Bonus Track_65-5 新機軸! 地下<アンダーグラウンド>に吹き込む希望の風~『ゴーちゃん』の場合~<SIDE:月萌>
だいじょうぶ。きっと、だいじょうぶ。
俺でもできるポージング、いっぱい練習したんだ。きっと、きっと、うまくいく。
しっとりつるつるすべすべのほっぺたをパンと叩いて、俺は気合を入れた。
* * * * *
「おおお……」
「つるつるだ……」
「さすがや、ツヤがぜんぜんちがうわ~……」
落ち込んでたら拉致られて、改造手術……もとい、エステを受けた俺は、つやつやのピカピカになっていた。
それはもちろん、顔立ちなんかそのまんまだけど、それでもちょっと『違う』。
そのことは、はっきりと分かった。
「どーう? カッコよさ三割り増しでしょ?
『ゴーちゃん』はもともと清潔感あるから、こんなのだけでもモテ度大幅アップしちゃうんだから!」
「ちょっと、ちょっとさわらせて~な~。あ~もちもちすべすべ~」
清楚な胸をどんっと張るアカネさん。
なんかめっちゃもちってくるマリオさん。
「……モテてるね」
「……モテてますね」
「……そうなの??」
スケさんもドラオさんもうんうんうなずいている。
人生初めてのモテ期。その相手は、なんとマリオさんだったらしい。
アカネさんは満足げにおっしゃった。
「うふふ~。
この調子で全身エステにファッションコーディネート! ボイトレに姿勢トレーニング! そこまですればきっとイケメン爆発間違いなしっ!
さー次はみんなよー! はじめー!」
「ええええ!」
「ちょっまっ僕たちはええええ」
「いやぁ~やさしくしてぇ~!!」
* * * * *
そんなこんなで10日間。
猛練習のかたわら、めっちゃ磨かれまくり、各種レッスンに精を出し、すっかりおしゃれ男子に生まれ変わって俺たちはここにいる。
もっとももともと、ドラオさんはちょっと後輩キャラな今どきの若者だし、マリオさんは和服似合いそうな中性的なイケメン、スケさんはなんというかリアルに剣士っぽさのある、きりっとしたすがすがしい人で、大幅レベルアップが必要だったのはボーッと系フツメンの俺だけなんだけど、それでも三人とも、一緒にがんばってくれた。
そのことが、どれだけ俺を勇気づけてくれたか。
あとは、ここから。
金曜定例闘技会でのフラッシュモブを成功させたら、きっと俺は、胸を張ってLUNAに会える。
前日にソリステラスで大規模デモが起きてしまって、イツカナが主謀者と決闘したり、暴動おきて女神ステラが消滅しかかったり、いったいどうなることかと思ったけれど……
みんなで歌って祈って、ステラ様を元気づけてあげて。
暴動をやった人たちも、復興のため働くことになってめでたしめでたし。
俺たちの晴れ舞台も、予定通り始まることとなった。
「よし、行こうっ!」
「っしゃあっ!」
「気楽に気張るで~!」
「あっ、はいっ!」
5、4、3……クールタイム、開始。
『俺たち』は勇んで、まぶしいフィールドに飛び出した。
その日。
某有名掲示板は、俺たちの話題で沸騰しまくった。
『心あるモンスターたち』。そして、そのお披露目役である『高天原モンスターダンサーズ』は、みんなの心をがっちりつかんでくれたようだった。
もちろん、元気になったのは、地下組のみんなもだ。
モンスターとして決められたカードを切り、戦い続けるだけでなく、よりいろいろなパフォーマンスを決められれば……
それだけポイントも稼げるし、俺たちのように『ネームド』になれるチャンスもぐっと広がる。
それはつまり、夢見た自由が近づくということなのだ。
イツカとカナタが勝ち取った『Ω制の廃止』。
それはただ、いまΩでいるものたちの市民ランク欄を『β』に書き換える『だけ』のものじゃなかった。
長い、長すぎるくらいのトンネルから、自力で這い上がれるよう、すこしだけ手を貸して。
そして、身も心も、本当の自由な、一人前の人間になれるようにしてくれる。
そうした、楽じゃないかもだけど、生きてる実感のもてるプランなのだ。
みんな、そう言っていた。
俺も、そう思った。
高天原の地下。月萌のアンダーグラウンドといわれる場所にも、さわやかな希望の風が吹き込んだのを、俺ははっきりと感じていたのだった。
なんとまさかのブクマと評価をいただいてしまいました!
ありがとうございます!! ありがとうございます!!(ノД`)・゜・。
次回、ソリステラスサイド。日曜日の楽しいピクニックです!
ふたつの『小指の約束』が明らかになる予定です。
どうぞ、お楽しみに!




