Bonus Track_62-5 スケさんの問い、僕のこたえ!~チアキの場合~<SIDE:月萌>
ときどき、わからなくなることがある。
これが現実か、夢なのか。
ゲームなのか、ほんとなのか。
夢を見たことがある。
僕は、犬のモンスターで。でも、どんくさすぎてひとり、はぐれてしまって。
とぼとぼ歩いていたら、けがをしてひとりぼっちの鳥のモンスターをみつけた。
この子を助けたい、そう思って僕は、森に走って木の実を取ってきた。
けれど、その子は消えてしまった。
時間経過によるデスポーンだった。
かなしくなったそのとき、目が覚めた。
こんな夢も見た。
僕はやっぱり、群れからはぐれた犬モンスターで。
でも、襲ってきたプレイヤーたちにやられかけたとき、鳥のモンスターが乱入してきて、助けてもらえて。
ああ、僕にもともだちができた。もう、ひとりぼっちじゃない。
うれしくなったそのとき、目が覚めた。
目が覚めて、初めて夢だったとわかる。
そこまでは、ほんとのことにしか思えない。
今この時も、そんな夢のなかのようだと感じた。
劇のはずなのに、ほんとのことみたいに。
それだけシオンの脚本や演出、出演してくれるスケさんたちがすごいのだろう。
でも、そのときはそんな風に思う余裕もなくて。
「スケさん……スケさ――ん!」
まるで、僕に胸を貸してくれた、優しいふしぎな剣士が、理不尽にさらわれていくようなきもちになって。
引き留めようと伸ばした手は、届かなくって。
「あぶねえっ!!」
間一髪、レンが僕をさらって飛んだそのあとに、巨大な骨のこぶしが落ちてきた。
アダマンタイトのかけらと、骨と土が絡み合ってできたフォートレスゴーレムは、さらに変形していた。
こちらから見て左の半身に、アダマンタイトのかけらが。右の半身に、スケルトンの骨が集中していた。
いましも広い広い両肩の上、そして胸の真ん中に、一つずつ違った頭がはえてきた。
左肩にはフォートレスゴーレムの大きな頭。そして右肩に小さく、スケさんの頭。
胸では紫の竜が大きく口をひらいて、ブワッと闇のブレスを吐いてきた。
「『ブレス・レジスト』ッ!!」
素早く護符を使ってくれたクレハのおかげで、ブレスそのものは防がれた――けど、僕のきもちは特大のダメージをもらってた。
こんなのって。
こんなのって。
思わずレンに泣きついてしまう。
「レン、どうしよう! 僕できなかったの、失敗しちゃったの?」
「ダイジョブだ、スケさんはまだ生きてる! ……いや死んでるけどっ!!
だからっ、とにかくダイジョブだ。まだ勝ってやるチャンスは、あるっ!!」
「…… ふふっ」
かっこよく、大真面目に言ってるけど、なぜかちょっとおもしろくなっちゃう。
そんなレンのことばは、あっという間に僕に笑顔を取り戻させてくれた。
「ありがと、レン。
よし、勝とうっ!
なんとか剣を取り戻して、もういちど……」
「っていってもよ、完全にどっか埋もれちまってんぜコレ。
それになんかあいつブレスはいてやがるし、探すとか無理ゲーだろ、今は」
「そんな……それじゃ、戦えない……」
たしかに、フィールドの地表部分はもう原型がない。しょんぼりしかけた僕だけど、レンのくれた言葉に『あっ』となった。
「いやさ、チアキ。
お前さ、もともとクラフターだよな?
剣だけで戦う必要とか、そもそもなくね?
スケさんだって、わかってるだろうよ。あれだけ強ぇ剣士ならさ。
そのうえであんだけガンガン仕掛けたってことは、もっと全部をぶつけて来いってなことだ。
そうだよな、スケさんよ!
剣でもいい、ボムでもいい。何でも使って仕掛けて来いってなことだよな?!」
そのとき、確かに見えた。
レンの呼びかけに応じて、スケさんの頭が、こくっとひとつ、うなずいたのが。
「っしゃあ! こうなったら遠慮はいらねえ!
見せてやれ、チアキ。お前のとっておきをよ!」
「わかった。レン、お願い!」
「おう!」
レンは親指を立てると、大きく右手を掲げた。
腕甲が緑に輝いて、おとっときの特大ボムを召喚する。
レン特製のテラフレアボム、改良型だ。
「せっかくだから派手に行くぜぇ! レッツ・パーリィ!
