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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_57 ソリスのソウル、ステラのスペル(2)

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57-6 いちおう代表者公聴会~猛将、熱く語る!<SIDE:ST>

 ちょっぴり赤くなったハヤトが、アスカの頭を下げさせながら名乗ったのち、おれとイツカも自己紹介。

 今回この二人も加わったため、ナツキとバニーは、名前の紹介だけにとどめることとなる予定だったが、ちょっとかわいそうなのでプラチナムーンのチカラを使わせてもらった。

 手のひらサイズのかわいいミニドールを作り出し、二人をそのなかへ。仲間だと紹介して名乗ってもらったのだ。


 これがかわいいと大好評。とある青髪ツインテ少女は「いやっマジっおもちかえりしたーい!!」と超エキサイト。会見後このドールをプレゼントすることになった。

 好評なのは当の本人たちにもで、『目立てるわっ!』『お菓子食べれるー!』と喜んでくれた。


 さて、これだけ盛り上がってしまうと後がやりづらいもの。

 ちょっと申し訳なくステファンさんを見ると、包み込むような微笑みとあたたかく大きな手で優しく頭を撫でてくれた。

 そろそろお孫さんがいそうな年頃の、包容力あふれる大人の女性は、この程度で動じたりはしなかったようだ。


「やさしい、いい子ね。

 わたしはステファン=ハーティー。よろしくね。

 きょう、こうして出会えたのも何かのご縁。困ったことがあったら、何でも相談してね」

「はい!」


『母さん』を思い出させる暖かい声音に、心もほぐされるようだ。 

 ひねくれ者のおれだけど、思わず素直な返事をしていた。


「さ、エルマー、次はあなたよ。

 だいじょうぶ、おふたりは笑ったりなんかしないわ」


 もう一度頭を撫でてくれると、ステファンさんはテーブルの下にむけて声をかけた。

 そういえば、ステファンさんの隣は空席のようだったが、まさか。

 そのとき、フッと背後に気配を感じた。

 振り返れば、黒のローブをまとい、フードを目深にかぶった少年が一人、はげしくキョドっている。

 けものの聴力をもってしてギリギリ聴きとれるレベルの、小声の早口で名乗るには。


「ナ、土龍<ナルガ>家、エルマー。土壌動物たちを取りまとめて……いるっ、からっ」

「そっかぁ。俺はイツカ! よろしくな!」


 と、イツカは自分の皿から焼き菓子をとってぽん、と彼の手に渡す。


「……………………」


 エルマー少年は焼き菓子を手に、ぱああっとうれしそうなオーラを発した。

 これはほんと、ミツルみたい。

 思わずおれも自分の焼き菓子を、その手の上にのせていた。


「おれからも、お近づき。カナタです。よろしくね」

「………………………………っ」

「あ、オレも、オレもー!」


 するとナツキがぴょんぴょん。

 掌に載せて運んでやれば、手にしていた焼き菓子をよいしょと折って、「はんぶんはたべちゃったから、ごめんね」といいつつ差し出す。


「え……いいの?」

「うん!」


 二つの焼き菓子で手がふさがっているエルマー君の口元に、そうっと運ぶ。

 エルマー君がそうっと焼き菓子をくわえると、ナツキはうれしそうに笑った。


「オレもね、コトハお姉ちゃんにお菓子もらったの!

 それで、仲間になったんだ!

 お菓子が好きな子はみんなともだち! ね!」

「……うんっ!」


 ふたりはすっかり意気投合したようす。ステファンさんに促され、いっしょに卓に。

 エルマー君はもう、ニッコニコのるんるんだ。

 フードをかぶったままだから目元は見えないものの、口元がきゅっと上がってほっぺたも軽く上気している。


「これは……奇跡か……」

「『暴食』として生まれた子が、人にお菓子を分け与えるとは……」


 ライアンさんとパレーナ八世は驚いた顔でささやきかわす。

 ちなみにその間のルリアさんは「尊い……尊いよぅ……」と突っ伏している。


「やっぱり、王子様方は素敵。

 あなた方といると、きっとみな優しくなってしまうのですわ」


 と、花の香りのような優しい声がさりげなく軌道修正。

 そう、クローリンさんだ。

 人間の姿のクローリンさんは、おめかしをした村娘という感じの、素朴で優しそうな女性だった。

 茶色の髪と瞳はそのままに、茶色のうさみみと花かんむりがそのまま大きくなっているのが、実に心憎い。

 うさみみピョコン、スマイルひとつ。それだけで満場の注目は彼女のものだ。

 おっとりとした笑顔で彼女が言い出したことは。


「あらためまして、クローリンです。

 みなさん、いいブラシを用意しましたから、あとでもふもふすべすべしましょうねー?」

「はーい!」


 こんなんことわれるわけないだろ!!

 おれとアスカは即座にはーいと手を上げていた。

 いいんだこれは、だってソレア様だって両手を上げている。

 イツカとルリアさんはもちろんのこと、ライアンさんとパレーナ八世だって仕方ないなとか言ってるし、ステファンさんもあらあらうふふと止めやしない。

 エルマーくんはあきらかに参加したそうにもじもじしていたが、ナツキがフォローする。


「えっと、クローリンさん、オレたちもいいですか?」

「ええ、もちろんよ。

 ……これで全員ですわね。それではソレアさま」

 

 ニコニコとナツキとエルマー君を優しく撫でたクローリンさんは、返す刀で議事進行を要求する。なんとも鮮やかなけもさばきだ。


「はーい!

 それでは旧ソレア国領、六獣騎士による公聴会を開始します!

 ルールは、叫ぶの禁止、バトルともふもふは後でっ。それじゃー、スタート!」


 そうしてなんともフリーダムな公聴会が幕を開けたのだった。



 ソリス最強の六人はもれなく、みずからの部族集団を代表する長でもある。

 そのため、彼らに話を聞くことは、ステラ国で言うなら党の代表者に話を聞くことと等しい。

 しかし、それぞれのオリジンをもつ者たちの意見は、当然というべきかバラバラだった。

 ライアンさんはキッパリという。


「まず言っておくが、俺は和平には反対している。

 俺たちは戦うために生まれ生きてきたもの。それが役割を果たせなければ腐ってしまう。

 かといって、鎖国で無抵抗の月萌に一方的に兵を送り込み続けるのはもっと良くない。

 かつてステラの平民が事実を知らされぬまま動員され、苦しんだことは知っているし、哀れと思う。

 だが今はもう、そんなこともない。

 はやくステラ様にも回復していただき、月萌にも秘密主義と鎖国をやめて開戦してほしい。そして両国のつわものたちと正々堂々と、戦場でこぶしを交えたい。

 その思いはイツカ、お前と戦ってますます強まった。

 力なき民を守るルールを設けても、何ならいっそそのままゲームとしてでもいい。

 俺は、俺と心を合わせし者たちは戦場を、戦いをこそ欲している。

 イツカを我が息子にしたい。その気持ちはあるが、それとこれとはまた別なのだ」


 燃える思いを吐露した猛将は、グイッとお茶を飲み干した。


フリーダムしかいやしねえ!


次回、バラバラの思惑。

どうぞ、お楽しみに!

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