61-5 女神さまはゴシックがお好き? ステラ様との定例茶会!<SIDE:ST>
2021.07.19
誤字報告ありがとうございます! 修正させていただきました!
来ている←着ている
レムくんはああ言ったのだが、おれたちには最優先の案件があった。
ステラ様との謁見。おれたちがここにいるレゾンデートルだ。
ソレア様から『今日、大丈夫そう!』の知らせがあればもちろん出ていくのだ。
「いや、言っといてアレだけど……だいじょぶ?
昨日まで視察で飛びまわってたんだし、疲れてたら休んでいいんだからね。
ステラ、気にしいだから、気を使われてるって思っちゃうとかえって負担になるからさ」
ソレア様は気遣ってくれたけど、おれたちの答えは決まってる。
「優しい女の子たちとのお茶なんて、むしろ癒されるに決まってるじゃないですか。
ほんとにダメなときは素直に言いますんで、そこはお互い遠慮なくいきましょう?」
すると、ソレアさまはちょっと赤くなってこういった。
「カナタもさ、『主人公』だよ、けっこう。
……じゃなかったら、王子様か」
「え?」
「なんでもない。
それじゃ、いこっか!」
そんなわけでおれたちは、みんな一緒に街へ出た。
すなわち、ミルルさんと、彼女に街を案内する『シエル・ヴィーヴル』女子チーム。
シグルド邸に出向き、お茶会という名の事情聴取を行うレムくんと新しい『お友達』のチーム。
そしておれたち――ステラの塔でのお茶に赴く、ソレア様とおれとイツカ、護衛の『Bチーム』の三チームが。
ちなみに『Bチーム』の正式名称は『チーム・Bs』だ。コードネームが全員Bだからだという、なんかすごくカッコイイ。
まずは女子チームが、ダウンタウンのほうへ離脱。
Bチームのハンター、コードネーム『ブレイド』ことミラさんは、「いってら~」とぴょんぴょん飛び跳ねて手を振っている。この元気の余りっぷり、ちょっぴりどこかの黒子猫野郎に似ている気がしないでもない。
続いて残ったレムくんたちとおれたちが左と右へ。
ちなみに今日のバニーは、レースをあしらったリボンをヘアバンドのようにして、うさみみをアクセサリー風に。
らせんを描くツインテールもいつも以上につやつやのキラキラ。いつものゴスロリ系の服もどんとグレードアップして、ワンピースとドレスの中間のようなゴージャスさ。
レースをあしらった扇子を手に優雅にほほ笑めば、どこから見ても上級貴族令嬢だ。
道行く人がみな振り返り、『美しい……』『いったいどこのご令嬢だ?』とささやきかわしているのが、なんかちょっと気持ちいい。
彼女をエスコートするレム君は、貴族の子らしい品の良いスーツ。
二人の後ろを固める『白兎銀狼』――ハヤトは前開きのコートの下から胸甲をのぞかせた、物語の騎士っぽいいでたち。アスカはあえて、道化めいたデコデコだ。
いずれもバニーとアスカとマールさんが気合入れて作り上げた表面換装。バニーにあわせて全員、ゴシック調で固めてあるのにこだわりを感じる。
ちなみにおれたちも、いつも一張羅のスーツではということで、同じラインでよそゆき表面換装をあつらえてもらってる。
レムくんとおれたちの着ているやつは、いわゆる『皇子系ロリィタ』というものらしい。ぶっちゃけおれのいつものバトル時の衣装に似ているのだが……この名前を聞いてしまうとなんだか恥ずかしい。
大丈夫、これは衣装これは衣装。心で唱えてニッコリ笑うと、ソレアさまがポンと背中を押してくれた。
「だいじょぶ、ちゃんとふたりとも似合ってるよ。
さっ、ステラに見せに行ってあげよう! あの子こういうの大好きだから!」
そうと聞いたら勇気百倍。おれたちは、昼なお優しい輝きを放つステラの塔に向けて歩を進めるのだった。
「わあ、素敵……!
とてもよく、似合ってるわ。
ステラ風の衣装を着てきてくれたのね。ありがとう……!」
はたして、ステラ様は小さな白い花が開くような笑顔をみせてくれた。
寝台の上、小さく身を乗り出して、たおやかな両手をふわりとあわせて。
それでも、どこまでも優しい彼女はやっぱりこういった。
「ごめんね、視察旅行の間にも、直後の今日にも来てもらってしまって。
だいじょうぶ、おかげで、元気すこしずつだけれど、でてきているから……」
「もー、またそうやってがんばる。
まあでも、それがステラ、なんだけどね。
さ、お茶しよう! 今日はうちの子がつくってくれた、とびっきりきれいなシャーベットをもってきたからね?」
ソレアさまがぱちんと指を鳴らすと、またしてもティーテーブルがあらわれて。
その上には、いつものお茶と、ディナークルーズでいただいたビックリデザート『インティライム』がのっかっていたのであった。
昔、着道楽の友人に付き合っておしゃれなお洋服を見に行ったら、値札のすうじにお目目がスポーン! しました。
次回、こんどこそ兄弟対決!
どうぞ、お楽しみに!!




