63-2 『六柱』最年少! 『絶地』推参!<SIDE:ST>
「いっくぜぇぇぇ!! 地・烈・斬ッ!!」
「っしゃあもらい――っ!!」
地を割き、空を裂いて迫る青の斬撃に、イツカは嬉々として突っ込んだ。
上がる真っ赤なダメージポップアップは、9826。
しかしイツカは倒れない。
「ぐううう! いってえええ!!
今度はこっちからいくぜ!! 『0-G+』ッ!!」
いてえといいつつ、顔は笑っている。走る勢いさえ落とさない。
全身に金色のチカラをまとい、イツカブレードの刀身を赤く染め、自ら必殺の一撃と化したイツカは、頭から黒衣の胸に突っ込んでいった。
「あっはははー! いや楽しかったなー!」
「イツカおまえ頭突きとか予想外すぎだろー! そのねこみみ頭で! ねこみみ頭で――!!」
「にゃっはははくすぐったいくすぐったいってタクマー!」
「うりうりうりうり」
「にゃははははー!」
お祭り気分の一夜も明けて、翌日。
ステラマリス第三基地内VBラウンジでは、すっかり意気投合したつわものどもがじゃれあっていた。
片方はイツカ。もう片方はタクマ君こと、『絶地』セドラ=タクマ=クレスト。
ステラ最強の六人『六柱』のひとり、強大な地のチカラを操る当千の魔剣士は、おれたちとそう変わらない、ふつうの少年だった。
イツカやハヤトと同じ、黒い髪。ちょっと突っ立ち気味なところが、やんちゃな印象でもある。
それでもはっちゃけているばかりの男でもないようで、すぐにイツカを解放して握手。おれにも、さわやかに笑って握手の手を差し出してきた。
「ありがとう、イツカ。いい試合だった。
カナタも相棒貸してくれてありがとう。悪かったな、ガンガン必殺剣ぶつけまくっちまって」
破天荒との前評判のあるつわものが、『たのもー!』なんて基地のまえに来たときはどうなることかと思ったが……
こうしてみるとさっぱりとした、いいやつである。
おれもその手を握り返し、笑顔を返す。
「こっちこそありがとうタクマ君。すごくいい戦いだったよ。
必殺剣のほうは、イツカ大好物だから。むしろごちそうさまです」
「おそまつさまです」
ちゃめっけのあるその様子。なんだか、彼とはいい友達になれそうである。
「それにしてもすげーなタクマの剣さ! ハヤトといい勝負じゃね、破壊力!
へたなバリアとかだったらまんまぶち砕けるぜ!」
「へへへ、オレも一応『最強の六人』だからな!
っていうかそれに真正面から突っ込むイツカもとんでもねえぜ!」
ふたたびイツカと笑いあい、背中をたたきあうと、タクマ君は席を立った。
「さってそんじゃ、そろそろ帰らねーと。
スバルのやつに叱られるからさ、『お兄ちゃんまたサボって!』って。
忙しいとこありがとな、じゃまた!」
『六柱』最年少のさわやか少年はそうして、風のように去っていったのだった。
「ふむーん。どこにもいるんだねえ、イツにゃんみたいなのって。
いやいい意味だよ? まじで☆」
「この国にもいるんだよな。スターシードと、……ハートチャイルド」
アスカがニコニコと評する隣で、ハヤトがかみしめるようにつぶやく。
そう、タクマ君は、おれたちとおなじスターシード。
今から11年前、五歳の時に、生まれたばかりの妹スバルちゃんとステラ領に現れ、彼女を救うためにがんばってきた……と資料にある。
地属性魔術に高い適性を示し、高等魔術学院に特待生として入学。
在学中にもかかわらず大地の守りたる聖獣『セドラ』との契約に成功し、α(アルファ)に。
交付された『ハートチケット』でスバルちゃんの手術をすませ、ふたりともに上流貴族クレスト家の養子に。
その後、なみいるライバルとの戦いを勝ち抜いて、平民出身では最年少で『六柱』となったのだという。
ぶっちゃけ、他人とは思えない。
彼のほうもそのようで、おれたちがここにきてからずっと、なんとか接触しようとしていたのだという。
けれど平和式典の後は、ほかの人たちのバトルに巻き込まれ。
ステラ領公聴会後は、おれたちがお茶屋さんに拉致られてって声をかけそびれ。
さすがにソリス領視察に乱入するわけにはいかず、帰ってきたらきたでステラ様と『リアお嬢様』に先を越され。
『いやもーやっと会えた……ほんとマジやっとだぜ……』食堂のお茶を手にしみじみと語ったタクマ君の金色の目には、ちょっぴり光るものまで見えたものである。
それならここでとメアドを交換したら、めちゃくちゃ喜んでくれた。
じつはスバルちゃんはおれたちのファンで、今日明日にも、二人連名のメールがくるということだ。
「スバルちゃんもソナタちゃんみたく、元気っ子でよかよかだねー。
いかがですかお二方、ちいさいおともだちからのメールを待つお気持ちは?」
「あのね。」
携帯用端末をレポーターのマイクのように構えたアスカがのたまわる。
ちょうどその時、その携帯用端末が振動。メール着信、レム君からだ。
「お、きたきた! えーなになに~、……」
アスカはぱっと画面を隠してしまう。
しかし、おれは見た。
差出人はレム君。件名は『メイ・ユエ氏宅再訪日時は木曜午後です』
もちろんおれは……いや、その一歩さきに、イツカがニヤニヤとのたまいかえした。
携帯用端末をレポーターのマイクのように構えて……
「いかがですかアスカさん、妙齢の美女とのデートを待つお気持ちは?」
「そこは『おおきいおともだち』ね☆ イツにゃんもっとがんばりましょう!」
「ぎゃふん!」
見事切り返したアスカは楽しげに、イツカをモフるのであった。
『六柱』のネーミングは厨二全開でお送りしております^^
次回、ソリステラスのとある場所での密談! どうぞ、お楽しみに!




