65-8 感謝と感激! お見送り式典はサプライズとともに!<SIDE:ST>
前回ライブの様子がばこっと抜けてました、申し訳ないです……orz
『平和特使』としておれたちがステラ領に来た時、本来ならばステラ様主催で歓迎の式典が行われるのが筋だった。
しかし、ステラ様は満足に起き上がることもかなわぬ身の上。
しかも、おれたちが『招かれた』のはプロトコールもへったくれもない、拉致同然の方法で突然に、だった。
当然、きちんとした形式の歓迎式典など、開けるわけもなく。
それは約束の一か月後、お見送りの際にまとめてということになった。
はたしてステラマリス城での『歓迎と感謝とお見送りの式典』は、ステラ領のホンキがつまりまくったものだった。
しょっぱな、おれたちを迎えに来たのが幻獣ペガサスの引くガラスの馬車で……
色とりどりの星屑で高く低く敷かれたミルキーウェイでもって、国内を瞬く間にぐるっと一周したところから、これは3D映画か!! ぐらいの勢いだった。
さらに驚いたのは、星屑の発生源。
なんと、ステラ様のまとった星色ドレスの、キラキラ長い裳裾がそのまま、星々の道の始点となっていたのだ。
おれたちを迎えるべく、大きく両腕を広げてはれやかに微笑むすがたには、先日までのはかなさはもう見受けられない。
初めて見るおれたちですら、はっきりとわかった。そう、これが、本当のステラ様だったのだ。
まっすぐに差し出された握手の手からは、生きる喜びがあふれるようだった。
とりどりの星屑はダンスを踊る広間にも敷き詰められていて、星のティアラをつけたデビュタントたちが一歩ステップを踏むたびに、きらきらとかわいらしくはじけた。
画面の向こうでも同じようにして、何組ものデビュタントが踊っている。
そのなかにはケイジとマルヤムさん、ユキテルとオフィリアさんの姿もあった。
マルヤムさんとオフィリアさんは来週の卒業が、ケイジとユキテルはその週明けの五ツ星昇格が内定したばかりで、四人とも緊張しつつもいい笑顔だ。
もちろん、エルメス様とハルキくんはホールの真ん中、ふたりの世界。
ハルキくんは短い間に実力のみならず、背まで伸ばしたかんじで、このペースなら年内にもエルメス様に追いつきそうないきおいだ。個人的には、ちょっとうらやましかったりする。
踊り終えたデビュタントたちが華やかに退場すると、マリーさんこと、ステラマリス陛下が立ち上がる。
シューさんこと、シュトラール殿下に付き添われ、上品ながらもラブラブな様子で進み出ると、流れるように一礼。
今日のこの日を迎えられた喜び、そしておれたちへの歓迎と感謝を伝えるスピーチは、威厳と優しさに満ちつつも、どこかほっこりさせられるものだった。
この人たちと出会えて、よかった。次に来るときは、もう少しゆっくりと話してみたい――おれは正直に、そう思ったのである。
満場を包んだ温かい拍手がきえれば、待ちに待った『承認』の儀がはじまった。
まずはイツカが呼ばれて進み出る。
ステラ様と、ソレア様により、右と左の手を取られ……
次の瞬間とんでもない姿になった。
なんと、やんごとなき美女ふたりにより『ほっぺにちゅー』をされたのだ。
「にゃああああっ?!」
イツカのやつは真っ赤になってうろたえた末、黒い子猫に変身。
画面の向こうではセレネさんとルナがフリーズし、ほかのみんなは大盛り上がり。
よし、逃げよう。そう思ったが時おそし。
いつの間にやらしっかり捕獲されていたおれも、なすすべもなく……
「あの。ええと。あ、アリガトウゴザイマシタ……」
必死に言葉を探し、それだけ言うのが精いっぱいだった。
画面越しとはいえおそろしすぎて、ライムとルカの顔は直視できなかった。
しかし、そんなものはただの前座に過ぎなかったと、おれたちはすぐに気付くことになった。
命の縮むようなとんでもないサプライズに続いたのは、ほんとうにうれしいサプライズだった。
晩餐会が始まると同時に会場の真ん中に運ばれてきたのは、大きな大きなケーキ。
同時に、両会場のみんながすっと立ち上がり、歌いだしたのだ。
月萌でもよく歌われる、誕生祝いの歌を。
そういえば、すっかり忘れかけていた。
秋の影も落ち始めるこの月に、おれたちはこのセカイに現れた。
つまり、今月はおれたちの誕生月だったのだ!!
どうしよう、泣けてきてしまう。
まだ、晩餐会だって、ライブだって残ってるのに。
結局おれたちはいったん中座。
顔を洗って身だしなみを整えなおして、今度こそはれやかに「ありがとうございました!」を言えたのだった。
ソレア「セレネたち、ばっちりやきもちやいてくれたみたいだね!」
ステラ「これですこしは進展するわね!」
いやむしろ戦争になりはせんか((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
次回、つづき!
お楽しみに!!




