Bonus Track_61-5 よくばりセット?!『クラッシュクラフターズ』連戦シムバトル!(1)~レンの場合~<SIDE:月萌>
「ぃいっけーシャシャ! ドラゴン・ブレスー!!」
『御意っ!』
チナツが召喚したのは、空の色のような青い竜。
大きなあぎとを開けば、一等星の輝きが集まっていく。
シャシャの必殺・シャインアクアブレス。上等だ。
「ンなモンで抜けっかオラアア!! 『レッツ・パーリィ』!!」
オレは防水型テラフレアボムを発射した。単発だが、これで充分――いや、ミスった!
「『タテガミオオカミの星眼』ッ!!」
クレハの覚醒支援技が、シャシャの口に集まる輝きを一気に倍加させる。
天を抜いたかのような水撃が、爆発を押し流して迫りくる!
「レンあぶないっ!!」
間一髪。チアキがうしろからオレを引き倒したおかげで、直撃は免れた。
さすがはドラゴンブレス。余波ですら、ガッツリHPを持ってってくれやがった。
だが、まだHPはある。つまり、まだやれる。
オレはマジックポーチを探り、こんどこそ『比翼』を……
ない。オレはあわてた。チアキが声をかけてくれた。
「おちついて、レン。テラは一発までだったでしょ!」
「うっがああ! そーだったくっそおお!!」
こうなりゃやけだ。オレは手持ちのボムをいっぺんにぶちまけた。
「ちょっなっぎゃあああ?!」
チアキが『瞬即塹壕』でオレを地下へと引っ張り込んだ。
轟音が腹に響いてきた。
オレは思った。今回もだめだった、と。
「おつかれー。やーあいかわらずの破壊力! チナツさん死んだかと思ったわ!」
「まあ実際HPはゼロになったけどな……」
チナツがいつもの底抜けに明るい顔でHAHAHAと笑えば、クレハははああとため息をつく。
そう、勝ったのは一応オレたちだが、それも素直には喜べない。なぜって。
「んでー、覚醒の気配は……?」
「いやー……ぜんぜん……」
チナツが明るく冗談めかせて聞いてくるが、むしろそれが申し訳ねえというかなんてーか。
「やっぱハッデな撃ちあいんなっちゃうと逆にダメなんだな、二人の場合」
「オレもそうおもう!」
ソーヤとシオンが言う。そう、こいつらとのバトルも、似たような顛末だった――しばらくは逃げるソーヤをチアキが追い、オレとシオンが錬成魔術で身を守りながらボムを投げ合っていたのだが、結局は火力戦に。
ソーヤの『アトリエ・ラパン』で立てこもりつつ、シオン主体の『パステル・パレット』で上級錬成魔術を連発してくるやつらに対し、こっちはチアキの『シャスタの水壁』で身を守りつつオレがボム連発。そのうちソーヤのBPとオレの所持ボムが切れてお開きとなったのだ。
「かといって、俺たちのような普通の『前衛白兵・後衛補助』が相手でも、特段のブレイクスルーは見られなかったし……どうしたらいいんだろうね」
ミズキとミライが仲良くうなる。いやちょっと待て。
「お前らはフツーじゃねーから!!」
「えっ」
「だー! 二人そろって清楚に小首をかしげたってだまされねえぞ!!
お前らはたしかに覚醒はしてねえかもしれねえが、それだけだから!!
むしろ覚醒してなくてそのレベルってやべえから!!」
そう、こいつらの場合、序盤に使ってくるトランスファー&フルブレッシングコンボから始まって、ミライは神聖魔法でガンガン強化と回復連発してくるわ、ミズキもフツーに腕が立つわで手に負えない。
ミライやアスカのような『白妃』――その実態は超特化型プリースト――がなんやかや、国の干渉を受ける身だった理由は、実はこいつらこそ最強だから。そのことが、つくづく身に染みた。
「そうかな……俺たちとしては、同じタイプでも覚醒ずみの『チワミケ』や『ナナユキ』のほうがポテンシャル上に感じたけれど」
ね、とうなずきあうこいつらをほのぼのした目で愛でたのち、話題の二組はそろって首を振った。
「サクラは結局お姉さまをオーバーヒートさせちゃったし……」
「あたしも結局、二人を倒しきれないでナナに負担が行っちゃったし。『かぴばらんど』がテラにも耐えるってのは想像してなかったから驚いたけど」
「それはわたしの力不足よ。サクラが悪いわけじゃないわ。ちゃんとテラにも耐えたじゃない」
「ユキの戦術は間違ってないんだな。わたしがもすこしやれれば、勝ててたんだな」
いやいやいやいや。オレは突っ込まずにおれなかった。
「お前らも大分やべえこと言ってるからな?
