58-1 観光のような、視察の始まり!<SIDE:ST>
昨日の晩ごはんはパーティー仕様で、いろいろな料理をみんなでかなり豪勢に飲み食いした。
今朝のご飯は、それに比べればシンプルであっさりとしたものだった。
おれ的には、おだしとハーブのほどよくきいたおかゆが絶品。思わず食べ過ぎてしまいそうになった。
食後のコーヒーをいただいていると、軽い足音とともにやってきたのは、まっ白いエプロンのまぶしいクローリンさんだった。
「いかがでしたかしら? おなかは満足いたしました?」
おれたちの返事はそろって『はい!』だ。
「まあよかった。
若い方々にはすこしあっさりすぎかなと思ったのだけれど、昨日はみなさん、いっぱい召し上がっていらしたから」
クローリンさんはうれしげに軽くほほを染めた。
その姿は可憐そのもの。言うなれば、うさみみを生やした天使だ。
さらには身体をいたわる今朝のメニューも、彼女の肝いり。
心から思った、この人の旦那様がうらやましい。
「ソレア様にご確認したのですが、本日午前は、ステラ様との謁見は難しそうということですわ。
ですので、プランBということで。陽都インティライムにむけての道すがら、わたくしどもソリスの民の暮らしぶりをゆっくりとご覧になっていってくださいませ」
そんなおれの気持ちを知ってか知らずか、クローリンさんは優しく教えてくれた。
食後一休み、そして身支度をしたら出発だ。
このあたりは、旧ステラ領方面からの賓客を、最初におもてなしするための場所だ。
さらにその周辺が観光客用のスポットになっており、まずは観光のような様相となった。
まずはコテージから見える海辺へ。昨日渡ってきた青い海をバックに、パレーナ八世が誇らしげに微笑む。
「美しいだろう?
ステラ国と戦っていた頃には、この辺りは前線基地だった。
今となっては当時の施設はほとんどが観光施設となっている。
……それでもこの海は、変わることなく美しい」
パレーナ八世のアイスプルーの瞳が、まるで恋人でも見るかのような優しさで、はるかな水平線にむけられた。
のちほど誤字など修正します!
次回、ちょっとした(しょーもない)騒ぎがある予定です。
どうぞ、お楽しみに!




