Bonus Track_58-3 マウント・ブランシェのてっぺんが吹っ飛んだ日~チアキの場合~(2)<SIDE:月萌>
ほかほかの温泉で手足を伸ばしひといきついたら、僕はいそいでキッチンに向かった。
「おねえちゃんたち、僕もお手伝いするよ!」
「そういうと思って。はい、チアキとレンのぶん。
気をつけて持っていくのよ?」
「はーい!」
ほんとうなら、もう僕のお手伝いは必要ないだろう。
だって、いまはレオナさんたちが(僕よりぜんぜん手際がいい)いる。
それでも何か手伝いたい僕のために、最後の二皿を取っておいてくれた。
そんなことが、すごくうれしい。
うきうきと広間に入ると、僕の席ではもう、ほどよく冷めたミルクティーが待っていた。
僕は犬装備だけど猫舌だ。それを知ったときから、レンは僕のお茶を最初についでくれるようになった。
こんなやさしいとこがあるから、レンはほっとけないのだ。
「はいレン、ホットケーキ」
「おーサンキューな! は~コレがあるからマウントブランシェ合宿はいいんだよな~」
エアリーのひつじ牧場では、お菓子を作るときもとうぜん、牛乳じゃなく、ひつじミルクを使う。
自然の恵みのぎゅーっとつまった濃厚なミルクで作ると、ホットケーキもアイスも、しあわせのあじに。食べたひとたちはみんな、しあわせ笑顔になるのだ。
「ん~おいし~!」
「おいしいです……」
「はあうまい……」
「効くなあ……」
「しみる~!!」
一部ちょっとおじさんみたくなっちゃってるけど、そのくらい充実した食べ応えなのだ。
ちびっこ姿になったシャスタさまもご満悦。はむはむ食べつつニッコリ笑顔。
「むふー。やはりこのホットケーキはサイコーじゃのー。
ぶっ飛んだチカラが戻ってくるどころかさらにぱわーあっぷするレベルじゃ!
……なにをみておるレン? ハッ、おぬしもしやロ」
「ちがああ!! オレはただ」
「まあそれは冗談として。
……おまえたち、覚醒に向けてスパートをかけたいということじゃったな』
と、するり。シャスタさまの姿が元のお姉さんにもどる。
レンがいいかけていたことは、またあとで、ということだ。
『ぶっちゃけた話、ほとんどのバディがいいとこまでいっておるぞ。
『チワミケ』『トーラス』『サフタフ』はあと一歩じゃな。
よければのちほどもう一戦しようではないか。お前たち3チームのみとわらわなら、充分に追い込むことができようぞ』
「まあ、よろしいのですか。お疲れでは」
『お疲れなど温泉とホットケーキで吹っ飛んだわ。
わらわは女神ぞ。おまえたちがだいじょぶなレベルならわらわもだいじょぶじゃ!』
「でしたら、お言葉に甘えて。よろしくお願いいたします」
リンカさんが気遣えば、シャスタさまはむんっと胸を張ってみせる。
うん、だいじょぶそう。
あんな大爆発の真ん中にいたのに、女神様ってたくましい。いつかは、僕もそうなりたいものだ。
あとの五人もよろしくお願いしますすれば、ハナシはつぎへ。
『あとはそれぞれまだ課題があるな。
ハルハル兄弟はいますこし場数が要るようじゃな。妹たちのもとをめぐってくるがよい。クレイズのテストバトルはまだ少しあとじゃろう、混ぜてもらうなら連絡を入れるが』
「お、おねがいします!
……あっ、兄貴は無理しないでいいよ? 経験足りないのは俺だけだし」
「俺たちはバディでしょ、きーくん。
きーくんをもっと生かせるように、俺もがんばらなくっちゃ、だからね」
『うむ! ではちょっと通信するでな、しばし待ちおれ』
ブックマークいただいている……だと……?!
よし、夢じゃない。ありがとうございますっ!!
次回、ソリステラスサイドのイツカナ一行。
陽都インティライムにむかう隧道に現れたものは……?
どうぞ、お楽しみに!




