Bonus Track_63-8 疑惑は青に包まれて~とある副学長の場合~
直感が断言した、あれは『あいつ』だ。
私が『消した』かつての戦友にして共同研究者である、と。
理性は否定した、あり得ない、と。
もしそうならば、なぜわざわざここに『エバーブルーミング』について――往時の論文など、調べに来るのか。
あいつは『写真記憶能力』の持ち主だった。当然自らの論文など、一字一句過つことなくそらんじることができるのだ。
そらとぼけている可能性も考えた。
あいつは悪辣な教官どもを、ひとりひとり祭り上げ、悪目立ちさせ、巧みに戦乙女の御手に引き渡した奸智のもちぬしだ。必要とあらば、欺くだろう。
だが、それは何のために。
私を告発するでもなく、ただロックを突破して――何もしてこない。
こちらの出方をうかがっているのだろうか。それとも、あの少女には他意も『前世の記憶』とやらもなく、ただ純粋に犯罪捜査、トリックの裏付けのためにと寄越されただけなのだろうか。
彼女のチームには、シルウィス家のレムレスがいる。ウィリス家のジュデッカも天才すぎて家を出された神童だ。『特殊カプセルで3Sフラグメントを仕込んだルージュ』などという可能性を検証するということも、充分に現実的だ。
けれど、それは推測に過ぎない。
推測のみではどうとも動けない。
だから確かめることにした。警備隊の長マルキア、シュナイザー家の令嬢にさりげなく話を振ったのだ。
彼女はさらりと認めた。
このアイデアを最初に口にしたのは、あの少女だったと。
私はすかさず食いついた。一度ふたりでお話をと。
もしも彼女があいつならば、消えてもらわねばならない。
あとすこし。あとすこしの間でいいのだ。
何も恐れることなく、すべてが終わってくれるまで。
ここのところ連日一括DLいただいてまして……ありがとうございます!
これだけの量を落としていただいて、期待外れだったらと思うとアレですが(爆)……うん、がんばるっきゃねえっ('◇')ゞ
次回、新章突入! 工房見学!
この章では疑惑の解決やらなんやらいろいろあります(ΦωΦ)フフフ…
どうぞ、お楽しみに!!




