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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_65 ソリステラス連合国の、長い長い一日(後)

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65-6 『仲直りランチピクニック』~明かされる小指の約束と、しあわせの耳ピョコ!<SIDE:ST>

 次の次の日曜に、おれたちは月萌に帰ってしまう。

 そのため、ロイヤルファミリー勢ぞろいでのお詫びとお礼が、事件当日に告げられ(もちろん快くお受けした)――

『仲直りランチピクニック』は、日曜の開催となった。

 これは魔法使用込み、三日間の突貫工事で働くことになった皆さんにねぎらいを。今回被害にあった人たちにお詫びを伝えるためのイベント。

 シグルド氏やサクヤさん・メイさんたちと、その関係者が、場所と軍資金と、人手を都合してのものだ。


 ぶっちゃけると、おれたちも被害者だ。しかし、これはお祭りでもある。

 よって、おれたちもささやかながらお手伝いをした。

 イツカとハヤトは会場整備。おれとナツキ、シラタマはお料理組に参加である。


 シラタマとは『虚無』の分体のこと。

 白くて丸くて、かわいいところからつけた名前だ。

 もっとも彼女、ちゃんと人型にもなれる。ナツキと同じくらいの美少女になって、てきぱき仕事を進めていた。

『虚無』のチカラを生かしての瞬間皮むきにはすっごくラクさせてもらったし、素材の冷却だってお手の物だ。

 かわいいのに有能、そして物おじしない彼女は、あっという間に人気者に。

『こんなに笑ってもらえるの、初めて』と照れ笑う姿はけなげで、こうなってほんとによかったとしみじみ思ったものである。



 そして今。

 アスカとバニーが、アンコールまで終えておれたちのピクニックシートに戻ってきた。

 二人は、得意のイリュージョン+マジックショーを披露して、会場を大いに盛り上げてくれたのである。

 ちなみにバニーの『もっとほめてもよろしくってよぉ――!(高笑い)』は大好評で、一部完全にアイドルコンサートのノリだった。


「おつかれー!」

「面白かったー!!」

「どーもどーもー!

 いやーここレベル高いからきんちょーしたわー。

 ベルベルたちのカードどつき漫才とか楽しすぎだし、そもそもいっちゃん最初がアレとかもーどーしろってな感じだし!」


 そう、本日は開会のあいさつがなんとシグルド氏。スライドする形で始まった最初の出し物がステラ領・ソリス領合同チームによるセッションだったのだ。

 ステラ領チームのメイさんはぶっちゃけ現役プロ奏者だし、サクヤさんも何年とけいこを重ねているセミプロ級。

 その演奏に合わせ、ソリス領チームの四人――ライアンさん、ベルさん、ミルルさん、リンさんが歌ったのだ。

 こちらにプロはいないけど、渋カッコイイライアンさん、可愛いベルさんとミルルさん、透明感のあるリンさんの歌声によるハーモニーは素晴らしかった。


「いえいえ、実に素晴らしかったですよ、アスカ殿、バニー殿。

 私も、練習してみますかね。なにか、人を楽しませる芸となるようなもの」


 おどけたアスカの言葉に答えたのは、なんと当の本人シグルド。いやいったいいつの間に現れた。


「つれないですね、カナタ殿。我々は一生の契りを結んだ仲ですのに」

「語弊ありまくりですしそもそも解消しましたでしょうそれ。」


 っていうか、やつのお目当てはここにいるレムくんだろう。

 なぜなら……


「講談でもやってみればいいんじゃないですか?

 しゃべるのはうまいんですし。」


 レムくんのシグルド氏への態度は、あれから大幅に軟化したのだ。

 いまではこうして割と、普通にしゃべれるようになっている。

 ちょっぴりツンが残っているのは、テレもあるのだろう。

 だがシグルド氏的にはそこがまた可愛いらしい。しっぽが出ていたら確実にパタパタしている勢いで嬉しそうに答えるのだ。


「そうですかね? それじゃあ今日からはじめます!

