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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_61 旧ステラ国領での小休憩!

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61-1 ごちそうさま! 星都ステラマリスへの帰還!<SIDE:ST>

「うわっと、っとぉっ?!」

「あぶない!!」


 観光客用、漁業体験ツアー。

 それにはもちろん、魚型モンスターとのバトルは含まれない。

 なのにおれたち三人までが戦ってるのは、ひたすらにこの黒子猫野郎のせいである。

 ぶっちゃけやつが例の『おねがいビーム』で、パレーナさんや船の皆さんを丸め込んだのである。

 けれど、こんな小船の上――下手に立ち上がれば転覆しかねないものの上での戦闘なんて、全くの初体験だ。

 魚系、鳥系装備ならまだしも、おれとイツカはウサギとネコ。いうなれば、濡れるの大嫌いアニマルズなのだから。


 ハヤトはハイイロオオカミ、そんなに水を嫌わないですむ動物なので比較的落ち着いているけれど、それでも小船での戦闘は初めてということ。

 なんとかバランスをとりつつも、思うように攻められずにいる。


 ぶっちゃけ、スタングレネード一発投げ込めば群れごと制圧できるだろう。

 けれど、それは禁じ手である。

 ボスである大型個体をかこみ、銛を投げて戦っている『刺し子』さんはもちろん、この辺一帯の生態系にも被害が出かねない。

 だからおれは、波にふらついては船から落ちかけるイツカをひたすら支え、ときには回収するよりほかにない。


 周りの人たちはおれたちのそんな姿になごんでいるみたいだけれど、当のおれたちはそれどころじゃなく、不屈のイツカもついに座り込んだ。


「あーくっそー、足元おぼつかなくってぜんっぜんだめだ~……」

「おい、イツカ!」


 そのときパレーナさんが隣の船から声をかけてきた。

 ちなみに今の彼は、いつものゆったりとした装束を脱ぎ捨て、戦闘と作業をどちらもこなせる丈夫なズボンとジャケット姿。肩にかかる髪もぴっちりひとつに結んでる。

 さすがはイケメンというべきか、似たような恰好の人たちはいっぱいいるのに、ひときわ抜きんでてかっこいい――マルキアなど、見学のふりしてときどき見とれてる。

 そんな美丈夫が放つ、張りのある大人の美声は、喧騒を貫き的確なアドバイスをくれた。


「お前のもともとの二つ名はなんだ?」

「……あっ」

「いいんですか、やってしまって?」


 おれは一応確認をとる。

 帰ってきたのは、周りじゅうからの「おーう!」。

 満場一致での賛成をうけ、よしっとおれたちは宙に舞う。


 パレーナさんたちが、ボス個体の下がわに防壁を張ってくれた。よし、これで心置きなくやれる。


「角度よし。いくよ!」

「っしゃあ! 『ハイパー・ムーンサルト・バスター』!!」


 おれがイツカの足裏を蹴りだして必殺は、タイミングを合わせて立ち上がったハヤトの一撃と同時着弾。

 見事、魚群を率いる巨大個体にとどめを刺したのであった。



「んー! んまい! んまい! おかわり!!」

「ちょっとこらイツカ?」


 冷たい海水で冷えた体を温泉であたため、繰り出した朝市では、どんぶりごはんとお箸を渡された。

 体験ツアー参加者は朝市をめぐり、このどんぶりに乗っかるだけおかずをよそってもらえるのだ。

 もちろんおかわりは有料だが、本日の漁のMVPということで、今回は免除。

 イツカはあっというまにてんこもりの一杯目を食べきるとおかわり。さらにはもう一杯を要求したのでさすがにおれはツッコミを入れたのだ、が。


「いいっていいって。

 遠くから来た若い子にこんなにおいしそうに食べてもらったら、ごちそうしないわけにいかないだろ?

 ほらほら、カナタくんたちも遠慮しないで!」

「あ、ありがとうございますっ!」


 正直言って、このほかほかごはんと海の幸の組み合わせは、幸せのかたまりだ。

『しごとのあとの魚はうまい』。そう聞かされていたが、まさしくその通りだ。

 あたたかな漁港の人々のご厚意に甘えておれも、まふまふとすきっ腹を満たすのだった。



 そうしておなか一杯になったら、いよいよ帰還だ。

 港には、六獣騎士をはじめとしたソレアの人々が見送りに来てくれた。


「はーしあわせー。俺さかな好きになっちゃったー!

 前も嫌いじゃなかったけどもー大好きだー!」

「そうかそうか。なら、また来るといい。

 いっそここで漁師にならないか。お前たちの腕ならじゅうぶん稼げるぞ」


 パレーナさんがわが子を見るような目でイツカを撫でると、ライアンさんが一生懸命割り込んできた。


「おい待て、イツカは俺が先に目を付けたんだぞ!

 イツカ、お前の狩りの腕前は素晴らしかったぞ。俺のうちに来ればバトルもし放題、肉も食い放題だからな!

 もちろん嫁御方とカナタを傷つけるような真似は俺がさせん。だから安心して全員連れて来いっ!」


 するとルリアさんがニヤリ。ドールたちを肩にのっけたアスカと、ハヤトをまとめて抱える。


「へーそれじゃあこの四人はうちでもらっちゃおー。

 ねー、うちならステキなスイーツ食べ放題だよー? クローリンやステファンや、エルマーんとこにもいつでもすぐに遊びに行けちゃうし!」


 クローリンさんもニコニコ対抗。


「お野菜はうちの方がおいしい自信がありますわ。娘たちも皆様にまたお会いしたいと言っておりますし……」

「ぐぬぬうっ、それはかなわない! っていうかむしろあたしが遊びに行きたいっ!」

「あの……僕のうち、職人街にもあるから……見学、いきやすい、よ……?」


 エルマー君はそっとおれの袖を引いてくる。立地条件はもちろんだけど、健気な可愛さにぐらっと来てしまう。


 健気といえば、ルゥさんだ。

 あくまで、俺はクローリン様のつきそいですという顔をしながら、ときどきベルさんをそっと見ている。これはもしかして、本気なのか。

 ベルさんも、そ知らぬふりだが気になる様子。

 この判りやすい二人とは対照的に、パレーナさんとマルキアは大人の余裕だ。

 ほんの時折笑みを交わす様子は、なんだか通じ合ってるかんじすらする。


 ステファンさんはそんな二組を優しく見ながら、ヒートアップするみんなをたしなめた。


「ほらほらみなさん、そんな風にされたら帰れなくなってしまうわよ。

 また、いつでも。何度でも逢いましょう。

 たとえ情勢が変わっても、私たちが愛し合っていけない理由にはならないわ」


 ナイスフォローに、ソレアさまもこぶしを突き上げる。


「そーそ! 憎しみは必要ないよ、ボクたちのあいだには。

 ボクたちはみんなおんなじ、この星の子だ!

 さあ、今はそれぞれの場所へ。そうしてもいちど、また会おう!」

『おーう!』


 はればれとした宣言に、港にいた全員が声をあわせた。

 こうしておれたちの、旧ソリス領での視察旅行は終わりをつげ。

 ふたたび星都ステラマリスへ。その中心地にある基地へと、戻ってきたのだった。


新章開始! やっとステラにかえってまいりました!


次回は月萌サイドです。ソリステラス編と時間が完全にずれているのは……まあ気にしてはいけません(爆)

どうぞ、お楽しみに!

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