Bonus Track_60-1 ふしぎなシャモアと、ごほうびタイム!~ハルキの場合~<SIDE:月萌>
暑くもなく、寒くもなく。
固くないけど、柔らかすぎない、絶妙の寝心地。
ああ、天国。
このままずーっと寝ていたくなる。
でも、起きないと。
だって、見ている。
金色の角を持った、まっしろなシャモアが。
はるか向こうの高みから。
その目が言っている。『お前は俺になるんだろう』と。
そう、そうだ。
俺は、あいつになる。
そのためには、こんなところで寝ていられない!
全力で身を起こして――
「……あれ」
そのとき、ぱっと景色が変わった。
あの神々しいシャモアはもういない。
そのかわり、緑の梢をバックに、ちょっと心配そうなみんなの顔が見える。
「あれ、俺……どうして……?
クレイズ様と打ち合って、それから……」
「きーくん!」
そのままの体制で記憶をたどっていると、ぎゅっと右手を握られた。
兄貴だ。ちょっと涙目になっている。
「きーくん、よかった気が付いた!
あのね、覚醒したんだよきーくん!
剣と角が金色になって、武装は真っ白になって、すっごくカッコよかったんだよ!!
でも、クレイズさまに一撃あげたら、オーバーヒートで倒れちゃって……
ほんともう、むちゃするんだから……!」
「うん、そりゃーオミちゃんもだかんな?」
すかさずまぜっかえしたチナツさん。みんなの間に笑いが起きた。
「きーくん、起きれる~?
厳しいようならもうちっと横になってるといいんだな。
へたにすぐログアウトするより、このなかで回復してからの方がたぶんいいんだな」
兄貴の反対側にすわってたナナさんが、優しく声をかけてきた。
その言葉にあらためて見回せば、俺たちのまわりは輝く黄金の草原になっていた。
ナナさんの覚醒『かぴばらんど』だ――なるほど、さっきぶっ倒れたはずの兄貴がいきなり復活していたのも、これのおかげだったのだ。
「っていえっ! これ覚醒だし、維持したらナナさんがしんどいでしょ?
俺ならもうだいじょぶですから、解除しちゃってください!」
よいしょと身を起こせば、体が軽い。むしろここにきたときより調子がいいくらいだ。
ありがとうとともにそれを伝えれば、ナナさんはやっと覚醒を解除。俺の頭をあったかい手で撫でてくれたのであった。
「ハルキは初めてじゃろ? 初めてのお客様はごちそう攻めにすることとクーちゃんルールで決まっておるのじゃ☆
皆も遠慮なく食べてゆけ、楽しませてもらった礼じゃ!」
……ということで。
ふかふかのラグの上、森の恵みのおやつを食べ放題。
美男美女ぞろいの神獣の皆さんが優しく給仕までしてくれて、至れり尽くせりの歓待が始まった。
冷たいココナツウォーターを喉に通し、とろぷるのマンゴーをほおばれば、生き返る心地がした。
あまずっぱいできたてロベイラジャムと、森のベリーを使ったケーキはスイシャンのケーキよりもおいしいくらい。
一通り満喫したところで、クレイズ様がごほうびをくださった。
「ではまず、ハルキに初回特典じゃ。『森の恵みの組みひも』を授けよう。
そのまま身に着けるもよし、クラフターにクラフト加工してもらうもよし。好きに役立てるがよい。
そうじゃな、このコハクとともにハンターズ・チャームを作るのもよいかもしれんな」
俺の手の上に、青と緑の色合いの絶妙な組みひもが、次いでつやつや輝く琥珀があらわれた。
兄貴が目を輝かせ、声を弾ませる。
「まかせて!
そうだね、ニノと相談して、イツカのに似た感じにしようか。
しっぽ飾りはさすがに厳しいけど、角とか剣とか、好きなところに飾れるの作るから!」
「うん! わー嬉しい! ありがとうクレイズ様、兄貴!」
「ふむ、身に着けるものにするなら真珠もつけるか。カナタが心の落ち着くお守りにしておるものじゃ。おぬしの役に立つことじゃろう」
はしゃいでいたら、クレイズさまはさらにおまけも下さった。
「えっえっ、いいんですか?」
「どのみちやるつもりだったものじゃ。
このなかの、誰に渡したところでお前に行くじゃろう?
仲間たち全員からのプレゼントとして、とっておくがよい」
茶目っ気あふれるウインク。みんなもうんうんうなずいている。
とくに女子なら、ジュエリーは欲しいものだと思う。それなのに、ナナさんもユキさんも嫌な顔一つしない。優しい目をして譲ってくれる。
「ありがとう……みんなありがとうっ!」
俺の胸はもう、いっぱいになってしまったのだった。
そうして――
ナナさんは、大地の加護を得るチャームを。ユキさんは、風の加護を得る羽根飾りを。
兄貴たちクラフターは、たくさんの爪や牙、羽根やコハク、真珠、貝殻と角。そして南国フルーツ詰め合わせをいただいた。
「ひゃはー! こりゃーいろいろ作れるな! もちろん食材はソーやんに渡して……ってあれ、このツノ………………」
「おお、パラセクトディアのツノじゃ」
「ぎゃああああっ?!」
チナツさんがこわごわ手に取ったものは、チナツさんが『Gのつくあいつ』より怖がるゾンビ鹿の角だった。
ミライ「きーくんたち、うまくいったみたいだね!
そういえばおれたちのこともちょっと書くっていってたけど……」
ミズキ「うん、そっとしといてあげよう? 作者なりに頑張ってるみたいだから」
タマキ「なるほど、予告詐欺回避のための詐欺ですね^^b」
(↑……はい、頑張りの結果ですorz)
次回、ソリステラスサイド。ホテルのお部屋でまったりです。
そこにはなんと、おとなの猫さんが……?
どうぞ、お楽しみに!




