63-5 視察、魔術学院!~『美の魔女』との邂逅~<SIDE:ST>
前回のお茶会は、金曜午前。
だから次は、今日か、視察一日目だろう、という予測はあった。
そのため、あらかじめ工房見学は二日目にしてもらっていたのだが、ステラ様はそれをこえてきた。
寝台からゆっくりとだが立ち上がり、『約束の日に帰って大丈夫。あとは楽しんでいってね』などと言ってくれたのだ。
二週後の土曜に、おれたちへの感謝とお見送りのパーティーが開かれる。
そのときには3S感染を防ぐ結界から出て直接『女神の承認』を授けてくれるつもりだという。
ステラ様は、会うたびごとに元気を増していた。
けれど、本当に大丈夫なのか。
ソレア様によれば『あの子はやるといったらやる子だからね。信じて見守ろう』とのこと。
たしかに、彼女は女神としての自分を取り戻しつつある。
前回のお茶の席で『ステラ領での工房見学が楽しみ』とはいったが、日時については『近いうち』としか言ってない。忖度をさせないためだ。
しかし女神がその気になれば、そんなちいさなかくしごとを見抜くなんて、造作もないことだ。
ただ……
『回復しかかりが一番、目を離しちゃいけない時期だ』とも聞く。
そんなときにここを離れていいのかという気はしたが、ソレア様たちは笑ってこう言った。
「目を離さないってなら、ボクたちのが適任でしょ?
それとも王子様方は、乙女の部屋にずーっと張り付くおつもり?」
これを言われちゃうと、もはや白旗を上げるほかはない。
力が必要な時は呼んでと告げて、お言葉に甘えることにした。
「たーのも――!!」
前夜にそんなサプライズはあったものの、次の日の朝。
基地の前には、しっかりおつきの人たちに張り付かれたタクマくんが現れた。
ついこないだまで学生だったという『絶地』――学院視察の案内人だ。
なんだか、新しい学校のクラスメイトに『ガッコいこーぜ!』と誘いに来られてるみたいで、ちょっとくすぐったいけれど、ここは突っ込まずにいられなかった。
「たーのもー! おっすタクマ!」
「おはようタクマくん。
二人とも、朝の挨拶は『たのもー』じゃないよ? 道場破りだと思われるからね?」
「えっ、マジっ?」
素で驚いてるタクマ君。天然なのか、それとも。
「えっ、なんか楽しそうじゃね?」
「道場の人たちが大変でしょ?
みなさん、出発しましょう!」
天然暴れ猫に軽く教育的指導をよこすと、おれは護衛を務めてくれる『Bチーム』の皆さんとマルキアに声をかけ、歩き出したのだった。
「ようこそいらっしゃいました。
ステラ上級魔術学院学長兼理事長クロン=マレーネ=シュレディンガーでございます。
本日タクマとともに学内のご案内をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます」
歩くこと十分たらず。石造りの学園の門の前、気難しそうな魔女が、数名の魔法使いを従え待っていた。
真に若さと健康を保つ超高級美容ルージュ『エバーブルーミング』を開発した、ステラでも名高い『美の魔女』だ――しかし彼女は、自らを飾ることを好ない感じ。
言葉を選ばず言ってしまえば『上品な、しかし疑り深い目をした、魔法使いのおばあさん』という姿なのだ。
瞳の色に合わせたのだろう、深い青のローブはさりげない高級感を漂わせたものだし、肌のハリも100歳近いとは思えぬほどだが、おそらくはほぼノーメーク。
申し訳程度に唇に色が乗っているのは、おそらく『エバーブルーミング』の新色だろうけれど。
まあ、べつにそのあたりは個人の自由だ。
おれはイツカとふたり、頭を下げかえした。
「お初にお目にかかります。こちらがイツカ・ホシミ、私がカナタ・ホシゾラです。
このたびは先生方にもいろいろ、お手数をおかけしてしまいまして。
私たちからも改めて、お詫びとお礼を申し上げます」
「いえ、光栄なことでございます。
知恵と学究の府は世のため、人のために在るものですから。
もちろん情報のなかは、明かすわけにいかないものも存在することは否定できませんが」
にこりともせずに言い切ると、学長先生は「ご案内いたします」と歩き出した。
学院と学園をよく間違いかけます。アカデミーにすりゃよかった(´ω`)
次回、続きの予定っ!
どうぞ、お楽しみに!