いけっチアキ!!」
「うんっ!」
火を噴いて飛んでいく後ろ姿に向け、祈りを込めて両手を組んだ。
そして、全霊を込めて、呼びかけた!
「僕の中の、導きの力! どうかスケさんたちへ、届けてっ……!」
すると『奇跡』は起こった。
フィールド全体を焼き尽くすはずのテラフレアボム。その爆発が、スケさんと、スケさんから続く骨の右半身にだけ集中。
さっきの戦いでは砕けなかったはずのスケさんたちの体を、キラキラ輝く光球の群れに変えたのだ。
白く輝く光球たちは、ありがとうというように僕をとりまくと、天に向かってのぼっていった。
すべての力を出し切って放心する僕の前、戦いはクライマックスを迎えた。
ユキさんの、勇ましい声がきこえる。
「よーしっ! そろそろあたしも働かなくちゃねっ!
……いくわよ、ハルキくん。
あいつがもう一度ブレスを吐いたら、あたしが蹴散らす。
そのすきに、ハルキくんがあの頭の上から必殺技をお願い。
ハルキくんの剣なら、必ずできるわ!」
「ユキさん、それ逆のほうがよくないですか?
だって、あの高さ。さすがに俺のジャンプでも届きません」
とまどうハルキくんに、ハルオミは優しく力強く告げる。
「大丈夫だよ。可愛い弟のためなら、山の一つや二つ、兄貴が作ってあげるから!
……みてて。『山、笑う』!!」
ハルオミが高らかに唱えると、フィールドが再び盛り上がる。
フォートレスゴーレムのとなり、瞬く間に立ち上がったのは、小さな山。
山肌にはつぎつぎと、色とりどりの花が咲きみだれ、ふんわりと優しい香りがただよってきて、すこし力が戻ってきた。
「ちょ、兄貴やりすぎー!
もう、やればいいんでしょ、やればーっ!」
でもその言葉に振り返れば、やっぱり。ハルオミがナナさんの胸に、後ろ向きに倒れこむところだった。
ハルキくんはちょっとトホホと笑いつつ、それでも飛び出していく。
山肌にガンガンとたたきつけられる、フォートレスゴーレムのこぶしをひょいひょいよけつつ、上へ、上へ。
一方でクレハは、ユキさんにありったけのアイテムを使いまくっている。
とはいえ、手持ちは少ない。『ブレス・レジスト』に『クイックアクト』、『防壁』に『強化』、『クイックチャージ』と使い切ってごめんと謝る。
「ごめんユキさん。こんなことしか俺、できなくて」
「何言ってるの、クレハ君。
あなたが見ていてくれること。それが一番力になるの。
見てて。……いってくるわ!」
飛び立つユキさんの背中を、祈りを込めて見つめるクレハ。
その瞳に、きらきらと星の輝きが宿る。
同時にユキさんの体を、同じ色の輝きが包み込んだ。
弾む声とともに、ユキさんはいっきに加速した。
「すごいすごい! 力がどんどん湧いてくる!
これなら絶対絶対、負けないっ!!」
くるくると旋回しつつ、風の力を集めたユキさんは、星色と風色に包まれて、まるで妖精のよう。
いつもの軽装備さえ、キラキラの輝きをちりばめたものに変わった。
「さあ来なさい、ドラゴン頭!
すべてこのユキ様が、吹き散らしてあげるっ!」
そんなユキさんの挑発に、みごとにドラゴンの頭は乗った。
再び大きくあぎとを開き、色濃い闇を吹き付ける!
「風よ集え、放てコノハ!『コノハライド』――!!」
ユキさんはあわてず騒がず、風の力を右足に集めて、まっすぐに蹴り放つ。
その威力は素晴らしく、闇のブレスがきれいさっぱり吹き飛ばされる。
さらにはフォートレスゴーレムの全身に、細かいひびが無数に走った。
「今よ!」
「はいっ!
いくぞ、全力っ!!
『ゴールドムーン・ストライク』ッ!!」
白の装束に金の剣、伝説のシャモアを模した姿に変わったハルキくんが、花集う山頂からジャンプ!
大きく大きく跳躍した先は、フォートレスゴーレムのはるか頭上。
「いっっけぇぇ――――!!」
僕たちみんなの声援と、金色の力をまとって、ハルキくんは勝利の流れ星となった。
わんわんわん!
次回、新章突入。
ソリステラスでも上映会なう!
あの彼女の意外な姿にカナタは……
どうぞ、お楽しみに!