 かくなる上は今度うちにっ」

「そんなヒマあるんですか? まだまだ忙しいでしょう、あいさつ回りからなにから、来週までにはきっちり終わらせなければならないんですから」

「夜は空いてますっ!」

「ダウト!!」


 なんかがおかしい食いつきぶりに反射的にダウト言ってしまった。ちなみに一番突っ込まなくちゃならない婚約者サクヤさんはとなりでくすくす笑っている。


「まあそれもこれも、この後です。

 僕たちはまず、月萌特使の皆さんを無事に故郷にお帰しし、エルメス殿下とハルキ殿をお迎えしなくちゃいけないんですから。

 ……そうしたら僕もすこし、プレゼンのレッスンでも受けましょうか。

 もう、ステラ領軍にはいられませんから」

「え?!」


 レムくんの思ってもみなかった発言に、おれたちはなんでと声をそろえてしまう。

 帰ってきたのは、しょんぼりとした調子のこんな返事。


「だって、今回のこと。

 僕のせい……ですから。

『僕のような年端もいかぬ子供は、軍でなんてやっていけない。』

 兄が14までにそれを立証出来たら、僕は兄の庇護の下、シルウィスの人間となる。

 ……できなかったなら、僕はシルウィス家と縁を切ると」


 おととい、シグルド氏は言っていた。レムくんと『小指の約束』をしたと。

 それは、こういうことだったのか。

 けれど当の本人は、猛然とレムくんの言葉を否定した。


「何を言ってるんです。

 今回のことは、あなたが責を問われるべきものではありません。

 なぜなら、これはもともと、勝負とは関係なしに行わねばならなかったことだからです。

 あなたはこの件で、管制としてしっかりと役目を果たしていました。百歩譲って責任があるとしても、充分すぎるほどの貢献をしています。

 それに、これも知っていますよ。最初にメイを訪ねた帰りに、アスカ殿に言ったこと。

 ――これまでも自分はチームの参謀として勤めてきた。年齢を理由に、アスカ殿に責をかぶせるつもりなどないと。

 あなたは幼くとも立派な軍人です。勝負はあきらかに私の負け。

 今後はただの血のつながったイケメンお兄さんとして、ストーカーにならないぎりぎりのラインであなたにかまってもらおうとするしか」

「いやなにスルッとすっとぼけたこと言ってんですあなたは。」

「いや僕が嫌だって言えば視界に入るのもストーキングなんですけど。」

「はうっ」


 おれのツッコミは見事に宙に浮いた。

 レムくんによる鮮やかなクリティカルヒットと……


「ちょっとまった――っ!

 だめだよ! だめだからねどっかいっちゃうなんて――!!」


 これまたどこからかすっとんできたジュディの、全力の『だめっ!』によって。

 ジュディはマリーゴールド色のワンピースがめくれあがらんばかりの勢いですっ飛んできて、レムくんの袖をつかむと衝撃の発言をはじめたのだ。


「レムちゃんは、ジュディのおよめさんになるんでしょっ?

 やくそく……したじゃん。

 レムちゃんが、三歳。あたしが、四歳のとき!」

「ええええっ?!」


 いやちょっとまて。ちょっとまて。

 それってことは、おれたちの作戦は……?

 とまどうおれたちをよそに、ざくざくと話は進む。


「え、あれ、まだ有効……って、その、カナタさん……は?」

「カナタには……ぇっと、おむこさんに、なってほしかった、んだけど……

 カナタにはもう、イツカがいるから……」


 かわいらしくほほを染めたジュディ。

 おれたちが身を挺した作戦――『おれとイツカがひそかにできていると見せかけて、ジュディとレムくんをくっつけるぞ作戦』は、見事なまでに成功していたのだ!


 いや改めて言われるとすっごく微妙な心持ちになるけど。イツカも明らかに落ち着かない様子だけど。ここはポーカーフェース。ポーカーフェースだ。


「わかりました。

 ジュジュといられるなら、お嫁さんでもお婿さんでも構いませんっ!

 僕はここにいます。

 だれより大好きな女の子の! ジュジュのそばにいます!!」


 果たしてレムくんは、男らしく言い切ってくれた。

 いつの間にか、あたりは人だかり。ぎゅっと抱き合って未来を誓うふたりを、あたたかな笑顔と拍手の輪が包んだ。


「……私との約束の、五年も前から予約済みだったなんて。

 これはもう、どうしようもありませんね。

 間抜けな用済みの男はただ、去るのみです。

 どうぞ、お幸せに。式には呼んでもらえると嬉しいです」


 シグルド氏はというと、拍手しつつも、大きく大きくため息をつき、踵を返す。

 それを引き留めたのは、ほかならぬレムくんだった。


「ちょっと、なにいじけてんですか。

 べつにあなたと縁を切るとは言ってないでしょう。

 つまんないちょっかいをやめてくれるなら、まあ……非番の日に遊びに行ったりぐらいは、してあげなくもないですからっ」


 超絶うれしそうに振り返ったシグルド氏の頭からは、ふさふさとしたオオカミの耳がみごとにピョコンしていたのだった。


悪役クールビューティーどこいった……orz


次回、月萌サイド。

ゴーちゃん、待望の顔合わせ!

どうぞ、お楽しみに!

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