67-3 大人になる日? 祝いの日曜茶会はきょうもカオス!
今回の日曜茶会は主に、マルヤムさんとオフィリアさんの卒業、騎士団サミットの昇格を祝うもの。
『グランドマザー』との謁見に向けての、壮行会も兼ねてくれている。
だから『このこと』は、まだ内緒にしておこう。
ルカとルナも含め、口裏を合わせたおれたちだったが、女子陣にはなぜか秒でバレた。
「ねえなにがあったの? 決め手はなにっ?」
「いやそれあっち!」
「もうややこしいわね! 次からあんたたちはかならずセレネちゃんとライムちゃんといっしょにきなさいっ!」
「かんべんしてサクラちゃんそれは俺たちに効く……」
きらっきらのおめめで詰め寄られて、無実を訴えて、サクラさんにズバンとお達しをもらって、ひとりもの男子たちが涙目になって。
けれど、なぜかそのなかからひとり、ケイジが拉致られていき。
ついでマルヤムさんも連れ去られ。
きょとんとしているとユキテルが哀愁を漂わせて言った。
「大人になる日が来たのさ……ケイもいつまでもでっかい子犬ちゃんじゃないんだってことさ……」
「えっ、ケイジくんってもう二十歳だっけ?」
ピュアなミライがおおまじめに問い返す。
ユキテルはおおよしよしよしとミライを撫でまくった。
うらやましいからおれもと思ったところで、オフィリアさんがぱんぱんと手を打つ。
「あ~。たぶんしばらくあの二人たちは帰ってこないから。
とりあえず始めましょ!
乾杯の音頭、ルカとルナお願い!」
ちょっぴりやけくそ気味で、ルカとルナを指名。
ふたりは落ち着いてカップを掲げた。
ルカが、つづいてルナが口上をのべて。
「それではご指名をいただきましてっ。
『マーセナリー・ガーデン』のツートップにしてわれらが愛すべき友、マルヤムとオフィリアの卒業――」
「ならびに、『騎士団』創始者カルテットの四ツ星昇格。
そして、その栄誉をうけてのミズキくん、ミライくんの昇格に。」
そうして二人、声を合わせて。
「この日に、昇格を決めた人、勝利を得た人、何かをつかんだ人。
そして、『グランドマザー』への謁見のチャンスを手にした、イツカとカナタ!
みんなみんなを祝って!」
ここでだれかが茶々を入れる。
「我ら『ひとりもの同盟』からめでたく卒業しやがった裏切り者どもの、末永き爆発を願ってっ!」
もちろん、笑ってそのまま声を合わせる。
「かんぱ――い!!」
ゆうべ、ライムから通話があった。
ルカからのご報告を受けて、ということだったけど……
結局、彼女もおれも、ほとんど何もしゃべれなかった。
とつぜんライバルを『失った』ライム。もうひとりのおれに、背中を押された、というか、ほとんどどつかれるいきおいとなったおれ。
いったい、何をしゃべったらいいのかなんて、わからなかった。
それでも、ぽつぽつと、お互いの様子をたずねあって。
帰ったら、いっしょにお茶でも飲もう、と約束し、お休みを言い合って。
通話を切って見上げた星空は、優しく澄み渡っていた。
ぶっちゃけ、いまだにふしぎな心持ではある。
おれたちが、二人ずついる。
そして、それぞれ別のみちを歩む。
くぐつの身体のおれたちは、今後おれたちの影武者役として働き、18で結婚を決めたら人の身体をもらう。
そしてこちらのおれたちは、もしかしたらこの定命の身体ではなくなる。
イツカのやつはセレネさんをずっと支えるために、寿命をなくしてもらうことを選ぶだろう――もちろん大人になってからだろうけれど。
イツカのやつをひとりにするのは心配なので、そうなるとおれも。もちろんライムの承諾を得られればの話だが、彼女ともども永久を生きることになる。
一年前にはこんなことになるなんて、想像もしていなかった。
ぼうっと感慨にふけっていれば、入り口のほうから歓声が上がった。
そこにはほっぺたをとき色にそめたマルヤムさんと、めちゃくちゃ照れくさそうなケイジがいた。
おれたちはもちろんふたたびグラスを手にして、祝福を込めて叫ぶのだった――『爆発しろっ!』と。
昨今では『爆発しろ!』の意味が『おめでとう!』にかわってきているようです。
いいことだと思います*^^*
次回、ついにグランドマザーとの謁見にむけて出発? です。
うわー緊張するるるる。
どうぞ、お楽しみに!




