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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_65 ソリステラス連合国の、長い長い一日(後)

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Bonus Track_65-2 怒れる獅子の来訪とまさかの罠(トラップ)~イツカの場合~<SIDE:ST>

「えっちょ、えええっ?!」


 水球の中、俺は思わず叫んでしまった。

 客人として闘技場にやってきたのは、パレーナさんと、エルマーと。


「ライアン殿、でまちがいありませんよね?」


 なんでか、エルマーくらいまで若返ったライアンさんだった。

 それも。


「いや、お可愛らしくていらっしゃる。

 一瞬、どこのご令嬢かと思いましたよ」 


 なんつーかソレア様とベルさんを足して二で割ってもっとボーイッシュにして、肌を小麦色に、頭の耳をライオンにした感じで、どうみたって男装の美少女にしか見えない。

 ベニーも「マジ――?!」とびっくりだ。

 くすくす笑いの止まらないシグルドに、ライアンさんは可愛くブチ切れた。


「るっせーほっとけバカヤロ――!!

 だからヤだったんだ!! 昔の姿に戻るのは――!!」


 * * * * *


 携帯用端末ポタプレ越しのライアンさんの怒号が消えると、シグルドは呼ばわった。


「聞こえましたでしょう、カナタ殿。

 一時休戦です。ライアン殿がここに来るようですから。

 テーブルセットを運ばせます。あなたもお掛けなさい」


 もちろんカナタはでてこない。

 そりゃそうだ、奴は雪狼たちを待機ステイさせたままなのだ。

 出てきたが最後バクッとやられる。俺だってそう思う。


「やれやれ。

 さすが、われらがアナウサギ様は用心深くていらっしゃる」

「いやだったらそいつら戻してやれよ……」


 まんざらでもない顔でため息をつく奴。俺は突っ込まずにいられなかった。

 聞こえてなさげだ。ぱっちんと指を鳴らす。

 すると、どっからかでてきたメイドさんたちがテーブルセットを運び、てきぱきとお茶の準備を整えはじめた。


「わたくしとイツカさまのぶんも取っておいてくださいませね!」

「仕方ありませんねぇ」


 現金なサクヤに、シグルドは微苦笑を返す。

 こうしてみるとあいつも、わりと普通っぽい感じがする。

 とりあえず俺は、ダメモトでサクヤに言ってみた。


「なあ、とりあえずここ出せよ。

 ライアンさん来るんだろ。怒られるぞ?」

「降参しない子は出してあげませんっ☆」


 やっぱしダメだった。

 けれどとりあえず、水責めはいったん中止のようだ。水位の上昇はくるぶしまでで止まる。

 少しだけほっとしたところで、動きがあった。

 またしてもどっからかやってきたメイドさんが一礼して、シグルドに言う。


「お取込み中失礼いたします。

 門前にお客人がいらしたのですが……その……」


 シグルドが携帯用端末ポタプレを操作すると、聞こえてきたのは、ろうろうとした美声。

 パレーナさんだ。あの名調子全開で、演説のように何かを言っている。

 どうも、ミルルさんの件を、まわりにも聞こえるようにしゃべってるようだ。

 なるほど、これをいま聞かされたら、デモ隊はがっかり、デモは失速する。


 けど、これを門の前でやってるってことは。

 シグルドは携帯用端末ポタプレの向こうに向けて言った。


「いいですよ、入っていただいてください。我が友の友は、友ですから」

()もともに入ってよいか』


 そのとき、なんでかシグルドは吹き出しかけた。


 その理由はすぐに分かった。つか俺も叫んでしまった。

 なぜって、パレーナさんとエルマーといっしょにやってきたライアンさんは、なんていうか、めちゃくちゃ可愛かったのだ。


 * * * * *


「ふふっ、作戦のためとはいえ、誇り高き獅子がそれを捨ててまで麗しきお姿を披露してくださったのですからね。それには敬意を表しませんと♪

 それで、お話というのは」

「あとで覚えておれ……

 っというか、我が古き姿などどうでもよい!!

 シグルド貴様、どういうつもりだ!

 なぜ、ミルルにフラグメントなどつけた!

 あの子は成人の試練を終えたばかり。まだ子供のようなものなんだぞ!!

 そしてなぜそれを、メイにやらせた。そしてそのメイを切り捨てる!!」


 クロークを脱ぎ捨て、元の姿に戻ったライアンさんは、テーブルに両手をたたきつけて吠えた。

 対してシグルドは余裕の笑み。


「開戦のためですよ。すべて、開戦のため。

 そうでもしなければ、甘ちゃんぞろいの月萌つくもえが腰を上げるわけがないでしょう?

 ああ、もっといいましょうか。

 鎖国で平和ボケして腰抜けになりさがった小国を、それでも自ら宣戦せねばならぬ状況に追い込む。そのために、これは必要な犠牲だったんですよ。

 我々は月萌を怒らせなければ。そのために、平和特使のイツカとカナタに危害を加えなければならなかった。

 一番いいのは、民の手で彼らを傷つけさせることだ。

 最初は、式典での貴方の挑戦。つぎに、茶屋の娘による強引な招待。最後は、誤射に怒った平原の民による攻撃。それで、リーチがかかるはずだった。

 月萌からは抗議、ついで警告がきて。それらを適宜処理すれば、戦端は開かれていたはずだった。ソリス領と月萌領の間を舞台としてね」

「なん……だと……」

「おいっ!」


 低い唸り声をあげるライアンさん。俺もキレずにいられなかった。


「ふざけんなお前!

 ミルルもメイも、一緒くたとか! でもって、切り捨てるとか!

 でもって結局ソリスだけに犠牲は全部押っ付けるとか!!

 ふざけてんじゃねえぞ!! ふざけんなっ!!」


 するとシグルドはせせら笑った。


「何を怒っておいでです、お猫さんたち?

 どのみち犠牲は出るんです。戦えば――戦場に立てば。

 いえ、戦いはとっくに始まっているんですよ。

 犠牲すてごまになりたくなければ、強くなればいい。その戦いに彼女らは負けたんです。

 そして貴方がたはそれを守り切れなかった。ただ、それだけのお話ですよ!」

「てめええ!!」


 ライアンさんはというと、真正面から説教する。


「そんなものが戦いなものか!!

 戦いとは……もっと正々堂々としたものだ!!

 そうでなければならない!! なぜならわれらの勝利とは」

「『女神さまに捧げるものだから』……ええ、承知してますよ。

 でもね、正々堂々の敗北と、悪評にまみれた勝利。どちらかだけしか選べぬとしたら?

 わたしは後者を選びますね。

 なぜって、我らは『何をしてくるかわからない、軟弱な卑怯者』ですからね!!」

「あぶないっ!!」


 そのとき、ティーテーブルが爆発した。

爆発するティーテーブルなんてイヤっす……(涙)


次回、カナタ視点。

ライアンまでもを倒され、無力を悔やむカナタ。

暴走するシグルドにより、ついにデモは始まってしまう。

パレーナの声に導かれ、怒りのイツカ、突貫する!


待望の第三覚醒です。お楽しみに!

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