59-3 バス的なバステキ! うさぎ男とお祭り通り!<SIDE:ST>
中肉中背の体格に、暗めのブルーのローブをしゃきっと着こなしたその人物は、おれたちを認めるやひょいと一礼した。
「どーもー、街の案内をさせていただきますルゥ・ホァと申します。
ちなみにユエシェ家・ファン家とは親戚筋ですんで、なにとぞよろしゅうっ!」
明るい髪色、明るい笑顔。
対して暗めの色合い・スッキリタイプのローブがきちんと感を醸し出す。
頭のうえではちょこんと折れた黒のうさ耳が一礼する。うさ好き的にはどうしても目が行ってしまうポイントだ。
なんて思ってるとアスカがもう行った。
「おー! おれたちの同志だよカナぴょーん!
やーうれしいなーソリステラス初のうさぎ男だよー! 本日はどうもよろしくねっ!」
「どうもどうも!『うさぎ男同盟』ならびに『うさねこ』にはちょー感謝してますよ! なんたって皆さんのおかげでうさぎ男の地位がドーンとあがったっても過言じゃないですからねっ。
もともとアイドルだったのが今じゃあ、ちょーちょーアイドルですよー!」
なるほど、それならちょっとまえのアレもうなずける。
「それ聞くと冥利に尽きるよー! これからもアイドルどーしがんばってこーねー!」
「ええ、がんばりまっしょー!」
にへっと笑って握手の手を差し出せば、ルゥさんも握り返してあくしゅあくしゅ。
いやアスカ、『後衛うさぎ男はある意味アイドルでむかつく』って言ってなかったっけ。いや、もう完全にアイドルだからいいのか。
「ってなわけでみなさん、ごあーんなーい!」
ソリステラスに自動車はない。
だが、荷車は存在する――自動動力付きのものも。
きれいに飾ってほろをかけ、クッションをしつらえてバス的なものを作り、団体客をのっけて市街観光というツアーコースも。
「いやーみなさん美人イケメンぞろいですからね、下手に歩いてるとナンパされまくりで道行きもはかどらないということになりかねませんのでご用意させていただきました!
ちなみにこのバス的な乗り物、名前はずばり『バステキ』でーす!」
「マジで?!」
最速でも走る程度の速度しか出ないという、のんびりした乗り物に揺られて、午後の市内観光、じゃない、視察が始まった。
陽気なうさぎ男はどっかからとりだしたマイクを手に、堂に入ったガイドを始めた。
「皆様すでにお聞きの通り、ここインティライムは六獣騎士のしろしめす土地、全てから直接アクセスできるという条件のもと作られた計画都市であります。
そのため旧ソリス国領の他の地域に比べ、非常に整備されているのが特徴です。
道は直線に引かれて舗装され、家々の形も実際そう奇抜なものはございません。
まあ飾り付けは自由なんでそう見えませんけどね」
「たしかに……」
車窓から見る建物には、とりどりの日よけやら垂れ幕やらがひるがえり、明るく強い日差しの下で騒々しいほど賑やかに自己主張。
それは、その下で声を上げる人々にしてもそうだ。
観光客たちもその明るさに開放的な気持ちになるのだろう。そこここで買い物をし、食べ歩きをし、ときに射的や輪投げ、カードゲームに興じている人たちもいる。
「各門のそばには、街の外から疲れ、もしくは傷を負ってやってきた者たちのために医療施設や教会、お休みどころや食事処があるのですが、初めての旅行客さんがとりあえず目を奪われるのが、ここインティライム名物・お祭り通りです!
この町はソリステラスが一つになってからできたんで、おもっきし観光客の入りを見込んでできてましてね! 浅いゾーンのメインストリート周辺はごらんのとおり、縁日ノリの露店と遊興施設でいっぱいなのです!」
ここに入ってすぐ、俺たちがたどった通り。そして、今通っているここは、おもに観光客用のエリアなのだという。なるほど、お祭り騒ぎなわけである。
そしてその光景を作った立役者が、ルゥさんのおじいさんラウ・ホァ。
つまりルゥさんは三代目ということだが『いや~。商家のドンなんて性にあいませんからね~。こーやってガイドしてんのが一番楽しいですし』とフリーダムだ。
実際、てきぱきと楽し気なガイドっぷりをみるにつけ、ツアーガイドは天職な気がした。
ブックマークありがとうございますっ!!(∩´∀`)∩
ちまちまのんびりですが頑張ります~!
次回、月萌サイド。こんどこそクレイズ様とのテストバトルです。
お楽しみに!




