53-4 意外すぎ! 『グリーン』のナカノヒト〜そして謁見へ
バトルでかいた汗や土埃などの汚れを『浄化』で吹っ飛ばしてもらい、帰りはパッと瞬間移動。
大陸をまたにかけるほど長距離の瞬間移動は、それなりの設備や権限がないとできないようになっているらしい。が、ソレア様は『マザー』――そのキャップをかけているシステムそのものの化身。つまりやりたい放題なのである。
おれたちをサラッと先ほどの食堂にもどすと『じゃまたね~』と消えてった。
この数時間後、また謁見である。おれはいったいどういう顔で御前に出ればいいのだろう。ていうか謁見でもあの調子なんじゃなかろうか。そしたらむしろすごい。
まあそれはあとでいい。今は目の前のことだ。
「あーきたきた~。おかえり~」
さっきの席ではジュディとホワイト君がのんびりお茶して待っていた。
さらには、やわらかな緑のセミロングをゆるくふたつに束ねた、おとなしそうな少女も。
頭には短い白のふわっとしたうさみみ。うさ好きのおれには好印象のポイントである。
「……ええっと、そちらの人は?」
「あっ、うあっ、ヴェッ」
すると彼女、見事にかんだ。
テーブル越しにそのあたまをポンポンして、ジュディがフォロー。
「ベルちゃんどーどーどーどー。
そういえば昨日はみんなのこと紹介できなかったよね。この子はベルちゃん。
ほら、グリーンのスーツきてたカードキャスターの」
「は、は、はいっ、ヴェール・シュナイザーですっ!
あのっ、その、……『グリーン』でふっ!!」
おれはまじまじと彼女を見てしまった。
ぶっちゃけ、『グリーン』として会った時と、印象が違いすぎる。
もしかして、ログインすると性格が変わってしまう、とかいう感じなのだろうか。
「ベルちゃんたちはね、『虚栄』の適合者なんだ。
だからバトルのときとかはちょっと性格変わっちゃうんだけど、いいこだよ! よろしくね!」
「ふあああああっ! わ、わ、わたしはべつにいいこではっ……」
照れて両手に顔をうずめ、うさみみをふるふるさせる彼女は、とてもあの『あおり系カードキャスター』と同一人物には見えない。
ともあれ、せっかく紹介してもらったのだ。できるだけ優しく声をかけることにした。
「ちゃんと会うの初めてだね。カナタです。こっちはイツカ、よろしくね。
そのうち、カードキャスターのこと、教えてね?」
「っ! はいいっ! よろこんでっ!!」
これまでの言動からみて、彼女はカードキャスターとしての自分にプライドを持っているようだった。
それは素の状態でも変わらないようで、まだほっぺたは赤いながら、嬉しそうに顔を上げてくれた。
「マルねーはあれからちょっと用事あったから、かわりにベルちゃんがきてたんだ。
とりあえず、バニーちゃんとナツキちゃんにも仮の身体にはいってもらって、そしたらお城に行くよ。
体なければ用意してあるけど……」
ジュディが悪意ある嘘をつくとは思えない――それもこんな無邪気な笑顔で。
だが、ほかのやつらがこっそりなんかしかけてないとは限らない。
それでもどういう身体を用意したのかは気になった。
「そうだね、せっかくだからまず、見せてもらっていい?」
「りょうかーい! こっちだよー!」
そうしておれたちは、ゆうべ身体検査とフラグメント除去処置をしてもらったラボへと向かった。
結果から言えば、全く問題なし。というか、月萌で使っていた人形をそっくり似せて、普通サイズとドールサイズを揃えてある時点でこだわりを感じる。
結局今回は二人とも普通サイズをチョイス。昨日着ていたドレスと燕尾服でバシッと決めて、迎えの車に乗り込んだ。
市街を5分とゆかないうち、見えてきたのは白亜の城。
お堀に囲まれ、跳ね橋付きの門。番兵姿の警備員。
どこか、おとぎの国を思わせるそこに着いてすぐ、おれたちは謁見の間へと通された。
赤い絨毯を踏んで、大きな扉をくぐれば、壇上に2つ並んだ玉座。
右には、威厳と優しさを兼ね備えた女王様。
左には、素知らぬ顔を決め込んでおすまししようとしているソレア様がかけていた。
あやうく謁見まで行かないとこでした。
しかし、スマホで編集してみたら字がちっさいですね。やばいです。
次回、事情を聞くよ! お楽しみに!




