Bonus Track_8_2-2 子兎さんは突撃にゃんこに地獄の特訓をしてみるようです?!
前回でなんと! 二十万字突破してました!
ここまで続けてこられたのは、つたない物語にお付き合いくださった皆様のおかげです。
ここからもまた頑張ります♪ ありがとうございます♪
『ここでイツカにしっかりお灸をすえておいてやらないと、いずれ本当に道を踏み外してしまう。イツカの将来のために、この作戦を実行する許可が欲しい』。
おれはそういってみんなに頭を下げ、計画の全容を説明した。
みんなはそういうことなら、でもどうしてもまずくなったら助けに入るからね、ということで、いくつかの調整ののち、許可をくれた。
そしてなんと、出世払いという事で、回復用ポーションを『貸して』くれた。
さらには、事情を聴いたとあるSランクパーティーが、無償で陰からそっと見守ってくれることになった。
おれは善意の詰まったポーションをマジックサックやマジックポーチに限界まで詰め込むと、『二人用のスペシャルクエストを発生させたから』と言って、イツカを『マッドスライムの洞窟』に連れ出した。
イツカは二つ返事でついてきた。
というのも、『マッドスライムの洞窟』は難度が高く、小学生プレイヤーだとまずトライできない場所なのだ。
まずエンカウント率が半端ない。
そしてマッドスライムは分裂するのだ。さらには、仲間も呼ぶ。
そのためそこは、基本的にCランクパーティーから挑戦できる設定であるものの、へたすればBランクでも途中で逃げかえるハメになる難所だったりする。
不敵なイツカは常々、純度100パーセント狩りタイムなんて夢みたい! おれならぜったいクリアできるからこっそりいこうぜ!! なんぞとのたまっていた。
だが、そこで帰還困難といえる状態に陥ったら?
もううんざりだ、そう思いながらも、戦い続けなければならない。そんな羽目になったなら?
一説にはΩ堕ちすると、βに戻れるポイントを稼ぎだすまで、魔物キャラの操作をえんえんとやらされ続ける羽目になるという。
おれはその疑似体験を、イツカにさせようとしたのだ。
当時そのプレイスタイルから『突撃にゃんこ』と呼ばれていたイツカは、当然のようにヒャッハーと洞窟にとっこんだ。そして泥色をしたスライムを相手に、暴れ始めた。
おれは自分に『聖水』をかけつつ、イツカに時折ポーションを投げ、様子を見守った。
毎日突撃してただけあり、さすがに戦いそのものに危なげはない。でも、いかんせん相手が多い。そして、イツカの体力もまだ人間並みだった。
有利なペースでいけてるときには、数分に一つ。クリティカルなんかをくらったら即座にいくつか。おれはひたすらイツカにポーションを投げつづけた。
「あははは、たのしーい! たのしーなカナタ!
おれこんなにバトれたのうまれてはじめてー!!
もしかしておれ、このままAランクなれちゃうかもー!」
なんて調子よく軽口をたたきまくっていたイツカだが、一時間たったころにはちょっとペースが落ちてきた。
ふつうのパーティーならすでに『セーブの泉』についていておかしくないはずなのだが、やはりイツカはDランクの小学二年。なのに見かけるスライム見かけるスライムに全部突撃するものだから、全体の1/3も進んでいない。
いったんトイレ休憩をはさんで、また再開。
さらに三十分をかけようやくまた少し進んだが、そこでイツカの歩みが止まった。
「どうしたの?」
「んー……なんていうか、うーん……なんか、やなかんじ」
「え? どうしたの? きもちわるいの? だったらトイレいってきなよ!」
「いや、そんなんじゃなくって……なんだろ、これ……おかしい、っていうか……」
「ポーションのめばなおるかな?」
「えー……」
おれがポーションのびんを差し出すと、イツカはいやそうな顔をした。
「なんていうかさ……もっとべつのやつない?」
「え? いちごあじのとか?」
「うーんと、えーっと……わかんない!
とにかく、おれきょうはもーポーションいんないから!」
「えー……
でも、もどるにしてもバトルしなきゃだし。
今日はミライもいないから、ポーションなしとかぜったいむりだよ?」
「うえええぇ~…………」
イツカは苦い薬を飲まされると聞いたときのような顔をした。
奇妙なことだった。まず、ティアブラのポーションは苦くなどない。
ほのかに甘酸っぱく、後味もスッキリとしていて誰もが飲める、そしてどれだけ飲んでも飲み飽きのしない……いうなればスポーツドリンクに近い味と飲み心地なのだ。
そして、今日イツカはポーションをほとんど『飲んで』いない。だいたいがバトル中におれが後ろからびんを投げつけて、つまりぶっかけての使用だった。
そうか。つまりこれは、ポーションを使われるような事態、つまり、バトルにうんざりしてくれたということなのだ。
やっと、やっとだ。
おれは内心ガッツポーズをしながら、イツカに帰還を提案した。
「わかった、さいていげんにするから。
それでもう今日はかえろ。ポーションなしでこの先すすむなんて、ぜったいぜったいむりだから!」
「うー……
でも、クエストは?
