66-8 セレナの理由
サブタイナンバリング間違えました!!
修正いたしました、すみません!!m(__)m
セレナ・タカシロは、最初はぽつりぽつり、やがて堰を切ったように話しはじめた。
二時間ほどかけて話し終えると、疲れた中にも満足した様子で机に突っ伏す。
トウヤさんにアイコンタクトで了解を取ると、イツカの『0-GX』で、おれたちは結界の向こうへ。
おれのうさみみをそっとかけてやると、帰ってきたのはかすかな寝息だった。
「……その、なんといっていいのか……
そうだな。ありがとう。とても助かった。
まさか、こうなるなんて。
お前たちはやはり、『主人公』だな」
面会室を出れば、待っていたのは、なんとなくホワーッとした顔の捜査陣のみなさん。
代表して頭を下げてくれたトウヤさんも、なんだかちょっとホワホワしている感じだ。
しかし、ここは訂正しておかねばなるまい。
おれはとなりの相棒を指さした。
「いや、おれは無実です。こいつが主人公野郎なだけです」
「俺だって無実だし!!
だってあいつそんなもーぐちぐち言われたくなさげだったし! だからああいったんであって別になんか、そんなすげーこととか考えてねーし!!」
『べつに、たいしたことない』とにゃーにゃー弁明するイツカだが、トウヤさんは「いや」と首を左右する。
「やはりその感覚と判断力は驚嘆に値する。
『俺たち』にその行動は、できえないものだったとはいえ。
そしてそれを支えていたのは、ほかならぬカナタ、お前だ。
……やはり、お前たちに来てもらってよかった。
これで、彼女の思惑を知ることができる。彼女の犠牲となった者たちの救済も、より進む。
あとはまかせてくれ。お前たちがつけてくれた道を、今度は俺たちが追いかけてゆく番だ。
『グランドマザー』との面会。応援している」
まっすぐに差し出された手を握ると、勇気がわいてきた。
トウヤさんはすこし不器用に、でも確かに、微笑みを浮かべていた。
取って返して顛末をご報告にいくと、通されたのはクールかわいいドローイングルーム。
そこにはすでに、アスカとハヤトがいた。
ハヤトはビシッとダークなスーツ姿で、いつにもまして真剣な顔。
アスカはアプリコットブラウンのジャケットに、オッドアイと前髪メッシュだけの控えめコーデで「やほい!」なんて声を上げたが、その声音も白いうさ耳の角度もハヤト以上の緊張を物語っている。
『二人はすでに、お前たちの右腕と言っていい存在。そして、セレナの被害者。
さらにアスカは、縁者でもある。
いまここで聞く権利があると思って、呼ばせてもらったのだ』
セレネさんは、軽く手を一振り。おれとイツカの分のお茶を出現させつつ、事情を説明してくれた。
もちろん、おれたちに否はない。
さっそくソファーに腰を掛け、薫り高い紅茶でのどを潤すと、先ほど聞いたことたちを整理して話していった。
セレナ・タカシロが生まれたのは、約百年前。
ソリステラスより移民を率いてきたソロイ・T・イングラムと、タカシロ家令嬢セリカの間に生まれた子の一人。
両家の血を引き、頭脳明晰。しかし、イングラムに伝わる胸の病を抱え、体は弱かった。
そのため、高天原学園はもちろん、普通の学校に通うこともかなわず。
それでも、『できること』を模索していた彼女は、家で学びながら数々の治験に身を投じ、やがて3Sの憑依実験にも参加するようになった。
つねに笑みを絶やさず、前向きにふるまう彼女は、3S『虚飾』の適合者だった。
限界以上を引き出す『虚飾』の力と、その燃料となる良質な環境、そして彼女自身の素質。
これらがそろったことにより、彼女はタカシロの祖が捨てた『永遠の若さと命』すら、後天的に手に入れることに成功した。
心の底で、自分はダメな子と思い続けてきた私だけど、女神様はお見捨てにならなかったのだわ!
彼女は喜び、感謝した。
そして、もっともっとできることを、と手を広げていった。
やがて、彼女の叔父が、その才能を見出した。
彼女の頭脳と決断力は、政治に向いている。
叔父の手引きで政策アドバイザーとなり、陰からタカシロを、月萌を支えていた彼女は、いつしかその闇を引き受ける存在となっていた。
それでも、いいと思っていた。
なぜなら、それこそ彼女が『できること』だったから。
暑いよう。
夏よりは涼しいのですがまだ暑いです……
明日、ワクチン接種第一回目です。多分大丈夫と思いますが、副反応の具合によってはあさってお休みをいただく可能性もあります。ご了承くださいませm(__)m
次回、つづき。
『管理派』首魁というべき女――強く憎んでいた存在の半生を知り、アスカは。そして、ハヤトは。
どうぞ、おたのしみに!




