Bonus Track_56-3 うさねこハンター部会・定例会合(1)~チアキの場合~<SIDE:月萌>
かくはんを終えた素材の中に、意識を集中。まず小さな氷晶をつくる。
氷晶を成長させながら、ちいさな対流も利用してやさしく、やさしく混ぜ合わせてゆくと、くちどけなめらかなアイスクリームができあがる。
このまんま食べてもいいけれど、今日はトラオがいる。
トラオは同じようにしてホットケーキを焼き上げて、もうお皿にのっけてくれていた。
僕はそこに、アイスクリームを大きくすくってぽとり。
やきたてほかほかのホットケーキの上で、できたてアイスがとろっととろける。
思わず顔を見合わせてニコッとしてしまう。
「ほんと、トラオはホットケーキ焼くの上手だね!
トラオがエアリーおねえちゃんのとこきてくれてほんとよかった!」
「おっ、……おうっ」
トラオはすぐに照れて顔をそらしちゃうけれど、かっこいい横顔はうれしそう。
はれやかな金髪、すっととおった鼻筋。澄んだ湖水みたいな瞳。
何回見ても、ほんとうにかっこいい。
「あー、チアキ? 俺の顔になんかついてるか?」
「ううん。でも、かっこいいなって!」
こんな『いけめん』が弟弟子なんて、誇らしい。
そう伝えると、トラオはぶわあっと赤くなってしまう。
「な、な、な、なにいってんだチアキおまっ、そ、そんなこと言っても何も出ねえぞっ!!」
「えへっ。
……僕がもうちょっとおねえちゃんとこにいたら、トラオとももっとはやくなかよくなれたのにね」
「……そうだな。
そうしたらきっと二人でバディ組んで、一緒にがんばってたんだろうな……」
僕たちはちょっとしんみり。
知らず知らず、エアリー牧場のひつじミルクに力をもらい。
それを失って苦労した、僕たち。
もしかして二人一緒だったなら、あの苦しい時期を、支え合って乗り切っていたのかもしれない。
こんなふうに、お互いの得意を活かしあって。
でも、トラオはさっぱり笑う。
「でもま、それはそれだな!
俺はそのうちサリイと組んでただろうし、そしたらお前もきっとレンと組んでたぜ。
……なんかそんな気がする」
「そうかもね!」
今度こそ笑いあったその時、アキトの声がした。
「おーいおふたりさーん、アイスがぜんぶとけちゃうぞー」
「あっ」
「いやーあっついあっついごちそうさま~。運んどくからごゆっくり♪」
アキトがにししと笑い、ホットケーキのお皿を運びはじめる。
見るとアイスはほとんどすっかり原型がない。あわてて僕は声をかけた。
「あ、あ、ごめんね、その溶けたの僕たちのにしてー!」
「りょーかーい☆」
ゆっくりでいいと優しい声をかけてくれるアキトに感謝しながらも、僕はアイスの盛り付けに戻ろうとした。
けれど、トラオが何か物申してる。
「いやちょっとまてアキト! ごゆっくりって俺たちはだな……」
「いいわよトラ。チアキ君なら許すから。」
「ってサリイまで何言ってんだよコラ!」
こたえをかえしたのは、紅茶をカップに注いでいたサリイさんだった。許すってなんだろう。
僕と目が合うとサリイさんは微笑みを返してくれたけど、それだけだ。
カップを配膳しているセナと目が合った。セナはピッと親指を立てる。うん、わからない。
トラオを見ると真剣な目でこう言われた。
「いいんだチアキ。お前はわかんないで。
せめてお前だけはきれいなままでいてくれ頼む」
「え? う、うん……」
そんなかんじで、うさねこハンター部会は幕を開けた。
覚醒どーしよ? という話になるはずがおやつ作りで終わってしまうという衝撃の(爆)
次回こそ内容です。
どうぞ、お楽しみに!




