66-6 いろんな意味で天敵? メイさんの恩返し!
「え?!
シークレットゲストって、メイさんだったんですか?!」
現れたのは、あの日の和装風ドレスに、たぶん魔道具であろう扇子を携えたメイさんだった。
驚くおれにメイさんが、笑いながら打ち明けてくれた理由は。
「ふふっ。カナタさんとは、もっと分かりあいたくて」
「すみませんもうすこし具体的にお願いしますっ」
なんとも、思わせぶりな言い方。イツカのやつめがおれをニヤニヤつっついたのでうさみみパンチでツッコミを入れておいた。
たぶん月萌の仲間たちがこれ見たら瞬時に『爆発しろ!』て叫ぶに違いない。理不尽だ。
しかしほほえましげなメイさんが陳述した理由は、ちょっとびっくりするほどまともなもので。
「『開戦派三巨頭』のなかで、お二人と矛を交えていないのはわたしだけ。
第三覚醒を拝見していないのも、わたしだけですもの。
それに、わたしは『リアクト・ブレイク』を習得していますわ。つまり、クラフターの皆様にとっては天敵。
いずれそのようなものたちが、カナタさんを狙わないとも限らない。わたしでよければ、力を磨くお手伝いをさせていただきたいのですわ。
この度のお詫びと、恩返しのために」
お願いしますと頭まで下げられては、むしろこちらが恐縮してしまう。
「いえ、そんな……だってもう、お詫びもお礼も十分いただいてますから。
サクヤさんとおふたりで、おれたちにつけてくれた特訓。あれのおかげでラストライブも全然あぶなげなく行けたんですよ?」
「あらあら。じゃあ、『純粋に、あなたと闘りたい』とだけ言ったほうがよかったかしら?」
ころころ笑うメイさん。ああ、まったくかなわない。
おれはもうスパッと頭を下げてしまうことにした。
「えーと……むしろおれこそお願いします!
じつのところ、三巨頭でおれが一番警戒していたのはあなたなんです。たぶん、あの時点でおれはあなたに勝てなかったでしょう。今だってどうかわからない。
でも、だからこそ挑みたいんです」
「……」
すると、なぜだかメイさんはちょっと黙り込んだ。
「いえ。それでは、始めましょう」
そしておれは、なぜかみんなに『ひゅーひゅー』された。
メイさんは兼業ハンターといっていいだろう。クラフトは『たしなんだ程度』ということだが、確実に造詣は深い――そうでなければ、3Sフラグメントを込めた『毒入りルージュ』なんか作れるわけもない。
そんな彼女が用いる『リアクト・ブレイク』は、適確におれの打つ手をつぶしてきた。
オーブは不発。錬成魔術も瞬即転写でもしないかぎり、描画途中で破壊されてしまう。
ボムは水の防壁により阻まれてしまうし、ハンター相手に直接斬りこむのは論外だ。
水のつぶてによる攻撃は鋭くも最低限で、水煙に紛れて幻術をしかけることもできない。
いちばんのネックは、これだ――徐々に足元を覆っていく水。
これのおかげで、地中に逃れることができない。アナウサギ的には、地味にストレスのたまる状況である。
神聖防壁を守りの頼りに、水のつぶてから跳ねて逃げつつ、おれは考えた。
これは、覚醒で押し切るべき場面だろうか。
とはいえ懸念は残る。
もしかすると、覚醒技にリアクト・ブレイクは効果を及ぼすのだろうか?
いや。ここはやるべきだろう。
なぜって、彼女は言っていた。『第三覚醒を拝見していないのも、わたしだけ』と。
つまりむしろ、やるべきだ!
決断したおれは声を張る。
「メイさん! 第三覚醒、いきます!
よくご覧になってくださいね!!」
そうだ、せっかくだから、この水で。
思い定めれば意識はすんなり集中した。
「発動、『卯王の幻想園』!
形成――<ナーイアス>」
口からこぼれるまま唱えれば、透き通る水の幻想植物たちが、おれの身体を編み込んでいく。
するすると、周囲の水も吸い上げて。
完成したのは、まるで水でできているかのような、つやめくツリーアーマーだった。
ブックマークありがとうございます!
うれしい……うれしすぎるっ;;
筋肉痛がふっとびます!!
次回、パーティー会場へマイクをお返しします。
お楽しみに♪




