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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_58 旧ソリス国領の視察と合宿と!

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58-5 勢力の境界と争いの歴史と<SIDE:ST>

 しばらく森の道を行けば、やがてとどろくような音が聞こえてきた。


「あちらに滝があるの。橋の上からなら見えるわ。

 そう大きくないつり橋だから、一度降りて歩いてもらわなきゃならないけれど、高いところは大丈夫?」

「つり橋! やったー!」

「あ、はい……」


 ステファンさんの優しい言葉に、イツカは快哉を上げる。

 一方でハヤトは歯切れが悪い。アスカにぽんぽんと背中をたたかれている。


「ハーちゃんは前だけ見てな、おれがひっぱってくからさ?」

「お、おう」


 ハヤトはバトルの時も、あまりぴょんぴょん跳ねたりしない。卒業記念エキシビションバトルではアスカの足場で宙を駆けたりしたけど、あれは数少ない例外だ。

 ……それはもしかして、これが理由だったのだろうか。

 けれど、まあ。アスカもついていることだ。大丈夫ですとまとめておいた。


「そう? どうしても厳しかったら流れの緩めなところを渡るようにするから、遠慮せずに言ってね」

「ありがとうございます」


 ステファンさんは柔らかな声で言ってくれて、ハヤトの緊張も少しほぐれた様子だ。

 そのとき前方にちらりと、森の木々とは違うものがみえた。

 近づいていけば、荷物を担いだひと二人がすれ違えるほどのつり橋だ。


 ここにはけして、技術がないわけではない――昨日おれたちが上陸した港の景色は、完全に現代のそれだったし、宿泊したコテージも村長の家も、ふつうに電化製品がそろっていた。

 けれど目の前に横たわるそれは、つるを編んだロープと木の板とすこしの金属だけで作られ、いってはなんだがその気になれば簡単に落とせてしまうものだ。


 わーいわーいと渡っていくイツカの跳ねるしっぽを眺めつつも、おれはその理由を頭の中に探りはじめる。

 すると、昨日と同じご婦人の姿となったステファンさんが『渡りながらはなしましょう』と促してくれて、おれは一歩を踏み出した。



「不思議に思っているかしら?

 これらの橋はね、『落としやすいように』こうなっているのよ。

 ここからすぐに、森が切れる。そうしたらそこは、異なる勢力の土地。

 そちらとこちらで争いが起きたなら、この橋を起点に守りを固める。そして、タイミングを計って、落とす」


 右手からきこえる滝の音のなか、ステファンさんはしずかにこう語った。


「森を切り開かないのも、そのためよ。

 森と河に守られ、その力を得て戦う。それが私たち、森に住まう動物の『ソウル』を持つ者の本来なの。

 もしも森を焼き、一面畑と建物の並ぶ土地を作れば。

 効率化はなされるかもしれないけれど、私たちは『ソウル』の力を失い、飼われるけもののような存在となってしまう。

 それになにより、……」


 いつの間にか、シリアスになっていた空気は、ちゃめっけのある笑顔で一気に緩む。


「息が詰まるわ。

 ミドリはわたしたちのしあわせにぜったい必要。わたしたちは、そう思うのよ。

 だいじょうぶ。いまではそんなことも少ないわ。

 六獣騎士の力の均衡が、お互いをけん制し、守りあっているからね」

「あー! 虹ー! 滝に虹かかってるー!」


 そのとき、さきをゆくイツカの、無邪気な歓声が聞こえてきた。



 大きな滝の面にかかるみごとな七色の橋を堪能し、つり橋を渡り切れば、すぐに下りの隧道が口を開けた。

 大きなヒカリタケがやわらかな灯りをともすこちらは、象さんがすれ違えるサイズ感。

 ステファンさんによればここはすでに『異なる勢力の土地』のはず。ならば、彼らにとり最大クラスの難敵となる象の通行を妨げる機能が、この隧道には持たされていてもいいのだが。

 まさか、と思い当れば、ステファンさんも気づいたのだろう。

 けれどこたえる声は、別の方向からやってきた。


『平原の勢力にも、象のソウルを持つ者がいる。

 彼らを通すために、この仕様で作ることになった。

 僕たちの先祖から、そうきいた』


 まるでステファンさんにつらい事実を言わせまいとするかのようにするり、滑り込んできた声。

 はたして土壁からはにゅっと、黒い竜が生えていた。

 ただし、やっぱり、頭半分だけ。

 そう、エルマー君だ。


『ひとにはいろいろいる。しかたないこと。

 かつては雄ゾウの『マスト期』を、争いに利用した。これはその名残。……森に守られし民はいまも、だから細いつり橋以上のものは作らない』


 それだけ言うと、竜の頭ははずかしそうに土壁の中に消えていった。


『ありがとうね、エルマー。

 マスト期というのは、一年一度、非常に苛立ち、それを抑えられなくなる時期のこと。

 雄の象だけでなく、象のソウルをもつ男性にもこれは現れるから、いっそのことそれを戦いにぶつければ、と傭兵になるものが少なくないの。

 それは森でも、平原でもおなじ。ただこの隧道は平原の者たちが施工したと、それだけのことよ。

 エルマーたちも、そのご先祖も悪くないの。ただ、しごとをしただけ。

 誰を相手としても、平等に仕事を請け負う――それが、あの子たち、土壌動物の『ソウル』を持つものたちの生きるすべなの。

 エルマーのように強いものは少ないから、技術を持ち、必要とされることで自らを助けたのよ』

「……おれたちみたいだね」


 ぽつり、アスカがつぶやく。

 全く同感だ。そうだねと相槌を打つと、失礼な相棒どもがえーという顔でおれたちを見た。

知識や技術は多様な強さの軸を作ってくれる。

まさしく、知識は自由にする、ですね。

(日向はもの知らずですが(爆))


次回、やっとこインティライム入り。このルートをとった理由も明らかになります。

どうぞ、お楽しみに!

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