61-2 新たな隊員(仮)とオフ直前に!<SIDE:ST>
ソレア様に運んでもらってステラマリス第三基地に着くと、なんとなく『かえってきた』という感じがした。
おれとイツカとナツキとバニー、そしてアスカとハヤトは、それぞれ部屋に引き上げて手荷物を片付けた。
すこしだけ休んだら合流。視察の間のことを、ざっくりとレポートにまとめる。
八割がた出来上がったところで、気分転換にラウンジへ。
すると同じことを考えていたのだろう。リンさんとマールさん、ミルルさんがいて、おーいと手を振ってきた。
「みんなもしかしてもうレポート書けちゃった?」
「いんや~、八割がたできて気分転換。マルりんたちは?」
「あ~、半分くらい。
もー添削がきびしいんだなーレムちゃんの。ミルちゃんにはまだ見習いってことで優しいんだけどさ~……
ま、あんまバカなもん書いちゃうとマル姉さまにご迷惑かかるからね。そこはできるようにならなきゃだわ」
声をかけてきたのはマールさん。こたえたのはアスカだ。
マールさんは肩を回し、大きくため息しつつもやる気の様子。えらい。
アスカのやつめはこの三日ほどで、もうすっかり『シエル・ヴィーヴル』のみんなと気安くなっていた。これだけ人に……とくに女子たちに溶け込むの早いのって、もはや才能だと思う。
そういえばミライも『スイーツ・シャングリラ』でぜんぜん違和感なく女子陣に入ってた。もしかしてこれが『白妃』の真の能力か。おそるべし。
『あ、ってことはミルちゃん『シエル・ヴィーヴル』入れるのね?』
バニーもすっかり仲良くなったようす。よかったね、という風で確認をとると、ミルルさんは嬉しそうながらも控えめにこたえる。
「まだ、仮採用なんです。
ソリスでは学んでなかったことも、いろいろ身につけなきゃだし。がんばって早く、みんなのお役に立てるようになりたいです!」
「私でできたんだから、ミルちゃんなら絶対大丈夫!」
「そうそう、一緒に頑張ろうね!」
「ありがとリンちゃん、マールちゃん!」
リンさんマールさんと仲良く手を取り合うミルルさん。おとなしい感じの顔が、ぱあっと明るい笑みになる。
『謙虚だけれど明るい努力家』というリンさんの言葉通り。思わず応援したくなってしまう。
イツカのやつめも同感らしい。ピーカン笑顔でのたまわる。
「ミルルってさ、なんかすっげーいいやつだよな!
まっすぐにがんばっててさ。『嫉妬』が育つとか、そんな感じちっともしないし!」
「えっそ、そうですかっ……?」
案の定ミルルさんはほほを染めた。もちろんイツカにうさみみパンチ、ミルルさんにはごめんなさいだ。
「こらイツカ。
ごめんねミルルさん、こいつ無自覚主人公野郎で」
「あっ、それは大丈夫です。イツカさんにはカナタさんという無二のパートナーがいらっしゃることはよ~くわかっておりますのでっ!」
「あ、はぁ……」
ミルルさんから返ってきたのは、輝く太陽のような笑顔。
いえいえ、どっちなんですかその『パートナー』の意味。いや確認したくない。とりあえずあいまいに笑ってにごしておく。
それでも彼女には一片の邪心もないのだろう、清々しくこんなことをいう。
「それはそれとしまして。
たとえ誰かに3Sフラグメントを接種されたのだとしても、それはわたしの油断から起きたこと。つまりはわたしの弱さゆえです。
ですから、それによって恩赦を求めようというつもりは、わたしにはありません。
いただいたこの場で、もっと強く賢く、自らを鍛えなおすのみです」
「…………!」
ハヤトが半分口を開けたまま、じっと彼女を見つめる。ふさふさしっぽもはたはた揺れて、いたく感動した様子だ。
そんなハヤトの脇腹にひそかにげしっと肘鉄をくれて、アスカは言う。
「んーでもおれもイツにゃんに同感だねー。
ぶっちゃけさ、変なやつ見かけたりとかしてない?
ほら、そーゆー卑怯者を野放しにすると、小さい子供たちも危ないじゃん? だからおれ的には、とっとと捕まえたいんだよね。
おれの友達もさ。だまされてフラグメント接種されて、ひどい目に逢ってるからなおのこと、ね」
「あ、……
そうですよね。わたしだけの問題じゃないですよね!
ありがとうアスカさん、気づかせてくれて。
でも、怪しい人か……
別に怪しい人とか、は……うーん……」
うつむき加減で真剣に考えこむ様子は、あくまで清らか。この子は、人を疑うことなんか、知らないような気がする。
ぜひともそのままいてほしいものだが、そうなればアタリはこちらでつけるっきゃない。
「もちろんその件は、調べてもらってますよ。
父上たちもみんな、不審を抱いてましたし」
そこへじゃじゃーんとやってきたのは白うさみみの救世主、その名もベルさんだ。
「大丈夫、みんながきっと何とかしてくれますよ。
ミルちゃんは安心してわたしたちと、修行してくれればいいですからね!」
「よかった……
次にライアン様とお話しするとき、ありがとうございますってお伝えしてくれる、ベルちゃん」
「もちろん!
っていうか一緒に話そう。
ミルちゃんが元気なとこ見たら、父上も安心するから」
「うん!」
ミルルさん的に、よく気にかけてくれたライアンさんは『いま一人の父上のような方』。ベルさんにとってミルルさんは、悲しむ父の心の慰めになってくれた恩人のひとりだ。
もしかしたら、会うこともなかったかもしれない二人。それがいま、姉妹のように仲良くしているのを見ると、運命は不思議なものと思わざるを得なかった。
視察の間、ずっとおれたちについて護衛をしつづけてくれていた『シエル・ヴィーヴル』には、三日間の特別休暇が与えられた。
それまでも毎日、護衛だなんだで動いていたこともあってのことである。
その間のおれたちの護衛は、別の隊の人たちにお願いすることとなった。
とはいえ、とうのおれたちのスケジュールも空いていた。
旧ステラ領内の視察は来週。ステラでのエクセリオンにあたる『六柱』との面会は、早くて金曜からの見込み。
それまでは、しばしゆっくりさせてもらうつもりだった。
「そういえばジュジュは? いっしょじゃないの?」
「ふっふっふ……リンリンよくぞ聞いてくれました~。
ただいまレムちゃんとふたりで絶賛いい雰囲気ですよ!」
「行こう!!」
ハヤトも可愛い最年少二人の恋模様は気になってしまう様子。おれたちは満場一致で立ち上がった。
旧ソリス領から戻って半日。ステラマリス第三基地のラウンジには、どこかのんびりとした空気が流れていたのだった。
ミルルちゃん加入が決まったのは直前でしたが、ほんと入ってもらってよかったと思います(*^^*)
次回、月萌サイド。それぞれの結果を持ち寄る日曜茶会で明らかになること。
レンがシャスタ様からいただいた「ごほうび」とは……?
どうぞ、お楽しみに!




