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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_62 捜査に出会いに入れ替わり?! 特別休暇は大忙し!

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62-6 揺れる、魔王城(※主に歓声で)!!<SIDE:月萌>

「改めて。

 ようこそおいでくださいました、義兄上あにうえ様。

 まずはどうぞ、おくつろぎ下さい。今お茶をお持ちします」

「そんなにかしこまらないでください、フユキ殿。

 俺たちにとってあなたはもう、家族の一員ですよ。

 どうか、気兼ねなく接してください」

「ありがとう。では……ハルオミ殿。

 お話というのは……」


 果樹園前の対決は佳境で幕が下り、場内は闇に包まれる。

 ふたたび灯った明かりは、場内設置のスクリーンのなか。

 城の一室と思しき応接間。黒衣のフユキがハルオミをソファーに案内し、丁重に一礼したとたん、なぞの歓声が上がった。

 正確に言えば、『義兄上あにうえ様』と言った瞬間だ。


「おーおー。予測通りの盛り上がりだねん☆ みんなスキなんだからー。あ、どーぞ皆さんそのまんまでー♪」


 と、うしろから控えめな声がかけられた。アスカだ。

 となりにハヤトもいるのは気配でわかったが、帰ってきた盟友相手に背中を向けっぱ、なんてつれないことはしない。そのまんまというアスカの言葉に甘え、座ったままで笑顔を向けた。


「おーふたりともおつかれ!

 まずは見ようぜ!」

「ういういー。じゃまたのちほどー」


 そうしてイツカが明るくねぎらいのことばをかければ、二人はホッとした様子で手近のシートへ。

 実はこの二人、第一幕の間は、タカシロの一員としてうるさがたと一緒だったのだ。つまり、観劇の場を利用しての社交である――もっとも言ったことは、『なにもかも水に流したというわけじゃないからな、あまり調子に乗るなよ』なのであるが。



 リュウジ氏、ならびに赤竜管理派を見舞った『セレナクライシス』は、はやくも鎮火してきている。

 それは、リュウジ氏の手腕、レインさんたちの努力にくわえ、最大の被害者でもあるアスカが火消しに加わったこと。さらに、間近に迫った慶事――つまりハルキくんとエルメス殿下の婚約成立――への期待感がある。


 向こうのおれたちの動向が、国内の目を引き付けたのも一因だ。

 病身の女神様とお茶会し、女王様たちと謁見し、議員たちとも仲良く、反和平派たちや町のお茶屋さんの女の子には熱烈アピールされ、アスカとハヤトともども視察に行けば六獣騎士には取り合われ、子供たちにもなつかれて……と大したモテっぷり。

 ときには『波乱の和平式典』とか『イツカナ、拉致未遂?』とか『視察先で3S発症、暗殺未遂か?』なんて言うヒヤヒヤもののヘッドラインが流れたのも奏功したといえるだろう。

 そろりと沸いた不穏な論調は、美しき皇女様が誠実に頭を下げ、それを『マザー』本人が優しくかばうというコンボで下火に。

 そうして空いた穴に、婚約者候補たちの友情物語が入ってきて、現状なんだかうやむやというわけである。



 ともあれ、いまは素直に観劇だ。

 ハルオミが事情を打ち明け頭を下げれば、フユキとコトハさんは仲良くうなずきあった。もちろん返事はYESだ。


「近頃このあたりでは、所属不明のゴーレムが目撃されていると聞く。せめて王城の前まででもお送りさせていただきたい」

「もちろんです……って、また敬語になっちゃったね、俺たちどっちも」

「確かに」


 もふもふ義兄弟がふふっと仲良く笑いあうと、またしても歓声が沸き起こった。

 だが、その直後だ。


「あの……揺れていませんか?」


 ずしん、ずしん。場内に響き始める音と揺れ。コトハさんが不安げに言う。 

 駆け出す三人の姿が画面から消え、入れ替わるようにさきのブースに入場。

 第一幕と同じように眼下を眺め、そのまま固まった。


 明かりに照らされたフィールドには、息を切らせ、剣を構えるアキトとセナがいる。

 二人を追うようにずしんずしんと入場してきたのは、三階建てビルほどの大きさの素朴なロボ……もとい、一体のグレートアダマンゴーレム。

 みんな大好き、ゴーちゃん(※初期形態バージョン)である。

 なるほど、うわさの合体変形というのは。予測に思わず笑みがこぼれる。


 しかし、笑っていられるのは観客だけだ。なりたて四ツ星二人ではほぼかなわないレベルのモンスターに狙われる、アキトとセナは必死である。

 振り下ろされる巨大なこぶしを、よけて、よけて、よけまくる。

 スキをねらってたたきつける必殺技は、しかしわずかなダメージしか稼げない。


「なーるほど、こいつは俺たちの出番、てワケだな!」


 そのとき、観客席後方を照らすスポットライト。

 みればどばーんとドアを開いたポーズで、トラオが立っていた。

 その後ろにはサリイさん、リンカさんとサクラさん。

『トラオハーレム』面目躍如といったところである。


「みなさん!」

「話は聞いた。ここは先に行け!」

「で、でも、……!」


 心優しいコトハさんは、それでも迷ってしまう。

 対して、リンカさんが進み出た。


「コトハ。あなたの気持ちはうれしいわ。

 けれど、あなたにもしもがあれば、ユキは助からないかもしれない。

 一刻も早く治してあげて。六人いれば、なんとかなるわ!」

「六人って……!」

「いいのか? だって俺たちは……」


 確執のある相手からの共闘宣言。驚いて聞き返すアキトとセナに返した、トラオの答えは男前だった。


「バッカ、んなもん放っていったら寝覚め悪すぎだろ!

 間違ったのは俺だ。今更恨んでなんかねえよ。

 いいだろ、サリイ?」

「あたりまえでしょ、トラ」


 トラオに寄り添うサリイさん。きらびやかなお似合いカップルにいろんな色合いの声が上がる。


「すぐに倒して追いかけるわ。ね、サクラ」

「心配なんかないない! ねっ、お姉さま!」


 こちらはこちらで仲睦まじいリンカさんとサクラさん。『尊い』の嵐が起きる。


「……行こう。

 みなさん、このお礼は必ず!!

 フユキ、コトハをお願い」

「わかった、義兄さん」

「きゃっ?!」


 とどめの『敬語取れからのサプライズお姫様抱っこ』。

 とんでもない音量の歓声は、グレートアダマンゴーレムの歩み以上の震度で会場を揺らしたのだった。

さいきんPVが予想外に多くてはわわわとなっております……

ご覧いただき、ありがとうございます!


次回、王城を見舞う予想外たち。

はたして石化解除の秘薬は完成するのか?

どうぞ、お楽しみに!

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