Bonus Track_66-5 あすを見据えて~発足、『ゼロブラ館自由研究会』!
2021.09.30
誤字と表現修正いたしました!!
ソリステラスに言った頃にあった→ソリステラスに行った頃の
「キレー……」
「マジか……」
「作りてえっ……!!」
ため息が会場にあふれた。
動画の中のおれがつくりあげた水の幻想植物によるツリーアーマー<ナーイアス>は、息をのむような美しさだったのだ。
透き通るボディのなかを、さあさあと流れ落ちる清水。
みずみずしい葉から滴る水滴。
蜜を抱いたはかない花は、散ればそのまま水へと還る。
おれの美的センスなんか軽く超えてる勢いだ。どうしてこうなった。
それでもニノたちファンシークラフターたちはもう作る気満々。アスカに「これっ! これデータちょうだいっ!!」と迫る。
「むふふー。しかたないなー、3Dデータとひきかえに3段パンケーキねー☆彡」
「お値打ち価格っ!!」
「あとー、アレの再現も手伝ってちょ。
ほら、『遮熱』つきのお皿! そっちはぜひぜひソーやんもアイデアだしてね~。
もちろんみんな、無理ない範囲で!」
「アイアイサー!!」
ナイスだアスカ。ありがとうと笑みを向ければ、グッと親指を立ててくる。
「ねえねえ! おれもお手伝いしていい?
あれうまく使えば、ごはんやおみそしるとかも、ほかほかのまんまで食べてもらえるでしょ?」
「だよね。役に立てるかはわからないけど、俺もお手伝いさせて?」
「ほかほかときいたら黙ってられないんだな!」
「わたしも、勉強したいです!」
さらに、ミライとミズキ、ナナさんとコトハさんも手を挙げる。
と、イツカがおれのわき腹をつっついた。
「なあカナタ」
「だね!」
おれたちはうなずきあって挙手した。
「それなんだけど、うちを拠点にするってのどうかな?」
「ユズキさんたちもみんなとどんどん研究してくれって言ってて、すっげーラボもあるし!」
「もちろんみんなも忙しいから、週末とか、これるときで、にはなるけど……」
* * * * *
かくして、『ゼロブラ館』を主拠点としての研究会が立ち上がったのであった。
その名も『ゼロブラ館自由研究会』。
もちろん、優先は学業。そのなかの、余裕のある時に、ここに集まって研究をする。
だからあと数か月は、ほとんど開店休業だろう。
いや、それでちょうどいい。
なぜなら、その間を利用して、ゼロブラ館の居住スペースが増築されることとなったからである。
ソレイユ家当主夫妻――ユズキさんとタンジェリンさんは、『ゼロブラ館』を仲間たちの研究拠点として開放することを打診したところ、よろこんで承諾してくれた。
それどころか、『先生の許可を得ればソレイユ邸敷地内でのお泊り可』の特例までもうけ、居住スペースの拡充を決めてくれた。
日暮れ後に無許可で敷地外に繰り出すのはもちろんNGだが、それでも困ることのないようにと、敷地内で使えるクーポンまで発行してくれるという、至れり尽くせりぶりである。
「きみたちの仲間たちが、すばらしい研究者や、そののたまごたちであることはもう、みんなが知っているんだよ。
君たちと交流し、刺激をもらい、ともに優れた芽を大きく育てることができれば。それは、この世の中のためにもなるからね。
いずれ君たちがクゼノインに移った後も、『ゼロブラ館』は残すつもりだ。
君たちを追ってうちに来てくれた子たちがそこを使ってくれれば、それ以上の喜びはないからね」
ユズキさんはそんな、うれしいことを言って笑ってくれた。
そんなわけでさっそく今週日曜は、第一回見学会だ。
土曜に『あそべる森のコンサート』、帰りの車内からマルヤムさん・オフィリアさん卒業記念の日曜茶会に参加。こちらに帰ってきてその足で、みんなを迎えるかんじだ。
本体のふたりが案内もやるよ、ふたりは休んでてと言ってくれたが、週ナカの謁見や会見に行くのも、週明けにグランドマザーとの謁見に行くのもかれらなのだ。
あまり疲れをためさせられないし、それくらいはやらせてくれと、おれたちがご案内を引き受けた。
この休みが終わり、週が明けたら。
おれたちは、本体のおれたちとひとつになる。
すでに合一化をはたしたアスカとハヤトは『べつになんてこともないよ~。なんか記憶が増えた感じがするていど~』『おもったより何もなくて拍子抜けしたくらいだ』と言ってくれている。
ソリステラスに行った頃の不安は、今はもうすっかりなくなり、これから来る初めての体験への好奇心へと代わっていた。
ストレッチを地味に試みていたら、すこし肩の痛みなどが引いてきました*^^*
次回、『マザー』としてのセレネさんとの謁見。
そこでカナタは、ひとつのお願いを。
それはセレネさんも言おうと思っていたことで……
その内容とは。どうぞ、お楽しみに!