カナタ、わざわざさがしてくれたんだろ? おれのために……」
「じつはね。
ふたりで『マッドスライムのどうくつ』にチャレンジして、生きてかえること。
それが、じょうけんだったから。
だから、そこはだいじょぶ。しんぱいしないで、イツカ」
「……わかった。ざんねんだけど、もうかえる。
かいふくしないでいいよう、なるべくにげるけど、いーよな?」
「うん、わかった!」
実はこの時、用意した『聖水』はもうなくなっていた。
つまりおれたちは、どのみち本気で逃げ帰らなければならなくなっていたのである。
「うわああくるなくるなくるな――!!」
「だめだイツカ、かこまれてる!!
あそこのいっぴきだけこうげきして、にげよう!!」
「うえええ!!」
逃げに逃げに逃げまくり、逃げ切れないときにだけやむなくバトル。
「よしうごきがにぶった!! にげるよ!!」
「やったあああ!!」
そのころイツカはこともあろうに、投げられたポーションをよけるようにまでなってきていた。
みんなの善意を無駄遣いはできない。ダメージで動きがにぶってきたら、即捕獲して強制的に飲ませ、それも拒否るときには襟首つかんで強引にぶっかけてと、おれは必死になってイツカを回復し続けた。
「こらイツカ、おれからにげないのー!! ほらポーションのんでー!!」
「やだー!!」
「かけるのやなら、のむしかないでしょー!」
「どっちもやだー!!」
「もおおおこのワガママイツカ――!!」
「みぎゃー!! 耳からいれるのやめえええ!!」
あまりにイツカが叫びまくったせいで、しまいにはマッドスライムの方がさけて通ってくれたからよかったものの……
それでも洞窟の出口にたどり着いたときおれたちは、ふたりともわあわあ泣いていた。
* * * * *
その夜、リアルのおれたちの部屋でのこと。
ふと目が覚めて、となりのベッドをみると、イツカもこっちを見ているようだった。
「カナタ、おきてる?」
「うん」
「……おれさ、今日のでおもった。
おれって、すっごくしあわせなんだなあって。
町のみんながさ、どうくつの外でおれたちをまっててくれた。
それで、あんぜんなやどまでつれてってくれてさ。
こっちにもどったら『母さん』がぎゅっとしてくれて、あったかいおふろとごはんがあって。
いまはこうやって、ふかふかのふとんでねれてる。
家出してるときはさ。とうぜんこんなのぜんぶなくって。でもオレはへーきだぞっ! ておもってて……それはここかえってからも、そんなかんじで……。
でも、いまやっとかえってこうしてると、ほんとしみじみ、ありがたいなあって。
おれ、このまいにちを、だいじにしなきゃっておもった」
「イツカ……」
部屋は暗かったけど、おれにはわかった。
イツカがへへ、と、照れたように笑ったのが。
「そんなふうにおもえたのって、おまえのおかげなんだよな、カナタ。
さっきトイレいったらさ、『母さん』とあって……
で、きいたんだ。今回のことは、ぜんぶおまえがやったことだって。
おれのために、自分で計画かんがえて、みんなにあたまさげて……
あんなあぶねーとこまで、ひっしでついてきてくれて。
それもこれも、みんなおれのためだって。
おれが、Ωオチしちまいたいなんて、バカなこといわないようにって……
ありがとな、カナタ。
おれもさ。おまえがあぶなくなったら、ぜったいたすけるから!
だか……ら……」
ふあ、とあくびがきこえた。
そして、すー、すー、という寝息が。
イツカは言いたいことを言うと、また眠ってしまったようだった。
「おやすみ、イツカ」
イツカのやすらかな寝息を聞いていると、おれもふわっと眠くなってきて、そのまんま目を閉じたのだった。
マッドスライムAさん(仮名)「ヤ、ヤバイどす……あのうさぎはん、ねこはんの耳パーツからポーション流し込もうとしてはる……あない可愛らしいのに……」
マッドスライムBさん(匿名希望)「目を合わせるな! 関わったら駄目だ!! 可愛いけど!!」
……だったりして、という妄想でした。
明日は朝夕二回投稿の予定です! 理由は短いから!
相変わらずしょーもないですが、お楽しみにしてくださるとうれしいです!




