Bonus Track_60-4 まさかのタッグボス! イーパラ・地下闘技場のスペシャルバトル開始!~ミライの場合~<SIDE:月萌>
カジノ・イーストパラダイス、地下闘技場。
ここはちょっと前まで、いわゆる『ヤミ闘技場』だった。
不法に借金を負わされたプレイヤーたちが、かませ役として働かされていた。
けれど、おれたちがその存在をあばいてからは、文字通りの地下闘技場に。
かませ役はいなくなって、かわりにボスキャラが参戦するようになった。
ひとりは、ノルン山の迷宮之女主人、ルーレアさまの分体。
もうひとりは、ここで『処刑人役』をしていた、3Sのレイジだ。
ふたりは強い。すっごく強い。
具体的には、対戦者数の制限がない。
もちろん、フィールドに入ってまともに戦えるのは十数人なんで、それが実質の上限だけど、それぎりぎりの人数で来ても、Bランクだと歯が立たないと評判だ。
けれど、今日のおれたちはそれ以上の厳しい戦いをすることになったらしい。
控室で待っていたのは、ルーレアさま本人と、レイジのふたり、だったのだ。
「んえっ?! おま、なんでこんなとこに?!」
今日のレイジのすがたは、ソラに似てる。
おどろくダイトくんに、レイジは笑ってこたえた。
「いやいや、よーく見てみそ。俺の方が、髪の色明るい、背が高い、イケメン」
「あ、あらためて声聞いたら別人だったわ」
「いやそっち――?!」
二人はなぜかこれで意気投合。あいかわらずおねむなルーレアさまが先を引き継いだ……とおもったら、ふわふわ浮いたまま寝落ちした。
「あのね……ふああ……イェリコからメールきて……ぐう」
「いやだれか説明できる人いないのこれ?! まさか違うよね二人一緒じゃないよね?」
ニノがあわあわ質問すると、目を開けたルーレアさまとふりむいたレイジは声を合わせた。
「二人一緒だよ」
「二人一緒だぜ」
「こんなときだけ一致団結かいいっ!」
「それは違うとおもうよ」
と、ミズキがフォローした。
「二人はちゃんと、仲良くなったんだと思う。
そうですよねルーレアさま、レイジ」
「ん、まあ」
「そーともいわなくもない、かもな」
「え、まじか」
レイジたちは作戦のために、ルーレアさまのダンジョン入り口をふさいでた。
あのときはすっごく怒ってたルーレアさまだけど、いまはもういいみたい。気負いのない視線を交わして笑いあう。ちょっといい雰囲気に見えなくもない。
「レイジはまじめに働く子だからね」
「ルーレアはキメるとこはキメるからな」
「ええっ、まさかのリア充っ?!」
「いや」
そんなあ、と言いたげなコウくんの肩にシロウくんが手を置く。
いつになく優しい調子でなだめるように、口にするには。
「ここはVRのセカイだ。
安心しろ。リアルじゃない。」
「そーなんだけど~しろーさ――ん!!」
そんなこんなで、おれたちは装備と持ち物を整え、ざっくりと作戦を考えて、フィールドにでた。
そのときにはもう、速報をうけて集まったお客さんで、観客席はあふれんばかりになっていた。
前衛スタートエリアには、イズミとミズキ、フユキとダイトが。
後衛スタートエリアには、ニノとおれ、コトハさん、コウくん、シロウくん、タマキくんがついた。
といっても、後衛のおれたちもみんな、それなり機動力がある。
前衛に直接守ってもらうのではなく、距離をとって攻撃をよけつつ、支援していく体制だ。
一方で、むこうは前衛ラインにレイジ、後衛ラインにドラゴン姿のルーレアさまがついた。
レイジは首をこきこきやって、こっちに流し目。
悪党モードで、挑発の一言を口にした。
「ふんふんふん。この布陣なら、まずは後衛潰し……は詰まんねェかな?」
とたん、前衛のみんながぐっと緊張するのが分かった。
レイジは綺麗な顔でニコニコ笑う。
「おーおーおー、いー反応。よーし決めた、前衛ちゃんがぜーんぶ倒れたら後衛ちゃんたちは一ン日オレのモンな?」
とたん、フユキが目にもとまらぬはやさで抜刀。びしっと切っ先をレイジに向ける。
「貴様は俺が狩る」
その背中からは、なんだかもうオーラがたちのぼってるかんじだ。
レイジはぴゅーいと口笛をふいた。
「おーおー、そーじゃなくっちゃな!
せーぜー楽しませてくれよナイト様よォ!!」
同時に、試合開始のゴングが鳴った。
創始者四人組は全員うさぎ装備にする案もありました。
次回はソリステラス。実は前回サクッと入れそこねた『ある事実』が今度こそ明らかになります。
そして……誰や、このわんこ?
どうぞ、お楽しみに!




