67-2 留守番をしていたもう一人のおれが「すきなひとができた」と言ってきました。どうしたらいいでしょう。(16歳♂、社会人)
それは『森コン』を終え、楽屋で一休みしているときだった。
くぐつの身体のおれから、メールが入った――『カナタへ。おれたちの将来に関わる、大事な話があります、至急コールください』と。
イツカのほうにも、むこうのイツカから同じような内容のが。
イツカとおれ、アオバとミツルとソラ。全員顔を見合わせた。
「こ、これは……プロポーズッ?」
「いやいやいや。」
大真面目にボケをかましたソラに総員ツッコミ。
とりあえずと折り返せば、0.05秒で「はい」とおれが通話に応じた。
そして、いきなりおれを詰めてきたのだ。
『あのさ。おまえ、ルカとライムどっちを選ぶかもう決めてるの?』
「え、なに、きゅうに」
『決めてないんだね?』
「え、や、そその決めるっていうかいまはまだ……」
『ルカにするって決めたわけじゃないんだ?』
「あの?」
『ルカを選ばないって可能性が微粒子レベルでもあるんだ??』
「なにがあったああ!!!」
聞いてみれば、向こうのおれは。
お留守番を買って出た自分を気遣ってくれたルカに、胸を射抜かれたらしい。
それは、向こうのイツカも同様で。
正直、おどろいた。おどろいたけれど、否はなかった。
こうなることはありうると、おれたちはすでに聞いていた。実際、その状況になったひととも近く接している――ユウミさんだ。
ユウミさんの『あるじ』が、彼女のきもちを尊重した。だから、彼女とハジメさんのしあわせがある。
それと同じようになることは、いいことだ、と思ったのだ。
だから、がんばれ、と告げた。
はたしてその晩おれたちからは、ウッキウキのメールが入ってきた。
もちろんおれたち五人はそろってこう書き送った。
『おめでとう! 爆発しろください!!』
『送信』をタップすると、ソラは遠い目でため息をついた。
聞き捨てのならないことをつぶやきまくりながら。
「はああ、これでここにいるひとりものは俺ひとりか~……もういっそレモンさんにアタックして当たって砕けてこようかなあ……」
「ちょっまっ?!」
いやそれは、むこうのおれだっておれだけど、こっちのおれはそうじゃない。
ライムとはまだなんの進展もないんだし、この件で言えばこっちのおれはルカに振られた形になるわけなんだし、そう、つまりは濡れ衣だ。
というかそんなことをおいても、これはあきらかな自殺行為だ――レモンさんが『本気の恋も、結婚もしない』と心に決めていることは、おれたちみんなが知っている。
アオバがあわてつつも、適確なストップをかけた。
「はやまるなあああ!!
今度大好きな『ピクルスたっぷり三段チーズバーガー』おごってやるから。なっ?!」
「ありがとアオバ~! 心の友よってまぐっ?!」
うわーんとアオバに抱き着いたソラの口に、ミツルがどこからかとりだしたいちごサンドをつっこむ。
そして慌てまくった様子で言うに。
「ちょ、待った、カケルっ。
俺と、モモカちゃんは、べつに、なにもっ」
「しょっちゅうプリン作ってあげてるじゃん~!」
「それだけでラブラブになるなら俺たちは300回くらい結婚してなきゃダメな計算になるからっ!!」
「モモカちゃんのは愛がこもってるだろっ?」
「カケルのだって愛がこもってるっ!!!」
「……………………あ、えっと、どうも」
「……………………う、う、うん」
ちょっと赤くなってもじもじ視線をそらしあう二人。
アオバがぱんぱんと手を叩く。
「はーいはい、ラブラブラブラブ!
ったくなー、お前たちほんっと仲いいのな。
……もしさ。将来的にもういちどバディ組みたいなら、俺はOKだからな。
バディになったからこそ、願うんだよ。ミツルが一番輝けるようにって。
ソラも今となっちゃ、だいじな仲間だ。
その二人が組んで、それが一番力になるなら。
俺はそれが、一番うれしいことなんだからな?」
そして笑ってふたりの肩を抱く。
ミツルとソラは、右と左からぎゅーっと抱き返した。
レモンさんが、この三人をユニットにしたわけ。
それは、こうなることを予測していたからかもしれない。
ほっこりとそんなことを考えていれば、携帯用端末が鳴った。
通話をかけてきたのは――ライム。
ど、どうしようどうしよう!
がらにもなくあわてたおれは、とりあえず携帯用端末だけを手に、部屋を飛び出したのだった。
頂けたご期待を裏切ってしまった方には、大変申し訳ございません。
大分迷ったのですが、私としては、彼らの気持ちを尊重することに決めました。
あと2回はこうしたことがあると思いますが、もしよろしければ、最後までお付き合いをいただければ幸いです。
次回、日曜茶会。
このことはまだ秘密、と決めた一同。果たして秘密を守りきれるのか?
どうぞ、お楽しみに!




