58-3 ウェディングマーチはお断り! ぞうさんに乗って出発です!<SIDE:ST>
ステラコーストのメインストリートは、朝一番の波を満喫しきったサーファーと、これから繰り出す人々がちらほらと交差していた。
時に気楽に声をかけられながら、コテージ前にもどれば、ステファンさんたちが待っていた。
パレーナ八世とはここでお別れ。森の街道を北へと辿り、途中で森の中の村を見学。ソリス領北東部に位置する陽都インティライムへと向かう予定である。
距離にして、50km超。流れには橋がかかり、小さな隧道もあり、街道として整えられてはいるものの、舗装がされていないところもときにあり、慣れない人間の徒歩だと丸一日以上はかかってしまう距離感。
だが、なんと自動車とか馬車とかいったものはソリス国にはないというのだ。
よって、移動は狼化した方々の背中に乗せていただいて、となっていた。
ちょっとした問題が発生したのは、その時だった。
ハヤトは昨日と同じように、アスカを自分がのっけて行きたい。
一方で狼の皆さんは、今日はハヤトにもお客様として乗ってってもらいたい。
それを鮮やかに解決したのが、ステファンさんだった。
「だったらふたりでいっしょに、わたしに乗っておいでなさい」
おっとりと笑って、昨日と同じ、大きな大きな象さんに。
せっかくだからと、観光客用の座席までつけてくれて、ちょっとしたパレード仕様だ。
さすがにすみませんと謝りながらのっかったアスカとハヤトを眺めて、狼の皆さんも『シエル・ヴィーヴル』のメンツも納得したようす。
バニーは小さいうさみみ頭でうんうんうなずき、こうのたまった。
『とりあえず二人の服を白にして、沿道に花でもまきましょうか』
「ちょ――!!!」
もちろんそんなウェディングマーチ風の演出は、当人たちが全力で拒否ったためナシに。おれとイツカ、ちびドールにはいったナツキとバニーも一緒に乗せていただくことになった
いつもドッキリをしかけてだれかを慌てさせているアスカだが、今日ばかりは立場逆転。顔を赤くしてぶつぶついっている。
「まったくもー……今回の主役はイツカナで、おれたちはあくまでおまけでしょーがっての。それがそんな目立っちゃだめでしょもー……」
「俺ならいーぜ!」
「 」
イツカのやつめがはればれ断言すれば、アスカは絶句、ハヤトはそのまま落っこちかけた。
もちろん右のうさみみでツッコミを。左のうさみみでハヤトを回収だ。
「こらイツカ!
ごめんねホント。あとでイツカをこころゆくまでモフり倒してくれていいから」
「あ、お、おう……」
ちなみにハヤトも顔が赤い。
周りからはまたしてもひゅーひゅーという冷やかしが。下からは、くすくすと暖かい笑い声がきこえてくる。
ちょっと気になるのは、横合いからの視線。ベルさんがちらちらとハヤトを見ている。
昨日も何となくそんな感じはしていたが、今日になって確信した。
……さてさて、これはどうしたものか。
ステファンさんは微笑まし気に言う。
「ふふふ、若いっていいわねえ。
そろそろ見えてきたわ。あそこが、今日見ていってもらう村よ。
小さな村だけれど、この辺りの森の村がどんなかんじなのか、参考になると思うわ」
柔らかなグレイのお鼻が示す先には、花やリボンで飾られた、素朴な村の門と、そのわきに並んで手を振って待ち受ける、村人らしき人たちの姿があった。
ブックマークありがとうございます! 頑張れます*^^*
次回、小さな村でのひとときを、ちらっとのぞくだれかさん。
どうぞ、お楽しみに!




