Bonus Track_63-6 ミッション・インポッシブル? 熱中クラフターたちにご飯を食べさせよ!~ミライの場合~<SIDE:月萌>
2021.08.15
一か所修正いたしました。
コウ→コウくん
とんとんと、ラボのドアをたたくと、パッとひらいた。
叩くか叩かないかのタイミングで、残像を残して。
「はあっ! やっぱミライさんだっ!!
俺たち一同、ミライさんのおいでをお待ちしてましたっ!!」
キラッキラのおめめのダイトくんが、かわいい巻きしっぽをパタパタしながら迎え入れてくれた。
部屋の中ではほかのみんなも、キラキラしながらおれをみている。
「はーい! 今日のメニューは、いろいろホットサンドでーす!
いっぱいあるからどんどんたべてね!」
「は――い!!」
インベントリからホットサンドのかごと、お茶セットを取り出すと、バトルアシストシステム開発チームのみんながうれしそうに走ってきた。
こんなに喜んでもらうと、冥利に尽きるってものである。
わいわいのなか、ミズキがそっと近寄ってきて、ありがとうをいってくれた。
「ありがとね、ミライ。これならちゃんと休んでもらえるよ。
……クラフターの熱中癖はわかってるつもりだったけど、コウたちはとびぬけてすごいかも」
「おれもそうおもう!
ポーションのみのみ徹夜で作業なんて、カナタくらいだと思ってたけど……」
そう、コウくんとシロウくんはもっとすごかった。
さきの金曜午後から土曜日曜、睡眠どころか食事さえポーションでまかなって、バトルサポートシステム開発を進めていたのだ。
もちろんタマキくんダイトくんも協力しているのだけれど、タマキくんは寝ないとダメだし、ダイトくんはおなかが減るとダメなので『あの二人マジでどうなってんだ!』といいつつ休んでいた。そこはちょっと安心である。
「カナタにはミライがいたじゃない。
世界一おいしいごはんやおやつをつくってくれて、こんなにかわいく持ってきてくれたら、それは食べにくるよ」
「世界一なんて……ミズキのお料理だって、すっごくすごくおいしいよ!
おれ、あんな繊細なお味の煮つけ食べたの、はじめてだもの!
土鍋ごはんもそれだけでごはんになっちゃうおいしさだったし、具だくさんみそしるも幸せいっぱいで……」
そう、ミズキは和食が得意なのだ。
お料理大好きのおれだけど、本格和食は未踏の分野だったりする。
いまはおれもミズキもいそがしいけど、卒業してミズキのおうちにいったら、週に一度は時間決めて、お料理教えあおうねって今から約束してるのだ。
いまも時間があったときには、ちょこっとずつ教えてもらってて、それがすっごく楽しみなのだ。
ふと気づくと、室内のみんながよだれをたらしそうな顔でこっちを見ていた。
ミズキはニッコリわらってみんなにいった。
「了解、あしたは俺も何か一品作ってくるよ。
だから、日付が変わる前には、ちゃんとベッドに入って寝ること。
いいね、みんな?」
「はーい!!」
もちろんおれはお願いした。
「ねえミズキ、おれもお手伝いさせて!
ちょっとでも和食、覚えたいから!」
「もちろん。頼りにしてるからね?」
こないだの合宿で、おれたちはけっきょく覚醒できなかった。
けれど、コウくんのアイデアで新機軸のシステムの研究開発が始まった。
これはもしかしたら、覚醒の可能性を探る役にも立つかもしれないって、マイロ先生やエルカさんもいってくれてて。
ベータ版の出来次第では、助成金が出るそうだし、レンたちのように、五ツ星の部屋を使えるようになるかもしれない。
ミズキの悲願にして『騎士団』の公約、『零星ゼロ』はすでに実現され、維持されている。
けれど、システムとして『零星』はなくなっていない。
さすがに一朝一夕に、そこまでは踏み込めなかったのだ。
月萌の影の支配者として君臨していたセレナ・タカシロ――彼女の作り上げたシステムは、彼女が逮捕されたいまも、まだ歯車を止めずにいる。
その落とし穴におちそうな子が出たら、助けてあげるために。その安心のために、助成金はすごくありがたい。ぜひとも、もらるように応援していきたい。
もちろん、お料理だけじゃなく、ほかのことでも。
つぎのステージでおれは、ミズキたち『うさもふ三銃士』と共演することになってる。
それでもらえる投げ銭も、貴重な収入源である。
これからおれたちは、そのためのレッスンだ。
校内スタジオに向かいながら、がんばろう、とおれは気合を入れるのだった。
和食が得意な人ってなんか素敵です*^^*
次回、ソリステラスサイド。『エルメスの家』を訪れます。
貴族社会ならではの事情と、皇女エルメスの愛情。子供たちの想いと、姉妹の情(ギャグがないとは言っていない)! お楽しみに!




