53-7 ステラマリスの泣き笑い!
2021.04.09
今読み返したらものすごく誤解を生む場所が……!!
お詫びして修正させていただきます!
(誤) そしてソリステラスの民は、それを知っている――エクセリオンや、成人した高天原御三家の人や、そのほかセレネさんがこれをあかしてもよいと見定めた者たちは。
↓
(正)
そしてソリステラスの民『と、一部の月萌人』(←ここ抜けてました)は、それを知っている――エクセリオンや、成人した高天原御三家の人や、そのほかセレネさんがこれをあかしてもよいと見定めた者たちは。
「それが起きたのはおおよそ百年ほど前。ステラマリス7世の頃と伝えられております。
わたしたちが、もっともっと強ければ……
ステラ様を責めるようなことはしなかった。いいえ、そもそも、一度決めた秘密主義を曲げるほど、ステラ様を悩ませることもなかったのです。
それでもわたしたちは嘆き、争い、ステラ様は3Sに憑かれておしまいになられました。
わたくしたちは手を尽くしました。3S暴走事件への対応のなかで発展させた、制御技術の粋を集めて。
けれど結局成功したことといえば、ステラ様の同意のもと、ステラ様ごと3Sを結界に封じ、弱体化を待つことだけでした。
そうしてしまえば、当然我らへの『女神の守護』はさらに弱まることとなる。選挙区を維持することももはや不可能、我らには滅亡しかないかと思われたその時、ソレア様が手を差し伸べて下さった……今は亡き曾祖母より、わたくしも幾度も聞かされました」
ステラマリス女王は、信頼に満ちた目をソレア様に向ける。
ソレア様は、優しくその手に手を重ねた。
「ボクたち『女神』は、姉妹にして友。
ミッションのために戦っていたって、それは絶対に変わらない。
ボクたちのもとに集う民もだから、皆わが子のようなものなのさ」
そうして向ける柔らかなまなざしは、『母さん』やカコさんとおなじ、あたたかな母のもの。
失礼ながら、ここまでのヒャッハーぶりはどこ行った、そう思わずにいられない。
まあそれを言うなら、セレネさんだってたまに、人の悪い冗談を仕掛けてくることもあるのだけれど。
そんなおれの胸中を知ってか知らずか、ソレア様は言葉を継いだ。
「あれほどの混乱を放っておくことは、さすがにできなくてね。
ボクたちも、ギリギリのラインで手を尽くした。
ボクたち『マザー』は、『グランドマザー』の下したミッションを拒むことはできない。
だから『これはあくまで、ミッション遂行を円滑にするための、戦局の一時的な再編に過ぎない』そう位置付けることで一時的に停戦。その間に話し合って取り決めたんだ。
ステラが回復するまでの間、ステラ国と残った民の後見は、おなじ公開主義のボクがやる。
セレネはそのまま秘密主義を維持して、自国の民と亡命してきた民とを守ると。
そうしてこっちは『ソリステラス連合国』、あっちは『月萌国』になったってわけなんだ――君たちもセレネから聞いている通りにね」
「はい。セレネ様より、そのように聞いております」
きれいな赤い、まっすぐな目に向き合って、おれはうなずいた。
「ミッション『エインヘリアル』。その遂行のために、三人の女神は、その守護する国は、互いに戦っている。
けれど本来、憎み合う間柄ではなく、むしろミッション遂行という観点で言えば同志に他ならない。
そしてソリステラスの民と、一部の月萌人は、それを知っている――エクセリオンや、成人した高天原御三家の人や、そのほかセレネさんがこれをあかしてもよいと見定めた者たちは。
セレネ様からそう聞かされて、おれは納得したんです。
『観光客アバター』を使ってのこととはいえ、敵対しているはずの両国のエリートが、あんな和やかにスイーツ友達でいられたのは、そういうことだったのかって。
たしかにこれを聞いたら、何か月か前のおれも混乱しそうですけどね。ジュディに出会ってなかったら」
背後のジュディから、ぱあっとうれしそうな気配がひろがった。
出会い頭にいきなりおれを捕獲して、けれどまるで普通に明るく雑談に応じてくれた、この無邪気な少女に出会っていなかったら……
そして彼女が、なぜかけなげにおれを慕ってくれていなかったら、きっとソリステラスはただただ、未知の敵国だっただろう。
「いずれ月萌も、ステラ国と同じ試練に立ち向かう日が来るかもしれません。
その日のためにもおれたちは、ステラ様を救います。
『虚無』のフラグメントに憑かれてみて、それがどんなに哀しく、もどかしい気持ちになるものか実感しました。
できるなら一刻も早く、救い出してあげたい。それがおれたちの、偽らざる気持ちです」
隣でイツカもうなずいている。
「だから、お願いします。
ステラ様のこと、いろいろ教えてください。あなたたちのチカラで、おれたちを助けてください!」
おれはステラマリス女王に、両手を差し出した。
「あなた方という方は……!
はい。すべての誠意を持ち、力を尽くしましょう。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
つゆ草色の瞳から、ほろりとこぼれたひとしずくが、結んだ両手に降り落ちた。
木漏れ日をはじくそのぬくもりは、おれの右手に暖かくしみた。
「よーしそれじゃーボクたちもあくしゅあくしゅだ!
ていうか、こーなったんだしほんとマジタメでいいから。よろしくね!」
「おうっ!」
おれたちの隣では、ソレア様とイツカが威勢よく手を握り合っていた。
しかしやつらは、こっち見てニヤニヤしている。
さらにはこそっとこんなことまでいってきた。
「がんばれよカナタ!」
「ほらマリーもさ、どうか気楽にマリーとお呼びくださいって言っちゃいなよ!」
「おい?」
「ちょっちょっちょっとお待ちになってそれはっ」
やんごとなきお茶会の席はそうして、いつものようなさわがしきティータイムへと姿を変え、おれたちの新たな日々は本格的なスタートを迎えたのであった。
伏線回収と書いてさりげなくバクダンを投げ込んでいくスタイルと読みます。
次回、ミッション『エインヘリアル』について。
ひさびさのアスカ視点でお送りいたします。お楽しみに!




