Bonus Track_66-2 ミライとの『再会』とおかえりパーティーとちいさな新展開!
我ながら不覚だとは思った。
でも、こんなの止められないだろう。
通話ですこしおしゃべりはできたけど、画面越しと生とじゃハナシが違う。
そう、ミライが、目の前にいるのだ。
しかもイツカのやつめときたらミライを見た瞬間ダーッと走っていってむぎゅっとしてナデナデモフモフしまくったのだ。
「はあああミライ――!! あいたかったー! あいたかったあああ!!」
目の前でそんなことされちゃおれだってだまっておれない。
イツカごと、ミライをぎゅーっとした。
「こら二人とも!
そんなにしたらミライがむぎゅっと潰れるだろう、まったく」
と、痛いんだけどあんまり痛くないなつかしのげんこつが、おれたちのあたまに降ってきた。
「ノゾミ兄ちゃん! いったいどっからいつの間に?」
「それは……うん。まあ、漢の秘密だ」
もったいぶって咳払い。どうやら『縮地』を使ったようである。
ぶっちゃけ校則違反。いつもはノゾミ『先生』自身がこれでみんなにチョップをくらわしているやつである。
「あーノゾミ兄ちゃんいっけねんだー。ミソラ姉ちゃんにいってやろー」
さっそくイツカがガキんちょぶりを丸出しにする。
これが幻の第三覚醒をなしとげ、一国の女神を消滅から救った世界的な英雄とか。
……いや、それとこれとはべつ。べつのことなのである。
おもわずため息をつくと、どばーんと掃除ロッカーがひらいた。
「その必要はないよ、イツカ!
なぜならわたしみずから! 現行犯をおさえたからね!」
意気揚々と出てくるのはミソラさん。もちろんノゾミお兄さんが突っ込みを入れる。
「いや、どうしてそこから出てくるんだミソラ『学園長』?」
「それは乙女のひ・み・つ!」
「ダウト!!」
「ふふっ……あはははっ!!」
おもわず突っ込みを入れたら、かわいい笑い声が上がった。
そうして、優しい腕がおれたちをまとめてむぎゅっとするのを感じた。
ミライだった。
心から楽しそうに、笑っている。
ミライはうれしそうにおれたちをだきしめて、ニコニコ笑って言ってくれた。
「ふたりとも、おつかれさま!
――おかえりなさい!」
「ただいまー!!」
まるで、あの三人のアトリエに戻ったかのような気持ちで、おれはただいまを言ったのだった。
学園の面会室でぶじ、ミライとのリアル待ち合わせをなしとげたおれたちは、そろってログイン。ヴァルハラフィールドの貸しパーティー会館へと赴いた。
手作り感あふれる会場で待っていたのは、うさねこだけでなく、騎士団、にじいろ、ガーデン、その他たくさんの生徒たち。
「おお、イツカナもきたきた!」
「それじゃあさっそく!」
「おかえり、あんど、いらっしゃーい!!」
みんなは一斉に声を合わせて、クラッカーを鳴らしてくれた。
おれとイツカと、バニー、ナツキ、シラタマ。
そして無事『ご家族ご挨拶』をこなして戻ってきたハルキくんに。
テーブルには、ミライやソーヤたちが腕を振るった豪華軽食がならんでいる。
たのしいティーパーティーのはじまりである。
今回は、お茶と軽いものをつまむ程度のお茶会。
けれどおれたちにはむしろそんな、気楽で気軽な席がうれしかった。
まるで、在学中に戻ったみたいで。
「イツカ! すごかったなあれ! エクストラ!!」
「みたよみたよすっげーかっこよかった――!!」
「カナタ――! テラのデータ! ありがとな!!
いやーまさか召喚獣で食ってくるとはなー。おかげで新しいボムのアイデアがめっちゃわいてきたぜ!!」
「料理の器に『遮熱』つかってるとかはんぱねえなソリステラス! グルメハンター・ソーヤさんとしてはぜひとも料理修行に行かないとな!!」
「ステラ様のイリュージョンすごかった! オレもいつか行って勉強したい!」
「で、で、どーだったのハルキくん、ソリステラス行きは!」
「そのなんだ、エルメス殿下とはそのー、なんらかの進展などは……」
「ねえねえ、シラタマちゃんっていうの? かわいいわね!」
「ナツキちゃんのママだってほんとー?」
どわっとおしよせることばと笑顔の波に、おれたちはしばしわちゃわちゃともまれたのだった。
ちょっと心配だったのは、生まれてはじめてこんな場所に来るシラタマだったが、むしろ2秒で馴染んでた。
人としゃべるのが苦手で、物陰からのぞいてることが多かった『嫉妬』も、シラタマの気さくさにはすぐに打ち解けられた様子だ。
人としゃべるのが得意でないといえば『強欲』もだけれど、今日は来ていた。
彼はいつものブスッとした顔で、バニーになにやら小さな箱を押し付けると、ぷいっと料理のほうに行ってしまった。
……これは、もしかして。
『憤怒』を見れば、いい顔で親指を立てている。
どうやら、温かく見守らねばならない二人がまた、増えたようであった。
やはりミライツカナタはミライがいてこそです^^
次回、仕事をはしごする本体イツカナ。
イツカナは忙しすぎるので増えたままでもよかないかと思えてきた今日この頃。
どうぞ、お楽しみに!