テラ耐えたとかもう普通に生徒レベルじゃねーだろよ!!」
「お姉さまのためだもん!」
「カピバラだからね~」
ノー天気笑顔でしれっと答えるチワワとカピバラ。いうだけ無駄だった。がくっとうなだれるとぽんと肩を叩くやつが。
顔を上げると、明るい笑顔のアキトだった。
「でも勝ったじゃん? それはすごいって!」
「いやいやお前らもテラ抜けてきたからな……?」
思い返せばため息が出る。
サクラとリンカが覚醒発動したとき、チアキは大きく吹っ飛ばされてしまった。
サクラはそのままオレのほうに突っ込んできたので、オレはとっさに羽ばたいた。チアキを回収がてら、上空からテラを浴びせたのだが、サクラはピンピンしてやがった。
ユキは『コノハライド』で制空権をとってきたので、やむなく『比翼』をお見舞いしたのだが、チアキの掘ってくれた塹壕から顔を出せば、あの黄金の草原は無事だった。
どちらも直後にプリーストたちがオーバーヒートし、そこまでとなったのだが、アレは計算を上回っていた。
そしてアキトとセナは『最強最速』で水をまとって突っ込んできた。
ダメージは大きかったが、それでも生きて二人とも。
それを見越して防水型を使ったにもかかわらず、だ。
「防水型二連だったらあの時点でやられてたって。
それに俺たち結局そのあとやられちゃったじゃん!」
「やっぱりテラは『アーススイム』で壁潜りしてやり過ごすのが得策だな」
うなずくセナ。こいつらはマジに天敵だ。
「つまりこっちは、まずフィールドぶっ飛ばすとこからいかないと、か……」
「それはいいが、それもまたボム頼みの戦いかただ。
チアキも無事では済まないだろう?」
思わずつぶやくと、フユキにいい声でたしなめられた。
フユキたちとのバトルは、格の違いが浮き彫りになったものだった。
兼業前衛とボマー、タイプが完全に一緒で、途中から向こう二人が覚醒したのちは、純粋に力量差で押し切られた。
「やっぱ、僕の愛が足りないのかな……
僕もレンをまもってあげたいのに……」
「いや! いや! チアキが悪いわけじゃねえって!
だいたい今回オレがチアキをフォローできなきゃなんだから、チアキはなんも悪くねえから!」
しょげるチアキをなだめてやれば、うれしそうにこっちを見る女子陣。おいまて、オレたちの気持ちはどこまでも清らかだ。つかリンカとサクラは……やめよう、むなしくなってきた。
遠い目をしていれば、イズニノとハルハル兄弟が慰めてくれた。
「チアキは守れてると思う。
時止めをしておれが斬りかかった時。チアキの展開していた『水壁』に阻まれて、効果時間内に二人を倒しきれなかっただろう」
「そーそ。チアキは守れてる。間違いないって!」
「レン先輩も、フォローはちゃんとできてると思います!
だってアキトさんとセナさんのとき。チアキさんがお二人にトドメさしまたけど、それってレン先輩がテラでHP削ったからじゃないですか! それだって、ちゃんとフォローですよ!」
「俺もそう思う。
それにほら、俺たちとの試合で、俺がレンたちをふきとばしたとき。
絶対爆破防御とボムをうまく使って、軟着陸したじゃん?
あのセンスはほんと、すごいよ。レンはちゃんと、成長してる!」
「あー。そりゃ、まあ……」
ほんとこいつらいいやつだ。おかげでチアキも笑顔にもどってくれた。
だからなのか、覚醒できたの。
「はああ……。
俺たちに至っちゃ、覚醒の余地がなかったんだぜ?
やっぱお前ら天敵だわ……」
いやいや、ビミョーな野郎がここにいた。
まあトラオのやつめも、いいとこがねえとは言わない。だがなんつーかガキというか、アホというか、すぐにマウント取ろうとしてきやがる。
「ふたりはちゃんと強いよ!
トラオと斬りあってるとき、サリイお姉ちゃんに僕だけ撃たれた時は、すごいなーって思ったもん!
思ったんだけど、二人の覚醒は、もっとおっきい相手の時に取っとけばいいんだよ。たとえば召喚獣さんたちとか、ドラゴンたちとか、あとゴーちゃんとか!
だから大丈夫、全然問題ないよ!」
「そっか……そっか!
ありがとなチアキ!」
「ありがとうチアキくん。そう言ってもらえて自信がついたわ!」
さすがはチアキ。たいてい無口なサリイまでもがニッコリだ。
うん、これにまさるフォロー力は、やはりオレにはない。
「あのさ、いいかな。
イザヤとユウと、戦ってみてくれよ」
うなだれたところにかけられた声。顔を上げれば、アオバがいた。
なぜか、明るい笑顔で。ミツルとイザヨイコンビを引き連れて。
つまみぐいとはいえ、さすがに12戦一話には入らなかったです( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
次回、続き。なんか昔懐かしい? 名前の覚醒に至る予定です!
どうぞ、お楽しみに!




