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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_60 旧ソリス国領の視察と合宿と!(3)

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Bonus Track_60-6 闘技場に、やさしく甘い雨が降るまで~コトハの場合~<SIDE:月萌>

 フユキくんはナツキくんとのユニゾンを、あっという間に身につけた。

 いまでは、長年使い慣れたスキルのように、簡単にチカラや言葉を伝え合うことができる。

 だからこそ、悩んでる。

 ナツキくんの力を。自分のものじゃないはずの力を、当然のように借りてしまうこと――それが、ナツキくんのしあわせの邪魔になる。

 そう、考える段階にいま、きているのだ。


 こちらにくるまえ、フユキくんはナツキくんに伝えた。

 次のバトルでは、ナツキくんの力を一切使わずに戦う。もしも力を貸してくれと言われても、スルーしてくれと。

 ナツキくんは、まよいながらも飲みこむように、うん、と返事した。



 わたしは、めいっぱいフユキくんを支えつづけた。

 でも、戦況は予想以上のはやさで厳しくなっていった。

 ルーレアさまもレイジくんも倒せないまま、わたしたち五人のクラフターは、手持ちのアイテムをほぼ使い切ってしまったのだ。

 ミライくんも、広範囲高威力の神聖防壁ホーリーシェルを使い続け、限界が近い。

 決断したのはイズミ君だった。


「フユキ、二分間だけ頼む。

 ニノ、クロックアップ! さきにルーレアさまを倒す!」

「了解だ!」

「了解。俺の限界は気にせずぶちかませっ!」

「サンクス!!」


 フユキくんが一つ押し込むと、ニノくんが輝く。

 同時にイズミくんが、銀の尾を引く流れ星になった。

 ダイトくんを、ミズキくんをとびこえて、黄金の竜の全身を閃光が走る。


「よし! 俺たちも畳みかけよう!」

「はい!!」


 すでに疲労の色の濃い二人だったけど、声を掛け合い、ラッシュをかける。

 よし。わたしもできることを。

 さいわい、ルーレアさまもレイジくんも、私たち後衛までは手が回らない状態だ。

 わたしはすばやく地面に陣を描く。


 ここまでアイテム投げで戦ってきたおかげで、わたしにはTPもBPも、HPだってまだ残ってる。

 それを、みんなに分けるのだ。

 書きあがった陣に、用意してあったオーブを配置。

 所定の場所に手を置き、力を流せば、わたしの身体からオーブへと、それらの力が流れ込んでいく。

 まっさらの透明なガラス玉から、真珠にも似た宝玉と変わったオーブを、わたしは一つずつ投げていった。


 まずは、いくつも傷を負わされながら、レイジくんの攻撃を防ぎ続けるフユキくんに。

 つぎに、神聖防壁ホーリーシェルを何度もかけなおし、戦場全体の安全を図り続けるミライくんに。


「おい、コトハ?! これは!」

「コトハさん、これ!」


 フユキくんとミライくんは、すぐになんだかわかったみたい。

 驚いた声を上げるけど。


「だいじょうぶ、まだ、余裕はあるから!

 どんどん投げていくわよっ!」


 そう、守ってもらったおかげで。

 動きの素早いダイトくんとミズキくんは、ちょっとむずかしいけれど、着地の瞬間を狙ったら、なんとか命中。


「ありがとうコトハさん……頑張るよ!」

「ありがとうございますっ!」


 イズミくんはさすがにわたしもほとんど見えないから、ニノくんにふたつまとめて。


「サンクス! っしゃあ、もっと飛ばしていくぞ――!!」


 それから、騎士団のクラフター三人組に。


「えっ待って、俺たちもまだポイントは余裕がっ」

「みんなはわたしより、錬成魔術がうまいし、攻撃に使えるスキルもあるわ。

 わたしのぶんまで、お願いします!」

「心得た!」


 すぐに、シロウくんが走った。

 狐装備用スキル『フォックストロット(狐の忍び歩き)』でレイジくんの側面に回り、『狐火(フォックス・ファイア)』を繰り出す。

 弱体化の追加効果もある炎攻撃が、フユキくんを援護してくれる。

 わたしにはとてもできない、大胆な行動だ。


「さすがはコトハさん、冷静な判断力です!」


 タマキくんは『バブルリング』で空中にそのまま円を描いて飛ばしていく。

 まるでチャクラムのように、するすると飛ぶリングは二種類。

 銀色に輝くほうは、あっさりとミズキくんとダイトくんに命中。『幸運』『水の守り』の補助バフ効果を与えた。

 その一方で暗い青のリングは二人をよけてルーレアさまに。水属性のダメージを与えていく。すごいコントロールだ。


「ミズキさんやダイの援護は慣れてますからね。

 それより、その球。あと何発くらい投げられますか」


 と、タマキくんはわたしに聞いてきた。とっさにわたしは――


「えと、二発くらいなら」

「そうですか。

 ではあとはもう、休んでいらしてください。

 これ以上をやらせたらフユキさんに叱られます」


 きつめの数字をこたえてたけれど、ばれてしまっていたらしい。

 そう、あと二発つくって投げてしまったら、わたしはもう動けないはず。

 タマキくんは「いいですね」とくぎを刺すと、ふたたびバブルリングを繰り出し始めた。


 コウくんはというと、地面に描いた陣で、『幸運ラックバフ』をかけていた。

 みんなの名前を書きこんだ陣が、一人ぶんひとつずつ、地面にずらっと並んでる。

 すごい速さと正確さ。おかげで戦況が有利に傾き始めた……と思った、そのときだ。


「みんな悪い、ニノが限界だ!」


 イズミくんが前線離脱。ひととびにもどってぱっと抱えたのは、後ろ向きに倒れていくニノくんだった。


「え? あれ? ここ、てんごく……?」

「なわけないだろバカ狐!

 いいかもう休んどけ、あとはもう使うな、いいな?!」

「いや……いや。ここでやらなきゃ、どこでやる……」


 そうだ。ここでやらなきゃどこでやる。

 タマキくんはもう休んでいなさいと言ってくれたけど。

 わたしは描いたままの陣に手を置いた。


 正直、頭がくらくらしていた。

 手だって、ちょっとしびれていた。

 でも、やるんだ。

 だって、フユキくんが戦ってる。

 だから、わたしも戦うんだ。


 ミズキくんとダイトくんは声を掛け合い、自分より何倍も大きな黄金の竜を相手に、粘り強く戦い続けてる。

 ミライくんは気力を振り絞ってまた神聖防壁ホーリーシェルをかけなおした。

 シロウくんはレイジくんに吹っ飛ばされたけど、あきらめてない。

 タマキくんが防御技を展開しながら、救援に向かう。

 イズミくんが飛び出していった。

 ニノくんも起き上がろうとしている。

 コウくんは懸命に、陣を描き続けてる。


 そしてわたしの頭の中には、アシストをがまんして送る、ナツキくんの声援が響いてる。


 そうだ。ここでやらなきゃどこでやる。

 でてこい、わたしの、本当の、力――



 音が消えた。

 頭の中が真っ白になった。



 けれど、わたしは倒れなかった。

 ぽつり、わたしの手にふってきたのは、優しい、ミルクのようないろあいの、命のめぐみの雨だった。


どうやら地下闘技場に覚醒ラッシュがやってきそうです?!(ラノベタイトル風に)


そんなわけで次回は、こちらの続きをお送りいたします。

どうぞ、お楽しみに!

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