現。ふりむけば、おれたちそれぞれの後ろに、座り心地のよさそうなひじかけ椅子が鎮座していた。

 すすめられていると理解していいのだろう。イツカとともに一礼し、腰掛けた。

 おれたちの後ろでは、セレネさんが同じようにした。


 いつも堂々としているセレネさんが、多少なりともかしこまった様子でいるのは、地味に初めて見たかもしれない。

 ……いや、それはいいんだ、かわいらしいけど。

『グランドマザー』はさくさくと本題に入った。


『いま、われと初めて会ったのに、何を言われたのだろう、と戸惑っておったな?

 問題ない。ゆえあって忘れさせてあるだけだ。

 汝らはわれを介し、上位世界アースガルドよりこの世界に導かれし『調整者』だ。

 ありていに言えば、このゲームを――ミッション『エインヘリアル』をより効率的に進めるために投入された、運営側プレイヤー。

『ハートチャイルド』とは、この役のため大きな力を与えられしお前たちが『裏切る』ことのないように設けられしものである。

 月萌風に言うならば、『赤竜ドラゴン』に対する『白妃プリンセス』のようなものか。

『病を得しものとそれを守るもの』という、不憫な身の上を持って、世の只人からの妬みを抑える役目もある。

『これ』は、お前たち。そしてその兄弟姉妹が、同意のうえで選び取った『オプション』なのだ。

 それを放棄するとなれば。それによって得ていたメリットは失われるが、それでもそれを望むか?』


 すると『グランドマザー』は、驚くしかないようなことどもをさらさらと語り、問いかけてきたのであった。


『グランドマザー』のさくさくっぷりってば。

彼女はスキルで人の心を読めます。


次回、つづき!

ハートチャイルドプログラムを廃止にする一方で、一番大事な問題は……。

どうぞ、お楽しみに!

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